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今みたいにネットワークのインフラとかコンピュータが進歩してくると、意味をここに持たせる必要がないことを強調したい。13桁の数字で全部を表せってことになるとですね、これは当然争いが起きて、ちょっと増やすことができたとしても、そこにロット番号を入れるのかとかもめるじゃないですか、いったい何を入れておくのかとか、とにかく、数に限りがある場合にはもめるんです。たとえば10進、5桁の数の会社しか入らないとなると、全部で10万個ですよね、じゃあもっと増えたらどうするのとなりますよね。そうすると、整理しなければいけないと。 今パソコンで漢字を出すのもまったく同じことです。日本語の漢字が何で全部出ないかというと、コードでそういうふうに割り当ててしまうために限界がくると入らなくなってしまうのです。アメリカで26文字のアルファベット対応のコンピュータだったら当然そういうことになります。それで外字ということになってしまって、じゃあ残ってるエリアにどの漢字を入れるのかということでもめ事が起こるんですよ。 限られた資源では全てもめ事が起こり、利権が起こってきて、誰がそれを決めるかということで争いが起きます。世界的に標準化っていうふうに持ち込むと必ずそうなります。このユビキタス・コンピューティングの技術はなにしろ番号をふるだけです。なぜ可能になったか。コンピュータが非常に発達して記憶容量が増えました。皆さんがお使いのパソコンですらHDが10万円も出せば1ギガ買えるぐらいになっています。そして、さらにネットワークがいつでも使えてない情報は取り寄せられるようになった。記憶する容量に制限がなくなったためにこういうことが新しくできるわけです。 ですからもう無限の情報が入っていて、大根一本に、どういう農薬を、なんていう人がいつ、何月何日、どれだけまいたかまで全部出てきて、しかもその農薬がどういう種類の農薬か、知りたいだけの情報が全部このユビキタス・コミュニケータという装置から出てきます。これも一昔前ではまったく考えられなかった新しい技術です。「モノ自身」がある程度の情報を持っているので、たとえば薬に添付の説明を読めばわかるじゃないかという人もいますが、読まないでしょう、誰も。特に年を取ってくると細かい字を読むのが嫌になってきますよね。 今日は、わりとお年を召した方も多いようですが、だんだん面倒くさくなる。そんなときにもう飲んじゃう!ということではなく、この装置を持っただけで、薬ビンから電話がかかってきます。これは電話にこの装置がついているのですが、今、薬ビンから電話がかかってくるという実験をしています。間違えた薬を飲もうとすると電話がかかってきて、電話を取ると目の前の薬ビンだけれども、一緒に飲まないほうがいいと警告をする、そういう電話なんです。このようなものは今までは考えられなくて、電話はこれまで全て人と人との話を助ける機械でしたが、私が今作っている電話は、人とモノ、それからモノとモノが会話するという、まったく新しい時代に入ろうとしているということです。 この技術の応用はもう無限だと思います。かたや米国ではどういうことをやっているかと尋ねられますが、コンピュータをやっていると私も嫌になってしまうことが一つあります。武田賞をいただいて非常にうれしかったのは、なかなかコンピュータの分野の方っていうのは、全てはアメリカが偉いって思っている方がけっこういるんです。 アメリカが最初にコンピュータを作ったからだとは思うのですが、私が20年間言い続けられたことというのはこうです。私が日本で独自のコンピュータを作ったときに、「先生のコンピュータはアメリカ人は知っていますか?」、「アメリカでは使われていますか?」、「アメリカでは使うのですか?」。アメリカが、アメリカが、アメリカで、アメリカで、ずうっとアメリカ、アメリカって言われる。これはもう本当に言われ続けました。 |