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Q & A  1
Q & A  2
加藤郁之進氏講演


坂村健


東京大学教授
坂村 健



どこでもコンピュータへの道

  ところが、やってみるとわかるのですが、こんな小さなもので全部本を見ようっていうと私もちょっと年を取ってきまして、50を越してから遠視が出てくるとこれで全部画像を見るのが苦しいんですね。ですからやっぱり紙の本っていうのはいいと思います。たとえばこれは子供の科学の本ですが、海イグアナというのがここに出てきます。海イグアナというのは、ガラパゴス諸島に住んでいる非常に変わった生き物なんですけれど、こういうものがありますよって書いてある。これを文章で読むのはいいのですけれど、やっぱりこういうのがあると、これはどういうふうに動くのかということが知りたくなりますよね。これを見ていただくとここにUコードというふうに私のところマークが書いてあるのですが、チップが貼ってありますよという意味です。なにせ直径0.4ミリですから。この本の中にたくさんチップが貼ってありまして、これをここに近づけますと、(電子音)海イグアナが動き出すという、こういう変わった本が作れるんですよね。

  ですからいろいろおもしろい。これは子供の本ですけれども、たとえば、マニュアルなんかですと、機械のマニュアルなんか作った場合に、どうやって組み立てたらいいかわからない場合に、そこの部分だけが動いたりします。また先ほどお見せしたこういうものを使えば電球が切れたときにこれをもっていくと切れた電球っていうのはどこで買ったらいいか、また必要ならばそのまま買うことができるとか、そんな応用がいろいろと考えられます。とにかく、モノを認識するという技術は非常に広範囲に応用がききまして、実は1月になってから私のところでやった実験が、新聞やテレビなんかでも報道されましたが、農作物を作るときの情報を入れるものです。今映ってるのをちょっと見ていてください。

  この方は横須賀の葉山のほうで大根を作っている方ですけれど、そういうモノにつけるだけでなくて、畑にも、畑のある区画にチップをつけて、今手に持たれているのは農薬ですが、農薬にもチップをつけて、あらゆる情報をこのチップを介してどんどん消費者の手まで情報を受け渡していきます。

  農薬をどのくらい、いつ、誰がかけたかという情報が全部このチップの中に記憶されて、この装置を農薬にかざしていますけど、この農薬を今からかけるよということです。それでどれだけの農薬をいつ、誰が、何時にかけたかということが全部わかります。さらに集配したときに箱にまでこのチップをつけて、その情報を今度は箱に入れます。

  販売店のところに行ったときに今度は流通の値段を入れて、そして最後に販売店の段階で、その値段を読み込んで仕入れ価格を消して販売価格を入れ直します。最後に店頭に並べたときに電子タグをつけて消費者の手に渡ります。消費者はここに大根をおくと、単に誰が作ったかというだけでなくて、いつ、どんな農薬を誰が何時にかけたかという詳細なデータまで出てきます。これはトレイサビリティ、ものの追跡の実験ですけれども、商品情報が出てきます。そして、うちに帰ってからこれを当てればさっき言った通信回線につなげて目で見ることができます。商品情報として、生産物はどういう人がどういうふうに作ったかがが出てきます。それだけではなく、使用した農薬を、たとえばこれだと2003年の9月18日にエスマルクという農薬を一回かけたとわかります。この農薬は4回までかけていいという農薬で、どういうものかということも、必要ならばクリックするとどんどん出てきます。そのほかにジマンダイゼンなどについても別のところで見ることができます。その農薬はやはり3回までかけていい、2003年10月27日にかけたというような履歴まで、まぁ、ここまで出てきてどうするのかという話もありますが、いくつか見ているとその農家の人がどういう考えで野菜を作っているかわかるようになる。やはり、必要な情報を必要な人が手に取れるということが重要なわけです。私は、やはり21世紀において大事だと思うのは情報が公開されるということです。特に食べ物に関しては大事ではないでしょうか。



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