シンポジウム トップ
主催者挨拶
開会の辞
趣旨説明
吉川弘之氏講演
坂村健氏講演
氏の紹介
Page 1
Page 2
Page 3
Page 4
Page 5
Page 6
Page 7
Page 8
Page 9
Page 10
Page 11
Q & A  1
Q & A  2
加藤郁之進氏講演


坂村健


東京大学教授
坂村 健



どこでもコンピュータへの道

  この技術を使って、生産したときからどういう過程で作ってきたのかということがわかると、逆にそれをトレースして、不幸にしてなにか事故が起きた場合は、その食物はどういう経過で作られてきたのかということも、逆に追いかけることもできます。

  よく勘違いされる方がいて、作った人の顔だけだったら売り場に顔写真を貼っておけばいいじゃないかという話がありますけれども、それはすごい勘違いです。この大根3万本につけて行う実験は、ちょうど1月までかかってやりました。去年の9月から始めまして、生産するところからとにかく出荷して、最後に消費者の手に渡って廃棄されるまで、廃棄されるというのは食べちゃったという意味です。そこまで追いかけたわけですけれど、結局一本一本の大根全部履歴が違う、さすがに一つの区画から取れて同じときに種を蒔いたものに関しては同じですけれども、たとえば隣の畑で違う人が作った場合には違う農薬をまいているわけですし、作り方が違うんですね。それといつまいたか、どういう天候だったかによってまいた日からの過程が全部違いますから、壁に貼っておけばいいなんていうわけにはいかなくて、ここで大事なことは、一個一個が全部区別できるということです。

  このチップの中にいったい何が入っているかというとですね、実はこれはよく勘違いされるのですが、この情報が全部入っているのではなく、今言ったことを全部区別するという番号だけがついているのです。それはどういうことか。その区別するという番号が入っているものを仲介として、実はバックにあるコンピュータの中にあるいろいろな情報を引っ張り出すことができるという技術なんです。この技術ができることによって初めて一つ一つのモノを全部区別することができて、しかも今までのバーコードなどのいわゆるコードシステムと違って、一つ一つのモノを、たとえばこれワインでもいっぺんに何千本、何万本も作るのですけど、一個一個のワイン、一個一個の大根、一個一個の卵、一個一個の牛肉というふうに全部を区別することができます。

  これはですね、私は結構画期的なテクノロジーだというふうに信じています。バーコードはそういうものではなくて、国際標準がなんだと言って、非常に勘違いされる方がいます。実はバーコードがついていますね、どういうものでもバーコードがついています。これも歴史的にはまだ20年くらいしかない技術ですが、実はこれは13桁の数字の列です。13桁の数字の列で、最初の3桁が国番号になっていまして、次の5桁が、これは一般論です、実際にはちょっと使い方が違いますが、5桁で会社の名前が入っています。大体そう思っていただきたい。それで、最後の5桁でその会社が自分の製品につけた番号が入っています。

  13桁の番号でもってどういうことができるかというと、どこかで仕切る人が出てきて、あなたの会社は、たとえばタケダ理研は1番とか、富士通は2番とか、誰かそういう番号をふる人たちがいて、番号をふることにより、その番号を読んだだけでどういうものか認識できる。こういう技術を英語で言うとオートID、要するに自動認識技術と呼んでいます。そういう技術があって、ここに書いてある13桁の番号を読むとどこの会社どういう製品かということがわかるのです。そういうコードブックみたいなものがあれば。

  私がやろうとしているのはこれとは違って単に一つ一つを見分けるための番号が書いてあるだけです。その番号を私のセンターのコンピュータに、(かえってわかりにくいかもしれませんが)とにかくすべてのものについている番号が違うだけですから、その番号を私のほうに送ると、その番号が何かっていう意味が全部コンピュータに書いてある。コンピュータに書いてあるメカニズムはインターネットと同じ技術を使っています。そこの部分に関しては。

  こういう話になるとすぐ国際標準にしたほうがいいんじゃないかとよく質問が出るんですね。それからあとグローバルスタンダードということがよく言われるんですが、ある意味では関係ない。グローバルススタンダードで、ここのコードそのものに意味を持たせてしまった場合にある程度国際協調するしかなくなってきます。国際的に取り決めがないとなんだかわからなくなりますね。



Last modified 2004.3.1 Copyright(c)2002 The Takeda Foundation. The Official Web Site of The Takeda Foundation.