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このころちょうど冷戦の期間でした。この冷戦というものも今のコンピュータ技術に対して非常に重要な役目を持っていて、インターネットというものを皆さんお使いの方も多いと思いますが、あれもこの冷戦のときに情報通信が非常に重要だっていうことで米国の軍事研究所で、軍事研究の中から生まれてきたコンピュータネットワークなんですね。同じようにこのときにですね、核拡散防止ということが非常に話題になりまして、アメリカでは核物質の管理方法というのをやはり軍事研究として行っていたのです。そのときにロス・アラモスにある研究所というところがですね、モノを一つ一つ認識できるRFIDを開発しました。それはRFIDタグに外から与える電波でエネルギーを与えて、タグの中に書き込まれた番号を読み取る技術です。 つまり、RFIDタグには電池をつまないで、これを動作させるために米粒みたいなチップを付けて、電波を送ってやってエネルギーも一緒に送ってやって、それで回路を動作させる。そして、電波というのは当てればたいてい反射波が返ってきます、これはもう光と同じでして、ものがあるところに光を当てれば光が帰ってきます。吸収してしまうようなものはだめですが、そうじゃないものですと電波は返ってきます。それを反射波といいますが、そこに乗せて、ここの中に入っている情報を送り返してくる技術ですが、1975年に完成します。エネルギー省との契約で核物質の管理のために開発されたようですが、これが電池なしの実用的RFIDタグということで大きなブレイクスルーになりました。それをですね、米国のよくやる手なんですが、1977年にはこの軍事技術を一般民間に開放するっていうことをした。 そのあとから出てきのが今、実はICカードっていわれていて、皆さん東京にお住みの方だとJRで、いわゆるスイカというカードがありますが、あれもこれの応用からきたものでして、こういうぺらぺらなものじゃどうにもならないのでカード状にしてプラスチックでガードしました。皆さんお持ちのカードですね、今たくさんのところで使われていますが、そういう非接触ICカードといわれているものが誕生したわけです。 非常に大きな可能性があるっていうことで、ベンチャービジネスがたくさんできたのですが、たとえば、電子マネーにもなるとかですね、家畜を管理しようとか、高速道路でお金を自動的に徴収するシステム、ITSという装置が車に日本でも高速道路についてます。そういう装置にどんどんいくんですが、なかなかビジネスとして成立しません。思ったほどの産業的効果があまり出なかったのです。 ところが最近、これはちょっと見ていただくとわかるんですが、この中に入っているのは日本の日立製作所が開発したミューチップと呼ばれるものです。実は私たちとも共同研究している会社なんですが、私のやっているユビキタスコンピュータと非常に関係ありますね。これは直径0.4ミリでアンテナとメモリを合わせて直径が0.4ミリですからこのビンの中に何百個と入るのですけれども、非常に小さなRFIDがここ1、2年でできました。この世界に技術的なブレイクスルーが起こって、ユビキタス・コンピューティングといわれている新しい分野が誕生しようとしています。 |