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どこでもコンピュータへの道 |
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このユビキタス・コンピューティングなんですが、これはですね、日本では有名になってきまして、自分で広めておいて解説するのも変なのですが、私が積極的にこの言葉を使って広まりました。先ほど垂井先生のご紹介にもありましたように、20年ほど前からこういうものを、「どこでもコンピュータ」と言いまして、いろいろなモノにコンピュータをつけてモノを自動的に認識する技術ということを提唱しています。それは実はトロンの組み込みコンピュータだけじゃなくて、いろいろなモノにコンピュータをつけることでいろんなことができるよということをですね、20年前から主張していたのですが、残念なことに日本語で「どこでも」という言葉のまま世界に広げるのが難しくて、この「ユビキタス」という言葉は90年代にアメリカ人がこういう分野に関してつけた名前です。元祖は私だと思っています。英語はそんなにわかりませんから思いつくわけもないのですが、ユビキタスという言葉は、ラテン語をベースとする高級な英語でして、「どこにでもある」、これはもともと「神様があまねくしろしめす」という意味です。そこにコンピューティングとつけて、ユビキタス・コンピューティング、いつでもどこでもコンピュータが使えるという意味となり、こういう名前の分野が誕生しました。これが今世界的に話題になって、しかもきっかけになっているのがこういう小さなコンピュータができたからです。
先ほど指に乗っかっていたコンピュータですけれども、この分野でどういうことを目指しているかというと、コンテクスト・アウェアネスです。非常にわかりにくくて申し訳ないです。何でこういうコンピュータの分野は変な英単語がたくさん出てくるんだって、よくお叱りを受けています。これは仕方がなくて、世界の人たちにこういう概念を説明するのに英語を使わないことにはどうにもならなくてこういう言葉が使われます。コンテクストというのは日本語で「状況」です。結局、ここがこのユビキタス・コンピューティングとか、小コンピュータがなぜ出てくるかという一番大事なところです。要するに、今までのコンピュータのイメージは、バーチャル空間とか仮想空間といわれているように、人間の生活とはちょっとかけ離れたコンピュータの中に特殊な世界があってその中の仮想的な空間で情報処理をやるというものでした。
インターネットもそうですよね。今だとインターネットに接続すればホワイトハウスの情報も出てくるし、首相官邸の情報も出てくるし、いろんな会社の情報も出てきます。けれども、それは物理的な場所を示すわけではないですから、そのネットワークのつながっているどこかにそのコンピュータがあるだけで、実際にその場所にある保障はない。ですから仮想空間と言っているわけですね。ところが、私たちは現実の空間に生きているわけであって、今たとえばこの薬を飲むってことになったらこの薬を飲む私がいて、この薬があるって認識しているということになると、これはもう仮想空間じゃなくて現実空間です。
実はユビキタス・コンピューティングの本質というのは、現実空間を認識するということなんです、コンピュータの力を使って。ですから、仮想空間に私たちが入っていくんじゃない。仮想空間アプローチになると、この薬に関する情報だけを仮想空間の中に入れておいて、たとえば、インターネットでこの薬の情報が入っているホームページにアクセスして、そこからこの薬の情報を取るとことになるわけです。それはあくまで仮想空間なんですね。この薬からホームページを呼び出す操作というのは人間が意識して行う必要がある。今のユビキタスコンピュータでこんなに小さいコンピュータがあると、この薬のビンにコンピュータをつけて、仮想空間からじゃなくて、ここから直接情報をもらうとか、または、もっと小さくなれば、薬のカプセルを一つ一つ包装している紙のケースにまでつけるとなれば、一粒一粒までその場で認識ができるということが可能になるわけです。
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