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東京大学教授
坂村 健 |
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どこでもコンピュータへの道 |
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ご紹介いただきました、坂村と申します。
今ご紹介にありましたように、私は20年来、組み込みシステムというコンピュータの分野で、研究を続けてまいりました。
これを見てください。今、私が手に持っているものは、このような板、これは板なのですが、この上に電子部品がたくさんついていまして、プリント基板といいます。この電子部品はいろいろな機械の中にたくさん入っています。
実はこの中核をなしているのが、私がちょうど手で示した、同じように見えてしまうかもしれませんけど、マイクロプロセッサといわれている電子部品の中枢に相当するものでございます。これは、ルーツをたどりますと、今から50年ほど前にコンピュータができたのですが、1970年代になりまして、これは武田さんが一生懸命おやりになった超LSIのテスターのようなものによって作られるのです。そういう技術によって作られたマイクロプロセッサ技術が1970年以降になりますと非常に完成してきまして、今作られているコンピュータ、スーパーコンピュータからパソコン、また電話機の中に入っているものまで全て、マイコン、マイクロプロセッサといわれているものによって作られているわけです。
現在、全世界でこのマイコンというものが83億個くらい生産されていまして、そのうちパソコンに使われているのが2%です。大体1億5千万個くらいがパソコンに使われております。残りはいろいろな機械の中に入っているコンピュータでして、機械の中に入っているから組み込みコンピュータと呼ばれているわけです。
私は20年間その組み込みコンピュータをやってまいりました。今、全世界の大体98%以上のコンピュータが組み込み用途に使われているわけですけれども、そういうモノの中に入るコンピュータの研究をし続けてきたわけです。
ところで、現在のコンピュータはルーツをたどると大体50年ほど前ぐらいになります。マイクロコンピュータは昔、この部屋くらいの大きさだったコンピュータをこのワンチップの大きさまでに縮めたのですが、それでもまだこういう板の上に乗っかっています。ですからもっと小さくしたいという発想が出ます。私のところの研究室でやっているのがこの今、親指の上くらいに乗っかるくらいのものですけれども、このぐらい小さなコンピュータができています。
もちろん、能力的には今のパソコンに入っているものに比べるとスピードは遅いですし、記憶容量にも限りがありますが、こう小さくなったことによって、組み込みという分野が革命的に今変わろうとしているんです。
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