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それでは、今日の3番目の演者として加藤郁之進先生をご紹介します。 皆さん、たいていの方はタカラというお名前、すでにお聞きだと思いますけれども、加藤先生は、タカラの中でもバイオの部分の総帥であります。私が話さなくても、加藤先生のお話の中で次々と出てくると思うのですけれども、20世紀の後半から非常にバイオの進展が目覚しくなりまして、特に組換えDNAで勝手な遺伝子を取ったり、ものをつくったり、改造したりすることができて、それから今度はゲノムというので、生命の研究が情報化したり、さらにこのごろでは胚操作というので、今度は細胞そのものを自由に扱ったり、遺伝子を改造、遺伝子治療にもっていったり、個人改良、というようないろいろな話題が語られています。 その中で、加藤先生は、1964年に大阪大学をお出になりまして、生物化学の専攻だそうですけれども、失礼しました、博士課程を修了されたそうですけれども、それ以来、こういう先端的な分野でのリーディングカンパニーのリーディングなサイエンティスト、あるいはリーダーとしてのお仕事を進めておいでになりました。 ご存知のように、宝酒造株式会社にお入りになる前まではアメリカで研究しておいでになったのですけど、それを請われて、どうしても、お前やれという強い要望で入社されたというふうに聞いております。日本のバイオは言われている割には成功例が少ないのだと私は思っています。それはどうしてかというと、自分で本当に技術開発をしたり、それから自分で本当に良い材料を探してきたり、あるいは自分の研究グループの研究をどんどん伸ばしたりするということが割合少なかったのと、それからそれが将来どういう意味をもつかということを社会にも会社にも一丸となって発信して、本当にその中に飛び込んでやるという姿勢が割合少なかったのじゃないかと思います。 それはかなり多くの、しかも大きな企業のリーダーたちが、自分で研究開発するよりも、よそよりも一瞬早く良い情報を手に入れて、そこに飛び込んで買ってつくるんだと、こういうポリシーをもってやってきたところに一つ問題があって、これからも問題じゃないかとも思うのですけれども、加藤先生はそれを一貫して否定して、全部自分でやるという、そういう方であったし、これからもそうであると私は思います。今日はそういうお話がうかがえるだろうと思います。私は、加藤先生のご経歴に関しては、もう時間の都合もありますので申し上げません。皆様のお手元に配られている予稿集の中に、きちっとこのご経歴がはいっております。それでは加藤先生、よろしくお願いいたします。 |