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さらにICSUというのは、ICSUの下にICSUファミリーという委員会をたくさんつくって、この中にたとえば環境問題なんかをどんどん進めた。SCOPE(Scientific Committee on Problems of the Environment)が非常に活躍して、これがまたさらにいろんな委員会を作って、環境問題なんかを非常に世の中に、こう浮上させてくるという働きをしたんです。こういう形で、助言もするし、委員会もつくって一種の活動もするというそういう構造であったわけです。 この今さかんに言われている地球温暖化になりますと、簡単に書きますと、こんなふうに書けると思うんですけど、1900年、非常に古い、地球温暖化に対するウォーニングというか警告を科学者は長い間、発していたわけです。 たとえば炭酸ガスを出すと温度が上がるぞと。こういうような問題は盛んにやったわけです。しかし、長い間それを聞く耳をもたなかった。先ほどのサミットと通じて、次第に理解をするようになると、1988年にIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)という、気候変動に関する政府間パネルという名のもとに科学者の集まりをつくって、その科学者がいわば正規に科学的知識をまとめて、政策立案者に提案するという仕組みができる。 こういったものを支えたのが、ICSUだったんです。ICSUの研究者たちが主役になってこういう組織をつくる。そうすることによって、科学者が気づいたこと、予言したことが、いわゆる政治の世界、社会の側に投入されて、社会が動きだすという構造がようやくできたんです。これが、我々の今話題になっている京都プロトコル(議定書)というわけです。 ああいった政治的な課題になってるんですが、もともとは炭酸ガス(二酸化炭素)が出ると地球が温暖化するぞというのは、気象学というか、地球科学の一部分である、学問的な知見というものがまさに、国際的な一つの議論の対象になり、それが各国の経済活動という、産業活動というものに影響を与えるという仕組みができたんです。これはいい仕組みです。これがないと、温暖化でやられちゃったかも。こういう仕組みがもっと必要なんじゃないかということを私は考えていて、ICSUのメカニズムをエネルギーに適用できないかと、こういうふうに考えてるんです。 エネルギーの研究を見るとですね、いっぱいあるんです。いっぱいあるんだけど、最終的に何をやっているかっていうと、たとえば中東にあるように、エネルギーっていうのは多くの場合、紛争の原因になるんです。エネルギーで、気候変動のように、国際的な協調がどうしてできないのかというのが、私のある意味での一研究者としての素朴な発想で、これを国際的な舞台に何とかして乗せてやろうと、さっきのICSUのメカニズムみたいなのを使ってやろうとしました。 考えてみるとエネルギー源というのは、原子力もあり、太陽もあり、もちろん化石燃料もありますよね。そういったものがさまざまあるんだけども、それぞれ研究者が研究していて、ここにもやはり領域間の総合的な検討というものがまったく欠落しているんです。で、よく言うように、エネルギー学というものが存在せず、化石燃料をやっているのは化学者であり、原子力発電をやっているのは物理学者であり、太陽をやっているのは物性論者で、そういったものをみんな違う領域でやっていますから、これが先ほどの邪悪なるものとはいえませんけど、再びエネルギー問題っていうのを起こしてしまったっていうことになります。 そこで、なんとかこういう形でやってみよう。すなわち、最初は科学者たちが領域を超えて議論しよう、すなわちエネルギー研究の総合をしよう。で、これがもしできたならば、その科学者のユニーク・ボイスといわれるものを使って、産業を動かし、ここが非常に難しいんですが、産業も一緒になってやはり国際的なフレームワークをつくろう。そうすれば、エネルギーというものは、人類が争う対象から協力する対象に変わってくれるんじゃなかろうか。そういったことは、科学者にしかできないんじゃなかろうか、これは科学者の大きな役割であろうというふうに思うんです。 |