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吉川弘之


独立行政法人産業技術総合研究所 理事長
吉川 弘之
吉川弘之



科学技術者の役割

  丁寧なご紹介をありがとうございました。吉川でございます。武田先端知ビルというすばらしい環境で、武田シンポジウムでお話できることを大変光栄に考えております。ご紹介いただきましたように、私は今、産業技術総合研究所というところにいて、第二種基礎研究というようなことをいろいろ言って、研究者たちと議論をしているわけでありますが、もう少し幅広く今日は、お話してみようかなというふうに考えています。

  本来ならパワーポイントできちっと書かなきゃいけないんですが、古い話でOHPの古いのを持ってきました。


  こういう、現代の邪悪なるものということを、一時期考えたんです。それは、人間にとっての過去の邪悪なるものというのは、天災というか、干ばつであったり、あるいは病原菌であったり、あるいは猛獣が外から襲ってくる、同じ人間ですけれども悪意をもった海賊ですとか独裁者、あるいは貧困といった、こういうものがそれぞれ、人間にとって外から攻撃をかけてくる。この外から攻撃をかけてくるというのが、過去における邪悪なるものの特徴であって、人間はいろいろな手段をもって、知恵をもってそれに抵抗してきた。

  実は人間とは弱い存在だったのだけれども、頭脳があるためにそこにいろいろな知識を溜め込んで、いわば、見かけ上かもしれませんけれども、地球上の勝者となったということです。したがって、こういう邪悪なるものとの戦いを通じて、いろいろなもの、たとえば干ばつということであるならば、どうやって水を引くことによって干ばつから逃げるかということで、そこには一種の土木工学の知識とか、そういったものが出てくる。病原菌は、医学の知識によって抑え込んでいる。こういったようなことをやってきたわけですけれども、それに比べて現代の邪悪なるものとは、少し違うんじゃないかということなんです。

  それは、このように豊富さと貧しさの共存というような問題とかです。あるいは、今盛んに問題になっている地球環境の破壊。システムが大きくなると事故が巨大化するというような問題。そういった現代を特徴づける、人間にとって問題なもの、邪悪なるものというのは、どうも外から病原菌がザーッと襲ってくるのとは少し違う。もちろん現代の病原菌もあるんですよ。ここにありますように、新興感染症というのがあって、これは過去の病原菌とは少し違うように思うのです。そういう外部から人間を襲ってきて、人間はそれに対していかに対抗するかということで、知識を溜め込み、知識の体系を作って強くなっていくというメカニズムとは違う、何か人間が行ったその行為によって、逆に問題を引き起こしてしまう。この環境問題というのが、人間の行為が非常に関係あるんだということは、少なくともこの数年でかなり明快にわかってしまったわけです。

  そういったことがあって、現代の邪悪なるものというのは、むしろ人間の行為そのものにあるというわけです。それをさらに人間の知恵そのものにあるといっていいのかどうか、知識そのものの中にあるといっていいのか。知恵というのはまた別物かと思いますが。知識そのものの中にあるかっていうことは大問題ですけれども、いずれにしても今まで人間が成功してきたのとは違う話です。


  それは多分、ごく簡単に言えばこういうことなのかなということです。それは科学というのは真理の探究、現在おそらく知識生産がもっとも効率がよく、また誰もが使えるものとして、科学的研究というのは行われるわけですが、真理の探究という名の下に一つの無矛盾性を追求しているわけです。


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