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総合討論


佐藤哲也


地球シミュレータセンター長
佐藤 哲也



シミュレーションを通してみる未来の世界 BACK NEXT

シミュレーションの精度の高さ

[図27] これは観測と今の台風予測シミュレーションとの比較結果です。少し粗く、5.5キロで全地球を見て、そのときの日本近海の、 台風に伴った雨の降っているところの雨量の比較です。気象庁の観測と比較しております。同じスケールで描きますと非常によく合っている。 それを1キロの精度でやってみますと、これぐらい局所的に大雨が降るところが予測できる。 そういう意味では現在ではどちらかというとシミュレーションの方が高解像度になっている。シミュレーションの方が先に進んでいる。 もしかすると、人工衛星とか、観測の精度のほうが悪くて、もう少し細かく観測してくれよと進言することもできる。 日本の気象衛星、もう少し1キロとかそれくらいのオーダーで全地球の情報をとってくださいよ、そうするともっともっと予測精度が上がりますよというわけです。 現在我々が使っているのは100キロおきの観測情報です。だから5キロのメッシュ上にインターポレート(補間)しなきゃいけない。 100キロおきの情報をインターポレートするのは、無理があるわけで、初期条件の観測のほうが粗いために予測がずれてくる。 そういう意味ではJAXA(宇宙航空研究開発機構)あたりにもっと人工衛星を飛ばして地球をオブザベーション(観測) してくださいよというふうに申し上げることもできる。我々が提言できるわけです。

地震波の解析

或いは地震波の問題もやりまして、例えばこれは阪神淡路大震災です。 ここにこうフォールト(断層)がありまして、それをシミュレートしてみますと、こういった形で地震波が伝わっていく。断層に沿っていきます。 そして堆積層のところに地震波が長く滞在している。それに対して、例えばシミュレーションですからなんでもできますので、 全部地下が岩石層だったらどうなるか。現実的に堆積層だとか岩石層、そういった地殻構造がかなり詳しく分かっています。 それに対して岩石層のみの場合、非常にあっさりしてます。岩石層は地震に対して強い、揺れがさっと流れてしまうだけで被害が少ない。 ところが現実は、盆地は堆積層でできていますから、まだいまだに震えておりまして、被害というものを大きくなるのが分かる。

[図28] これは、東大の古村先生がシミュレーションしておられる結果をいただいているんですけれども、東京直下地震が起こるとどうなるかというのを見てみます。 この青く描いてあるところが堆積層、緑色になっているところが岩石層です。これを見ますと明らかに堆積層の中に地震波は閉じ込められてしまう。 そしてこういう岩石層のところはそれほど揺れない。東京の新宿と熊谷で、例えば高い80階のビルディングを比較しますと、 いかに新宿にある高いビルが危ないかというのが分かる。マグニチュード7で数メートルぐらい揺れます。それに対して熊谷ではせいぜい50cmくらいです。 だから、田舎には高いビルはよろしい。都会は高いビルはダメだということになる。 もっと詳しいこともちゃんと計算できますので、もっと詳しいビルの構造を入れて、どの辺が危ないかというようなこともみんなわかってきます。

地球マントルの動きを予測

[図29] 次に、これはマントルの中でどうなっているかということのシミュレーションです。 マントル対流でプレートを作り、プレートを動かし、それが地震のもとになるわけです。 こんなような、マントルの中で起こっていることのシミュレーション、どうしてプレートができるのか、 プレートがどうして割れて日本海プレートというものができるのかというような研究を現在始めております。

安全な車の開発に役立てる

[図30] もうひとつは、これは実際的な産業応用です。 これは自動車工業会に無料で使ってもらっておりますが、要するに、これだけ大きなシミュレータが役に立つということです。 1億円で1パーセントの計算時間を買いませんかと言ったら絶対来ない。最初は来られないと思うのですが、非常に役に立つとわかれば後でお金をもらえます。 まだお金を取るとは言っておりませんが。だんだん我々学者も悪賢くなってきまして、金儲けをすぐ頭に浮かべます。 [図31] これは自動車の衝突です。 衝突をシミュレーションでできれば非常に開発、安全な車の開発に役に立つ。非常に低コストになり、開発期間も早くなることは間違いないわけで、 それを実証して欲しいということで自動車工業会に参加してもらっているわけです。

[図32] これは実際の先ほどの自動車の衝突をシミュレートしたもので、こちらは実際に、実車で実験したときの傷の跡です。 これが?センチぐらい、幅が?センチぐらい。それぐらいのオーダーの傷です。他にも白いところが傷ですが、 それをこれまでのコンピューターですと100万メッシュくらいの分解能しかできなかった。 100万メッシュくらいでやりますと、同じ条件でぶつけても全然違うところに傷が出る。これでは役に立たない。 それに対して地球シミュレーターでどんどん解像度を上げていくわけです。 1000万メッシュなんて簡単にできますので、一応1000万メッシュぐらいの解像度でやりますと、非常に綺麗な形でいろんなところの傷も合ってくる。 ということで、これまではシミュレーションで衝突のデザインはできないだろうということでしたが、それに対する一つの光明を与えたのではないかと思います。 シミュレーションというのはユニバーサルですから、実験車を夥しく作る必要はないわけで、データを消せばいくらでも実験を繰り返すことができるわけですし、 データもあらゆるデータを残せます。


図27
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図28
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図29
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図30
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図31
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図32
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Last modified 2006.6.6 Copyright(c)2002 The Takeda Foundation. The Official Web Site of The Takeda Foundation.