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トヨタ自動車(株) バイオ・緑化事業部部長
築島 幸三郎 |
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トヨタは、なぜバイオテクノロジーに取り組むのか |
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バイオ緑化事業になぜ取り組むのか
[図3]
なぜそのようにつぎつぎと新事業をやるのかというのは、先達たちから受け継がれている考えとして、一つの事業が繁栄を続けることができるのは30年というのがある。企業が成長しないと社内が活性化しない、社会的にもなかな貢献できない。本業がいいうちに新しいことに挑戦しようということがある。では、バイオ事業になぜ取り組んでいるかということですが、本日のテーマにマッチングしていることです。まずその背景をご説明します。
環境の側面で、世界の人口は、20世紀の間にわずか16億人から20世紀末には60億人、4倍に増えた状況であり、現在もアジアを中心に年間8,000万人増え続けているという背景が一番にある。第2点目にエネルギー消費、石油換算でみますと20世紀初頭には5億トンが、末には91億トン、18倍ぐらいに増えている。今後も増えて、特に中国とかインドとかの大人口国の経済成長につれて資源の争奪が起こりうるという状況だと思います。第3点目がその結果として大気中の二酸化炭素濃度が大変上昇しているということがあります。産業革命前はだいたい280ppm以下であったものが、2001年、IPCCが発表したデータでは371ppmまで上昇している。
今後の予測として21世紀末には540から970ppmまで上がるだろうと見られている。その結果として、地球全体の表面気温が20世紀の間に0.4から0.8度上昇したということです。特に地上部ほど高い気温上昇が起こっている。さらに21世紀末には1.4から5.8度ぐらい上昇するであろうと予測されている。先般、名古屋の小学生の環境教育に呼ばれて話をしたときに、これから大変なことになるなと実感したのですが、実際5.8度というのは山で言うと1,000メートルぐらい登るインパクトがある。小学生は21世紀の末まで生きるから大変。今見ている姿と世界が変わる劇的な変化が起こるんだなと思う。
第4点目が工業化都市化の進展で廃棄物処理問題が非常に深刻な問題になっています。地元の地方自治体でも新規の埋め立て処分場をつくるのに苦慮しているといっています。こういった問題、工業化都市化で水不足も深刻化している。ちなみに、中国の黄河では年間220日ぐらい河口まで水が流れてこないという状況。その反面、工業化都市化は、かつての耕地を潰してすることが進み、年間700万ヘクタールくらい耕地面積が減少していますし、森林面積も年間1,000万ヘクタールほど減少している。
加えて第5点目としまして、経済が発展しますと所得水準が上がるということで、穀物の摂取量は年率1パーセントか2パーセント、着実に伸びている状況です。今までは食糧は問題になってきておりませんが、それは、かつて穀物の新品種が世界各国で導入されて収用があがったり、灌漑などがあって緑の革命があったりしてそういう問題を抑えてきたのですが、こういう問題がだんだん息切れしてきているのではないかなと思っています。そういう観点から、21世紀は食糧とか水とか資源が不足し、地球環境の悪化が大変懸念される時代にきたのだろうと思っています。1972年、ローマクラブが成長の限界ということで警鐘を鳴らしたわけですけれども、エネルギーにしても省エネの努力とか、食糧ではグリーン・レボリューションの普及とか、あまり顕在化しなかったわけですけれども、いよいよその問題を真剣に取り組まないと、今の繁栄、豊かさを維持できない時代にきたのではないかと思います。
[図4]
そういった中で幸いにも、遺伝子組み換え等のバイオテクノロジーの発達によって、そういった問題を克服する技術の可能性が芽生えてきているのかなと思っています。供給サイドでいうと、まず成長が早いとか、たいへん収量が多い穀物の栽培が可能になってきているのではないかと思います。利用サイドでは化石資源、化石燃料に競合するコストでバイオマスからエネルギーとか材料をつくり出すことが可能ではないかというふうな視点が出てきました。そういった観点をにらんで、私どもは1998年以降、アグリバイオとかバイオマス活用に焦点を当てた技術化、事業化に取り組んできました。
[図5]
先般、京都議定書が発効するかどうかが大変注目を集めてきましたが、ロシアが昨年11月に批准することによって、京都議定書がこの2月16日に発効することが決まりました。日本の場合、2003年度の段階で90年より8パーセントオーバーしているということで、これから待ったなしで、環境問題に取り組まざるを得ない、いろんなことが起こってくるだろうと予測しています。
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[図3]
[図4]
[図5]
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