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サントリー(株) 生産技術応用研究所長
田中 隆治 |
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サントリーは、なぜバイオテクノロジーに取り組むのか |
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食品成分の複雑な組み合わせの効果
[図27]
もう一つ、今のはゴマの成分でありますけれども、セサミン単発でとった話であります。食品の中で我々はサイエンスをやっていて全部の効果をみるというのは、先ほども話したとおり大変難しい。しかし、食品の中というのは面白くて、ゴマの中でも、セサミンというリグランという化合物でありますけど、それが1種類あるわけではなく、4種類ある。面白いのは、ダイズのイソフラボン、皆さんよくご存知ですけれども、イソフラボンも4種類あるんですね。だけど、ある種のイソフラボンだけが今取り出されて、効果があるとかという話になっていますけれども、ダイズの中には4種類のイソフラボンがある。お茶もご存知のように、エピガロカテキンガレートと言って、カテキンというのは4種類ある。トマトの中のカロテノイド、さっき言いましたベータカロチンでなくて、スイカのなかにあるリコペン、ベータカロチンが危ないというと皆リコペンと言いますけれども、トマトの中にはリコペンもベータカロチンもほかのカロチンもあるというふうに複合の形で入っているわけです。
[図28]
例えば、こういうところで言うと会社から怒られるかもわかりませんが、赤ワインを飲むと動脈硬化を防ぐ。これはフランスのボルドーの地方の人たちが、脂っこいものを食べながら動脈硬化にならないし、心疾患にならないというところから、赤ワインというのは動脈硬化の予防、あるいはその心疾患予防にいいんだという話があります。そのようなことを我々も、やっています。確かに、赤ワインを飲みますと、これは最初に出された論文でありますけれども、普通飲まない人よりも、血液中の酸化する力を抑える効果があるということがわかってまいりました。そういう形で赤ワインのポリフェノールがそういう効果があるのではないかという皆推測をしているだけであります。しかし、赤ワインの中のポリフェノールの種類と量を調べてみますと、これぐらいあるわけです。(図29)
[図29]
このうち、どれが効くんだということは、なかなか一つ一つやってられない。お茶の成分であるカテキン類もたくさんこの赤ワインの中に含まれているわけです。ですから、こういうデータを見ながら、今度はお茶をやっている人たちはお茶を飲むと同じように動脈硬化が少ない、静岡パラドクスという、静岡県の人たちは心疾患にならないという疫学的なデータをもとにしてお茶がいいんだと言う。その根拠はどこにある、カテキンだ、赤ワインにもあるということが言われるようになってまいりました。しかし、この複雑な組み合わせが私はいいんだと思っているわけであります。ダイズのイソフラボンも組み合わせがいい。多分、お茶もお茶を飲むのがいいのであって、取り出したカテキンだけを飲むのがいいのかどうかは多少の問題があると思います。こういうこともネズミに全体的な成分を食べさせてどうなのか、個々の成分でどうなのかという比較ができてくるときに本当の機能性食品、我々にとって意味のある機能性食品は単発か複合体で取るべきなのか、あるいはお年を召された方たちはどういう形で摂取するのがよいのか、科学的な検証のもとにいろいろな形で情報をお知らせして、本当の健康食品の価値をみなさんに認識して頂ける時がくると思っています。
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[図27]
[図28]
[図29]
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