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パネル討論


田中隆治


サントリー(株) 生産技術応用研究所長
田中 隆治



サントリーは、なぜバイオテクノロジーに取り組むのか BACK NEXT

健康は自分で守る時代に

[図7]
現在、第三世代のバイオテクノロジーという波が来ています。第三世代のバイオテクノロジーというのは、先ほどの松原先生のお話の中にあったように、この生命科学をうまく利用しながら、たくさんの情報を出していく。この情報をいろいろな分野にいかに利用していくかというのが、私どもの考える第三世代のバイオテクノロジーではないかと思っております。私どもは食品の領域を拡大するために、現在この分野をうまく使おうとしております。そういう意味でサントリーは医薬をやりながら新しいバイオテクノロジーという世界を企業の中に取り込みながら出口を見つけようとしていったわけであります。一つは植物の分野。一つは食品への拡大の分野であります。

[図8]
これは、1997年のデータでありますけれども、この当時から機能性食品の開発というのが世界的に大変活発になってきました。食品の分野と医薬の分野、市場では約10倍以上の差がありますが、医薬と食品の分野の間に新しい分野が期待されるようになってきました。

[図9]
これは皆様方もご存知のようにいろいろな社会的背景があるわけであります。私どもが考えます社会的背景といいますのは、高齢化をしていく、あるいは医療分野におけるいろいろな保険コストの問題、あるいはそのいろいろな情報が入ってまいりますと、健康というものはやはり自分でまず考えるという世界、そういうことによって様々な問題が解決してくる。しかし、予防的、たとえば医学、あるいは健康をそのまま持続する、あるいは健康をさらに健康にしていくという考え方はなかなか治療医学の分野では、できないことはないわけですけれども、そういう新しい可能性が出てくる。そういう中で予防するために薬を用いるわけではなくて、食品の中からそういう素材の可能性がないかどうかという世界が出てきたわけであります。これを可能にするためには、後から出てまいりますけれども、この新しいバイオテクノロジーのいろいろなツールというのが必要になってくる。というのは、医薬と食品とはどう違うかと申しますと、それは簡単な話であって、医薬とはほとんどが単剤、一つの化合物でできあがっていますので、その機能を調べるにあたっては、いろいろな従来の方法があるわけであります。しかし、食品は、その中の成分が取り出され、成分が議論されると同時に、本来は食品として特定機能があります。たとえば、有名な話で、トマトの中にある成分、機能の重要な働きをするベータカロチンという赤い色素がありますけれども、それは大変抗酸化作用があって機能がいいと言いますけれども、トマトを食べるのとベータカロチンを食べるのでは意味が違うんだという議論が多くあります。そういう意味、ミクスチュア(混合物)として、食品として丸々食べたときに本当に機能が単剤としてとったよりもあるのかどうかというのはなかなか評価が難しいわけでありますけれども、そういうことを評価することができる技術が発展してきたわけであります。

[図10]
少し全般的な話になりますけれども、現在日本の中で皆さんもよくご存知のように、科学振興策ということが議論されております。そういう中で、ITの世界、情報通信の世界、あるいはこのバイオの世界、あるいはナノテクノロジーの世界、環境の問題、こういうところに力を入れていっていろいろな産業の振興策をやろうという形で、約10年前から議論がされるようになってまいりました。当初はこのバイオの技術、バイオのいろいろな考え方を、まず医薬、あるいはその医薬の周辺の産業に向けていこうされました。あるいは食糧生産に関する植物の育種、日本ではコメの改良という世界がやられたわけでありますけれども、そういうところに向けていこうという考え方で出発いたしました。2002年12月25日の政府の考え方(総合科学技術会議)では、さらにこの一番目のところに健康維持、特に機能性食品の利用、こういう分野にもバイオを使って力を入れていこうという話が出てまいりました。これは我々食品メーカーが一生懸命話したわけでありますけれども、なぜここに入れていただいたかというと、世界に比べて、日本、中国、アジアは、この健康食品という考え方の基盤があると、あるいはこの分野に関して多くの素材を持っていると。そういう日本の強みを生かして、この新しい技術を使って世界に発信できるように力をつけていくために産官学が一緒になってやろうと強調いたしました。2002年の時点でこのようになってきており、後は環境の問題、食の安全の問題が取り上げられてきております。

[図11]
こういう中で、トータルのヘルスケアにおけるバイオテクノロジーの出口というのは、現在このように考えられております。もちろん従来の医薬、二次ケアといわれる一部予防、一部治療の世界、それから第三次ケアといわれる機能回復、これはこれからのいろいろな高度医療の中、あるいは福祉の中で考えられる分野です。それともう一つは今申し上げました、病気にならないために予防であるとか、健康増進とかという世界が新しい分野として食品の中にあるんだという考え。この三つのケアをもって、特に高齢化していく、あるいは少子化の中で子供を大切に育てるためにこういう考え方と、この考え方に基づいたいろいろな産業の振興が現在見込まれているわけであります。

[図12]
これは、今の新しいバイオテクノロジー、いろいろな分野がありますけれども、こういう分野が将来どのように発展し、どのように産業に貢献していくかというふうなことが検討された図であります。残念ながらこの赤い線で示します「1」の線に近いところ、これは日本の競争力と欧米の競争力の指数を割ったものです。ですから「1」を超えるところは日本の強い技術であって、「1」以下は欧米が現在バイオの分野で強い世界であります。残念なことに、日本は、欧米が現在強い分野、しかも将来大きく開けていく分野をサポートする技術が現在遅れているという図であります。もちろん、多くの研究者、多くの人たちが日本の技術を上げるために今努力をしていることも確かであります。そういう意味で、日本がまだまだ強いといわれる発酵であるとか、微生物利用であると、か今申し上げました機能性食品の分野であるこういうことをこの新しいバイオの力を使ってなんとかやっていく。

[図13]
そのために仕組みとして我々が考えておりますのが、この技術はなかなか一社でやれる話ではありませんので、産官学という連携を基にし、あるいは企業間での連携を基にし、さらには個々の企業、あるいは日本がもっている強みを生かすことによって取り組んでいくべき世界だと思います。


図7
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図8
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図9
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図10
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図11
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図12
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図13
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