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パネル討論


田中隆治


サントリー(株) 生産技術応用研究所長
田中 隆治



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食品の機能に注目

[図17]
これはアメリカの学者たちが最近強く言い出したことであります。私どもの形質発現は、私どもが持っている遺伝子、私どもの顔の形とか、最近は私どもの行動まで言われています。行動とか、趣向とかは私どもが持っている遺伝子と、私どもが生まれてから、いろいろな環境の場面に出くわすといったようなことに影響されて、私どものいろいろなことが発現しているんだと言われるようになってまいりました。そういう意味で、特殊な環境にある問題と一般的な環境、生まれてから食物を摂らないで生きている人はいないわけでありますから、死ぬまで食べる。食べ物の中に大きな影響があるのではないかということを考えるわけです。昔は、つい最近まではそういうことを調べる道具がなかったけれども、そういうものを調べる道具が出てきた。

[図18]
一部、そういうことは従来からもわかっていたわけです。例えば、タバコを吸いますと、肺気腫を伴うがんになるというのは今の世界で言いますと、α1アンチトリプシンという遺伝子がスイッチオンされて異常になってくる。その意味で吸わない人よりも吸った人が、この遺伝子が動くために肺気腫になる。そういうところから平均寿命を考えると短くなる。つまり肺がんを起こして死ぬ。乳がんの話も喫煙と乳がんとの関係、あるいは脂肪主体の食事、ウィルス感染と乳がんとの関係、これは遺伝子によるものです。あるいはタバコを吸うことによる、食べ物を、あるいはこういうものを大量に摂ることによって、この関係があるということがわかってきております。一つものすごく面白い話があります。皆さん、シャム猫というのはご存知だと思います。シャム猫というのは耳が黒くて、あれは手というのか足というのか知りませんけれども、四つ脚があります。足の先が黒いですね。あれはなぜ黒いかというと、足の先の体温が低いとシャム猫はその近辺の細胞が黒くなるという、関係があります。いわゆる寒さと、これも環境でありますけれども、その遺伝子発現によるものです。シャム猫をお飼いになってられる方、近年寒くなっておりますので、ずっと寒いところにいると、体が真っ黒なシャム猫ができるという話であります。暖かいところへ連れていくとですね、シャム猫はどんどん耳の色も薄くなってくるということがわかっています。いろいろな環境によって遺伝子がスイッチオン、オフすることによって私どもの体性が変わったり、いろいろな状態が変わるということがわかっております。

[図19]
そういうことが調べられるようになりまして、そういう分野を我々は今ニュートリゲノミクスと呼んでおります。食品がいろんな形で我々の健康に影響を与えるかどうか、調べる手段ができてまいります。

[図20]
ご存知のように、ゲノムが解読されました。ここで皆さんびっくり、我々もこれが出てびっくりするのは、人間が30億塩基対(ベースペア)、核酸塩基の数がこれぐらいある。チンパンジーも同じで、マウスも同じである。もうほとんど何も変わらないということです。もっと驚くのはその遺伝子の数になりますと、我々とショウジョウバエはたったの倍しかないというデータが出てまいるわけであります。我々とショウジョウバエなんていうのはものすごく違うと思っているんですけれども、遺伝子の数からするとそんなに差はない。

[図21]
そうすると、何がその差をつくっているかというと、30億の塩基対が並んでいて、25,000ぐらいの遺伝子があって、それがどんどんどんどん最後のタンパクになっていったときに、いろんなものをつくることによって我々は複雑な組織、形を成しているんだというようなことわかってまいりました。現在こういうことがわかっていて、最終的なタンパクを調べないと食品の影響が出るのかどうかというのは本当はわからないのでありますけれども、私どもは現在使える技術を使って予測ができるかどうかをいくつかの食品の化合物で調べているわけであります。

[図22]
現在DNAからメッセンジャーRNAと次の伝達物質がつくられる、これを調べる、網羅的に簡単に調べることができるシステムができます。これは本当は日本の企業にがんばっていただきたい。日立さんや、いろんなところでやっておられます。今、使いやすい道具がアメリカのアフィメトリクス社のマイクロアレイシステムです。そういうものを使って調べられるようになってまいりました。

[図23]
それで、私どもは今二つのことをやっている。セサミンというゴマの成分がございます。これはいろいろな効能を示すということが、動物試験、あるいはヒトの試験を行いながらわかってきております。肝臓の機能を活性化する、あるいはコレステロールを低下させる、血圧にも効果がある。なぜ一つの化合物がこんなにたくさんの機能を引き出すのかということを調べております。それで今日は一番ここではわかりやすい話。セサミンを飲みますと二日酔いしない、つまりアルコール代謝を結構速めてくれるという効果があります。ねずみを使ってやってもヒトでやってもそういうことが過去の実験例から明らかであります。


図17
[図17]








図18
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図19
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図20
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図21
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図22
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図23
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