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田中隆治


サントリー(株) 生産技術応用研究所長
田中 隆治



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セサミンの効果を考える

[図24]
それで今のバイオテクノロジーで何ができるかというお話をしたいと思います。一つはねずみに調査する化合物を食べさせる、この場合はセサミンを食べさせるわけです。もう一つはセサミンの入っていない餌を食べさせまして、2週間なり、3週間なり飼育いたします。そういう状態のもとにねずみの肝臓を取ってまいります。その肝臓からメッセンジャーRNA、つまりどういう遺伝子が動いているかということを調べます。

[図25]
そうしますと、一つのデータが出てまいります。この点一つが遺伝子一つだと考えていただければいいわけでありますけれども、下の横のラインがセサミンを食べさせなかった動物、縦のラインがセサミンを食べさせた動物。食べさせなくても食べさせても一緒であれば、この直線の上に全ての点が乗ってくるわけでありますけども、セサミンを食べさせたネズミに関しましては、この図でおわかりのように、いくつか点がこの直線から外れたデータになってまいるわけであります。これはその一つの点がどの酵素かというの調べてみると、すぐわかるわけであります。大変面白い結果になりましたのは、これは皆さんよくご存知のように、アルコールを摂取いたしますと、アルコールを分解する酵素、アルコール脱水素酵素、アルコールデハイドロゲネイズという酵素が働いて、アルコールを分解してアセトアルデヒドにします。そのアセトアルデヒドがアルデヒド脱水素酵素、ALDHという酵素によって酢酸になって、酢酸が二酸化炭素と水になってアルコールの機能はなくなってしまうわけであります。日本人はこのアルデヒド脱水素酵素、ALDHが低い人が結構いますので、アセトアルデヒドで止まってしまうと、二日酔いになったり、気分が悪いという現象になります。酒を飲むとすぐフラッシュ現象、赤くなったり、お酒をコップ一杯飲むのも大変苦しいという人たちが出てくるのは、このALDHが欠けている人、あるいは大変弱い人であります。

[図26]
セサミンだと、この遺伝子、アルデヒド脱水素酵素、ALDHという酵素が通常の状態よりも2倍、あるいは3倍くらい活性が上がります。アルコールをアセトアルデヒドに分解する酵素に関しての遺伝子は全く動きませんけれども、アセトアルデヒドを分解する酵素は活性化されてくるということがわかってまいりました。そういう意味で、セサミンを酒を飲む前、あるいは飲んだ後に摂取いたしましても、アセトアルデヒドを分解する酵素が少し上がってくることによって、酢酸、あるいは水、二酸化炭素に変換していってアセトアルデヒドの害を免れるということがわかってまいりました。このように、最終的な現象、そのお酒を飲んだらなんか効く、あるいはコレステロール値が下がるというのはよくわかるんですけれども、どういうメカニズムでそれがどうなっているのかということがわからない限り、その系が動くことによってその人たちにとって安全なのかその系を動かすことは安全でないのかということも大変重要なことであるわけであります。そういうことがわかってまいりますと、本当に食品の中でいいものが、私たちの役に立つというように科学として実証されてくる、これは医薬品と同じように、安全性の問題と機能性の問題というのがこれからの食品においても大変重要な問題だと思います。


図24
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図25
[図25]



















図26
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