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パネル討論


黒川清


第二部 パネル討論  「バイオテクノロジーは生活者を豊かにするか」

日本学術会議会長
黒川 清



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アジアにおける日本を考えよ

もう一つの問題は何かというと、64億といいましたけれども、そのうちの80パーセントは開発途上国と低開発国にいます。20パーセントはイスラムです。世界の人口の60パーセントはアジアにいます。アジアはまちがいなく成長してくる。だけど、アジアはこれまで成長してきたヨーロッパと違います。ヨーロッパは、一応キリスト教という一つのパラダイムで南米も北米もヨーロッパも、一つの宗教で、あまり意識していないかもしれないが、ずっと成長してきました。アジアは人種も宗教も文化もかなり違う人たちがいて、グローバリゼションによって情報が広がっているところです。アジアが必ず成長してくるときに、100年前に西洋化して一応日露戦争に勝って成功した日本は、アジアのために何ができるかということを考えてアジアでの信頼を再構築しない限り、25カ国が一緒になったEUヨーロッパが、アジアに付き合うと思いますか、日本に?アメリカは、日本に付き合うと思いますか、50年後に?つまり、アジアでの日本の歴史的な背景を考えれば、どういう国になって、だからアジアから信頼されるかということがない限り、経済だけでいってるんであれば、ECもアメリカも付き合うような国になれません。じゃあ、どうしたらいいかということを考えるのが皆さんのことじゃないの?と思います。だって、たった15年前まではジャパンアズナンバーワンといわれて誰も文句いわなかったじゃない。その理由は何かというと、政産官の鉄のトライアングルで、誰もいちゃもんつけなかったじゃないですか。私は言いましたよ、ちゃんと。ここに学という言葉がないのは、単なる成金だと。本なんかには、お金がなくなれば誰も付き合う人はなくなるよということを書きましたよ。しゃべってもいたけど。最近になってどうして産学官なんていうの?おかしいじゃない。たった10年前ですよ、産学官なんて言い出したのは。それは政産官の鉄のトライアングル、ジャパンアズナンバーワンなんて言って、こんなのはどこにいたの?おかしいじゃない?ということですね。64億の人の20パーセントが1日1ドル以下の極貧の生活をしています。世界の60億の半分は1日2ドル以下という貧しい生活をしています。それを皆さん知っているんですよ。知っていて何ができるかを考えていますか?

エイズの最初の患者さんが出たのは1981年です。20年前、私がUCLAに行ったとき、その何人かの患者さんを見たから知っていますけど、今や2千万が死んでいます。20年の間に。今4千万の患者がいます。そのうちの70パーセントはサブサハラ(サハラ以南)にいます。そのサブサハラの15歳から24歳の女性の75パーセントがHIVポジティブ(陽性)です。どうします?皆知ってるはずですよ。そこに何ができるかということを考えていますか?そこはすごく大事なんじゃないかと思います。世界の人口の20パーセントがイスラムです。20年後には30パーセントがイスラムになります。例えば、20年前のサウジアラビアの人口は900万です。今どのくらいか知ってます?2100万ですよ。20年で。70パーセントは20歳以下なんだから。それに追いつくだけの学校、仕事、できると思います?そういう世界に住んでいる子供たちはどういうふうになるでしょうか。考えたことあります?

日本は、少なくとも経済大国になって、アジアで一番成功したモデルであるんであれば、そういうビジョンで次の日本の立場を確立しない限り、それは国の信用の問題であり、それが安全保障の基盤なんじゃないですか?それをするのにはあまりにも日本は内向きなんじゃないかなという気が私にはします。

イスラムの問題を取り上げてみましょうか。イスラムは、そうはいってもイスラムの60パーセントはアジアに住んでいるんです。マレーシア、インドネシア、パキスタン、バングラディッシュ。日本はいい関係を持っているんですよ。中東のイスラムだってすごくいい関係持ってるのだから、そこに何をする。科学技術創造立国なんて言っているけど、その科学技術というツールを使ってこれからの環境、成長するアジアの環境を、成長しながらどうやって環境、食料、エネルギー、水、何を貢献できるかということによって、やはり日本の貢献、日本の国の力ということが認められて初めて、日本の国の安全保障の基盤になるんじゃないですか?皆さん、お友達になりたい人は単なるお金持ちならいいわけですか?違いますね。そういう国になれますか?それがやっぱり大事なんじゃないですか?それが私たちの子供や孫や、その先のアジアの人たちにやっぱり安心な国をつくってあげられる一つの条件じゃないだろうかと思っております。

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