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主催者挨拶
松原謙一氏講演
田中隆治氏講演
築島幸三郎氏講演
黒川清氏講演
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パネル討論


黒川清


第二部 パネル討論  「バイオテクノロジーは生活者を豊かにするか」

日本学術会議会長
黒川 清



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人口の都市集中と環境問題

さて、そうなると21世紀の問題は人口が猛烈に増えているということです。しかも生活と経済のパラダイムが産業革命以来変わりました。日本も含めて先進国では75パーセントの人が都会に住んでいます。50年前、日本の労働人口の50パーセントが農民でした。今、農民は4パーセントです。それをあたりまえと思っていちゃいけない。たった50年前と全部違う。そのおかげでどんどん都市化していて75パーセントの人が都会に住んでいる。それは世界中がそうです。今、開発途上国でも40パーセントから50パーセントが都会に住んでいます。それはそういう経済体系になっているわけです。例えば、これからのライジングパワーの中国であっても労働人口の70パーセントが農民です。8パーセントの経済成長を維持するのに、エネルギーが猛烈に必要です。先だってダボス会議に出席していたのですけれど、中国は、あと15年から20年経済成長率を8パーセント維持するといってます。だけど、今の中国のエネルギーの70パーセントは石炭です。今、どんどん石油(オイル)を輸入しています。環境をどうしますか。中国はこれから毎年原子力発電所を3つから4つつくる計画です。必要ですから。その時日本は何ができるかを考えてください。つまり日本の原子炉の安全、安全というけれども、テポドン1発打ち込まれたらどうするの。隣から1発やられたらどうするのですか。隣の中国では、原子力発電所を毎年3つから4つつくっていくのですよ。そういうことを考えたら日本の中の原子炉の安全、安全とばかりいっているのでは駄目なのではないの、ということを考えて下さい。


日本の科学政策をどうするのか

さて、この環境です。エネルギー、どうするんですか。気候変動(クリメートチェンジ)もそうですね、どんどん暖まっていくから、カーボンニュートラルなエネルギーの資源(ソース)をこれから投資開発(インベスト)して、100年後、200年後どうするのか、それが科学技術政策ではないですか。その時に日本はどうするのかを考えるのが政策であり、国のビジョンです。ビジョンを達成するために、政策をつくっていくんですよ。そこにどういうふうに投資するかを考えなくちゃいけないのに、今さしあたりのリーダーはできない理由ばかり言って、30年過ぎれば何がくるかわかっているでしょう?日本の3分の1は65歳以上になるのです。そのときどうするのですか。イタリアの特殊出生率は低くなっていますから、イタリアは2050年には日本を越えた高齢社会になっています。ですがイタリアはECで陸続きですから、あまり問題ありません。しかし、日本は島です。それでもやっていくのですか。今始めないと遅くなりますよ。移民をするのですか。女性をもっと社会進出するようにするのですか。女性がもっと子供を産めるような社会をつくるんですか。これが、さしあたり明日の生活も大事だけれど、明日のプロモーションも大事だけれど、もっと先の20年、40年先を考えたら何をするのかが大事です。今やらない限り、必ず取り返しがつかないことになるし、みなさんほどのインテリであれば10年後、50年後に何が起こるか予測できているはずですから、どうするかを決めるのが政策の決定のプロセスです。

環境です。ですからトヨタはすごいということです。いろんな理由はあるかもしれないけれど、他の会社はやるか。たとえば、トヨタのプリウスとホンダのシビックはハイブリッドエンジンです。ハイブリッドエンジンを開発したのは20年前ぐらいだと思います。それはなぜかというと、それはカリフォルニアのマスキー法があったからです。つまりエミッションコントロールのものすごい法律をつくられたからです。それを日本の会社はクリアしたのです。次は何かなと考えて投資したわけです。今やハイブリッドカーのトヨタのプリウスとホンダのシビックは、アメリカでは1年待ちです。つまり、アメリカのテキサスの人たちがみんな欲しがるとは思わないけれども、5パーセントのいわゆるオピニオンリーダーは1年待っても、そういう車を買いたいというメンタリティーになってきているのです。オピニオンリーダーというそれぞれの先進国の5パーセントから10パーセントの人たちが、どのような振る舞い、行動(ビヘイビア)をするかということがだんだん国の行く末を決めていくということです。そこで、環境問題について、すべての産業は中長期的に環境にコンパティブルなものをつくらない限り、絶対コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティー(CSR、企業の社会的責任)としてはグローバルマーケットにはサバイバルできません。まちがいなく。

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Last modified 2005.3.1 Copyright(c)2002 The Takeda Foundation. The Official Web Site of The Takeda Foundation.