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主催者挨拶
開会の辞
趣旨説明
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吉川弘之氏講演
坂村健氏講演
加藤郁之進氏講演


趣旨説明


財団法人武田計測先端知財団 専務理事
赤城 三男



武田シンポジウムの趣旨説明

  [図13]いくつか注目したい業績の例を挙げましたが、ここで我々の財団の考え方についてもう少し別の切り口からご説明します。まず、生活者による選択が価値をつくり出すという風に考えております。技術者や研究者はこういうことが生活者にとっての価値を増大させるはずだ、と考えていろいろなものをつくります。が、選択するのは生活者です。ただし、生活者自身は何が実現できるかということについてあまりよくわかっていないわけですから、これが欲しいということをきちんと自分で表現できるわけではありません。ただ、こういったものがあればいいなというような漠然としたイメージを持っているわけであります。このイメージや自分がほしいと思う考えに基づいて、マーケットに投入されるいろいろな商品を選択するというマーケットメカニズムが働くわけです。このマーケットメカニズムが働くことによって、生活者にとっての価値が、技術者がこんなものと考えたこと、生活者がこういうものが欲しいと考えたこと、この両方があって実現されるというふうに考えております。ですから、生活者の側に立つということが大事だと思います。もちろん、生活者になりきってしまうわけにはいかないのですが、生活者の視点に立って物を見るということになります。これが大きな違いをもたらすのではないかと考えております。学問的な知の方向から応用を見るということだけでは生活者にとっての価値を実現することはなかなか難しいのではないかと思います。

  [図14]マーケットメカニズムというお話をしました。今までの歴史の中でマーケットのメカニズムが生活者にとっての価値をつくり出す、最も効率的なメカニズムであったと考えております。これはなぜかということですけれども、マーケットで生き残るために、外からの変化をもたらすからだと思っています。同じやり方を続けていますと最初の精神が忘れられてしまって、硬直化した繰り返しになっていきます。そこで変化が必要なわけですが、自分では変わったつもりということが多いのですが、物差しを外におかなければ、独りよがりの変わり方になってしまいます。こうならないようにするのがマーケットメカニズムだと思います。もちろん、マーケットメカニズムにもいろいろ欠点はあります。たとえば、エンロンやワールドコムのように、マーケットメカニズムのもっている欠点というのもあると思います。

  先ほど武田の話にもありましたけれども、やはり、志を持って企業を設立してそれを発展させようとするか、あるいは単にお金をもうけるために努力するかということによって結果として天と地ほどの差が生まれるのではないかと思っております。エンロンとかワールドコムなどは極端な例ですけれども、楽観的かもしれませんが、マーケットメカニズムの短所は徐々に適正な矯正を加えることによって修正されていくというふうに考えております。

  [図15]それからもう一つ、全地球上の生活者ということを言っております。これは生活者にとっての価値を実現する知とか業績というのは人々とともにあるわけですから、世界中どこにでもあるわけです。先進国だけにあるわけではありません。我々は先進国の業績に眼がいきがちですけれども、これは自分たちの力が足りないので先進国以外は良く見えないためだと思っております。さらに、長い歴史の中で見れば、先進国も発展途上国も変わってきたわけです。バグダッドで文明が栄えていたときには、アメリカ大陸にはそれほどの文明はなかったと思います。また、90年代から21世紀にかけて世界の人口の約半分を占めるといわれる中国とインドが順調な経済発展を遂げたために、両国においてミドルクラスが登場して世界の所得分布の差が改善されたというような報告もあります。我々財団としましては、理念を明確にもっていくということと同時に、世界を見つめてその中から驚きや感動がある業績を見つけて生きたいというふうに考えております。

  このようなお話をすると大変難しいことと思われるかもしれません。事実その通りではあるのですが、理念を明確にしていくということと同時に、我々自身の感性を大事にしていきたいと考えております。いろいろ理屈があるかもしれませんが、生き生きとした人間活動が価値をつくり出すということが原点にあるのではないかと思います。我々としましてはそれを感じ取りまして、様々な形でメッセージとして発信していく事業を行って生きたいというふうに思っております。

  今日のシンポジウムでは吉川先生、坂村先生、加藤先生にお話をいただきます。それぞれ最先端のお話をしていただけると思いますが、大きな繋がりの中では私どもの考え方と繋がりがあるのではないかというふうに思っております。今日のシンポジウムのコーディネーターを財団理事の西村が務めさせていただきます。それぞれの先生方の講演の後で質疑応答の時間をとってありますので、活発なご質問をお願いしたいと思います。

  最後になりますが、今日ここに来て良かったなということを皆様方が感じ取ってくだされば、主催者としては望外の喜びでございます。ありがとうございました。

[図13]



















[図14]





















[図15]


Last modified 2004.3.1 Copyright(c)2002 The Takeda Foundation. The Official Web Site of The Takeda Foundation.