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主催者挨拶
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趣旨説明
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吉川弘之氏講演
坂村健氏講演
加藤郁之進氏講演


趣旨説明


財団法人武田計測先端知財団 専務理事
赤城 三男



武田シンポジウムの趣旨説明

  [図8]ここまでが財団の大きな考え方のご説明です。残念ながら、今年度は経済状況が悪く、顕彰事業は休止しております。その代わり、イノベーションの調査や、アントレプレナーの活動の調査などを行いながら、財団の考え方を明確にしていくとともに、シンポジウムとか、プロシーディングスなどの形でメッセージを発信していきます。今日のシンポジウムはその柱となる活動と考えております。

  [図9]ここで、財団として広い意味でどんな業績に注目していくかということについてもう少し詳しくお話いたします。これは賞を出すということだけではなく、調査活動をしたり、その結果を報告書や本として出版したりする活動の対象という意味で、どんな業績に注目しているかということです。

  財団はこれまでお話ししましたように、生活者にとって大きな価値をもたらすような業績に注目いたします。しかも評価の定まった業績よりも、これから大きな価値をもたらす可能性のある業績に注目したいと考えています。このためには、技術の可能性と生活者にとっての価値としての可能性を考える必要があります。こういう意味では、評価が確立したアカデミックな知に注目して源流を遡るノーベル賞などとは、違った考え方をしております。

  もう一つ大事だと思っておりますのは、我々はまだ始まったばかりの財団で、理念とか考え方が確立しているわけではありません。ですから、自分たちの感性を磨いて、それに耳を傾けること、これが大事だと思っております。驚きと感動のある業績というのは生活者にとっての大きな価値をもたらすと考えております。

  [図10]我々が注目してきたいくつかの例をご紹介したいと思います。  最初の例は2001年の武田賞授賞業績のフリーソフトウェア、オープンソフトウェアです。フリーソフトウェア、オープンソフトウェアは、マーケットメカニズムの外で腕に覚えのある技術者たちが開発を進めました。コミュニティによる開発ともいわれます。自分が興味を持っている機能を開発して、それを集めて優れたソフトウェアを開発しました。その動きがマーケットメカニズムを刺激し、投資が行われ、大きく発展し、生活者にとっての価値を実現しています。最近では、どこでもコンピューター、ユビキタスコンピューティングということで坂村先生は引っ張りだこですし、Linuxについては大手のITベンダーがこぞって採用するようになっております。しかも、そういうふうになってもマーケットメカニズムの中に組み込まれてしまうのではなくて、コミュニティによる開発ですとか、ソースコードを公開するというLinuxの考え方、開発の基本的な精神はきちんと生きております。また、坂村先生のお仕事でいえば、マイクロソフトがトロンに参加しましたけれども、トロンの精神は変わらないということを坂村先生もいわれております。このようなソフトウェアの世界でまったく新しいやり方で生活者にとっての価値をつくり出したわけです。これが、財団の注目したい業績の一つの例です。

  [図11]次の例です。20世紀末に達成されたヒトゲノムの解読は、前世紀最大の業績の一つとされています。2001年度の武田賞受賞者のハンカピラーさんとべンターさんは民間からの資金を集めてセレラ社という会社を設立し、大規模ゲノム解読システムの開発により、ゲノム解読を大きく加速しました。ブラウンさんとフォダーさんが開発したDNAマイクロアレイは、この解読されたゲノムを解析するのに必須の方法を提供したものです。  また、DNAマイクロアレイの開発自体、ヒトゲノムの解読により可能になったという側面もあります。ゲノムの解析によって遺伝情報に基づく個人差の仕組みが明らかになり、個人の遺伝情報に基づくテーラーメイド医療とか、予防医学が今後の目標になっています。この遺伝子分野における進歩は海外に限りません。本日お話される加藤先生も独自の視点からこの分野で次々と新しい仕事を始められ、生活者の側に立つ医療の確立に大きく貢献されようとしています。
  今日はこの最先端のお話が聞けるのではないかというふうに期待しております。

  [図12]3番目は環境系の例ですけれども、シュミットブレークさんとフォン・ワイツゼッカーさんの提案したMIPSとエコリュックサックという概念です。これは、製品やサービスを提供するために動かされた物質の重さを合計することによって、地球環境に対する影響の大きさを測るという新しい発想に基づくものです。重さで測るわけですから、地球環境への影響の評価に対して主観的な要素が入りにくい物差しを提供できます。人々の日々の生活における様々な活動が地球環境に影響を与えるわけですが、そのつながりは非常に複雑です。ですから、どうすればいいのかというようなことはモデルによっても様々な見解が可能になります。時によっては反対方向の見解が出ることもあります。お二人の提案されたMIPSとエコリュックサックの概念というのは物やサービスを提供するのに客観的な数値を与える。主観的な見解の相違を排除して評価できる、そういう可能性のある業績として注目しました。

[図8]


[図9]

















[図10]




















[図11]













[図12]


Last modified 2004.3.1 Copyright(c)2002 The Takeda Foundation. The Official Web Site of The Takeda Foundation.