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講師: 斎藤成也(さいとう・なるや)、
ゲスト講師: 佐々木閑(ささき・しずか)
日時: 2006年4月22日 |
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あなたはどこからきたか −日本人のDNA− |
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三井: 危ないことを。
>> DNAが、他人だと200万個違って、兄弟姉妹だと100万違うということですが、
他人で顔が似ていたら、どうなんでしょうか。
三井: かなり難しい質問のような気がします。「他人の空似」ということですか。
斎藤: 若い頃のことですが、長崎で学会があったときに、懇親会の2次会で酒を飲みに行ったら、
スナックのママさんが私の顔を見て、何も言わないのに、ボトルを持ってきたんですね。僕は驚いたんですけど、「他人の空似」だったみたいです。
顔が似てるというのは親子ではありますから、これは生物学じゃないですけど、先ず疑うことは、「他人なのか」ってことですよね。
つまり、他人だと思っていたのが間違いであったと。よくありますからね。突然変異率を推定する時も、親子であることを前提としていますので、
本当の親子でなかったら、見かけの突然変異率はバーンと上がりますよ。いっぱい違いがありますから。
本当に他人であっても、顔が似ている人はありますよね。私は大竹まことに似ていると言われますが、たぶん血縁関係はないと思います。
おそらく、顔を形作る遺伝子があるはずですね。ゲノムの遺伝子は2万ほどありますけども、顔の遺伝子はそんなに多くないと思います。
せいぜい100くらいじゃないですかね。100くらいだったら、偶然似てくるということはあると思いますね。
三井: 俗説には、世の中に3人は自分に似た人がいると言われますが、そのくらいの確率で説明はつきますか。
斎藤: こういうことを言う人はあまりいないので、一般の研究者の言葉として聞いて欲しくはないんですが、
他人の空似どころか、犬顔とか狐顔というのがありますよね。私は、ひょっとすると、狐の遺伝子と、狐顔の人の遺伝子で、
目のところの遺伝子だけを調べたら、似ているんじゃないかなと期待しているんです。例えば、世界中にたれ目の人はたくさんいるし、
顎が尖っている人もたくさんいますね。要素要素で、何百万人も似た遺伝子の人はいるから、その組み合わせだったら、3人と言わず、
100人や1000人いても、おかしくないと思うんですけどね。
>> 韓国や中国の吉林省へ行くと、日本人と同じような顔をした人が大勢いますけど、日本人の純血種は、
どうなっているかということをお聞きしたい。たぶん、進化退化を繰り返して遺伝子が変わるんでしょうが、必ず、
形質が現れるまでの時間というものがあると思うんですね。その時間はどれくらいで、日本人のオリジンがどこにあるかをお聞きしたいと思います。
三井: 初めて、今日のテーマらしいご質問がでたという気がしますが。
斎藤: 少し、時間を下さい。
佐々木: では時間稼ぎということで。実は、仏教とは何かと聞かれたとき、その答は、「仏法僧」なんですね。
「仏」は「ほとけ」で、「法」が「ほとけの教え」、「僧」というのが大事で、これは人間なんです。修行者の集まりで、僧団のことを
「僧」といいます。聖徳太子が日本に仏教を持ち込んだときに、「三法を敬え」、「三法とは仏法僧なり」と言いましたが、実はあれは単なる期待だった。
あのとき、「仏法僧」なんて伝わっていなかった。「仏」は仏像だから、百済から仏像を持ってきたんです。「法」は教えですから、これはお経です。
法華経とか勝鬘経(しょうまんぎょう)を持って来て、聖徳太子は注釈を書いた。これで「仏」と「法」は伝わったんだけども、「僧」は人間だから、
人間を海の向こうから日本へ運んでくることはできなかったんです。しかも、「僧」というのは、定義が決まっていて、
4人以上のコミュニティでなければ僧団とは呼ばないんですね。1人や2人のお坊さんが来て下さっても、何の意味もないわけです。
それで、日本としては、「困った、困った、何とかして欲しい」と言って、何度も使節を送って、中国へ頼みに行って、
ようやく来てくれたのが鑑真和尚なんです。だから、あのとき、鑑真さんは一人ではないんです。何人も弟子を連れて来た。
そこで初めて、日本に僧団というものが伝わったんです。大和朝廷は、それを国賓として迎えたわけです。これが日本に、
「仏」、「法」、「僧」の全てが揃った段階なので、鑑真さんが来たときに、実際に日本に仏教が伝わったと言われています。だから、
DNAの問題とか何とか言いますけども、人間が伝わらなければ文化も伝わらないという代表的な例が仏教なんですね。教えや仏像だけ見ていて、
これが仏教だというのはとんでもない話で、そこで修行している人間がいなければ、仏教なんて成り立たない。
斎藤: 遺伝子は残していないんですよね。
佐々木: お坊さんは遺伝子を残せないんです。(笑)
三井: 親鸞さんの教えでは、残せますね。
佐々木: 私も、おかげさまで残せました。
三井: ここで、もう一度休憩をとることにします。さらに時間を稼げますね。
(休憩)
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