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講師: 斎藤成也(さいとう・なるや)、
ゲスト講師: 佐々木閑(ささき・しずか)
日時: 2006年4月22日 |
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あなたはどこからきたか −日本人のDNA− |
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三井: 「氏も育ちも」というのが、適宜な答かもしれません。
>> 以前に小説を読んでおりましたら、東北地方のある村に、青い目の日本人がいると書いてありました。
もちろん、外国から来たわけじゃないし、混血でもなく、元から住んでいるんだと。そういうことはあり得るんでしょうか。
斎藤: 私は三国志が好きなんですが、三国志に出てくる三つの国、魏、呉、蜀の中で、
一番パッとしない呉という国がありますけど、あの国の孫権というのが、碧眼だったと三国志には書いてあるんですね。
私は、「あぁそうか」と思って、ある本に、中国人にも青い目があると書いてしまったんですが、後で、中国文学の専門家、
京都大学の人文科学の金文京先生というんですが、その先生に聞いたら、「あれは嘘です」と言われてしまいました。
三国志もフィクションですからね。ただ、中国は大陸ですので、ヨーロッパとは言いませんが、西アジアから来た人達がいて、
新彊(シンジャン)ウイグルだったら、けっこうヨーロッパ的な顔立ちをしていますから、青い目は、
それほどおかしくはないと思うんですが、もし日本人の場合に青い目があったとしたら、それは家系図が間違っているとか。
大学院のときに、イスラエル人の友達が言っていたんですけど、キリストの目が青いのは、マリアがローマ人の兵士と寝たからだと。
まぁ、そんなこともあるかもしれない。キリスト教徒の人には申し訳ないですが。
>> 今の話ですが、長崎のほうで、ときどきそういうことが起こったようです。出島の女性に子供ができて、
優性だったら、黒い目のままで、少し目鼻立ちが違うということで終わってしまうんですが、そういう人どうしが結婚して、
劣性のホモになると、突然青い目の子供ができて、びっくりすることがあるらしいんですね。もう一つは、日本人でも、
ホルモンの異常で青い目になることがあるんですね。
斎藤: 蒙古斑というのがありますね。モンゴル人の友達に聞いたら、モンゴル人には皆あるそうです。
それから、韓国から来た留学生も、皆あるよと言っていました。ところが、日本の人がアメリカへ行って、子供が生まれて、お医者さんへ行くと、
家庭内暴力じゃないかとびっくりするんだそうです。アメリカの白人では、15%以下だそうです。昔、中国の南の方にある海南島へ行ったことがあります。
中国では皆そうだったんですが、小ちゃい子供はオムツなんかしないで、お尻にスリットが入っている下着を付けているんですね。
そこから、おしっこをするんです。そこで、僕は、20人くらいの子供を、一生懸命観察したんですが、お尻が青かった子は一人もいませんでした。
蒙古斑は、背中にできてくることもありますので、お尻にあるとは限りませんから、分かりませんけど、少なくとも、
中国の南の方にはいないのかなぁと思っていました。どなたかご存じないですか。私はあちこち知らないものですから。
(ハンガリーにはいます、と会場からの声)
斎藤: ハンガリーもアジア系ですからね。でも、ハンガリーは、割合が低いんじゃないですか。
日本では、95%以上の人に蒙古斑があると聞いていますが、どなたか、自分の子供には蒙古斑が無かったという方、いらっしゃいませんかね。
(誰もいませんでした!)
>> 35億年前のバクテリアが、光合成をするようになって、進化を繰り返して人間になったということを、
ちょっと目にしたんですが、それは本当なんでしょうか。
斎藤: 私の最初に書いた本が、「遺伝子は35億年の夢を見る」というタイトルなんですが、
いろいろな状況証拠から判断すると、何億年かはちょっと分かりませんが、間違いなくそうだと言えると思います。自然科学は数学と違いますので、
証明というのは難しいんですが、いろんなことを合わせるとそういうことです。
三井: 光合成をするようになったものは人間の方へ来ていませんよね。あれは植物の方へ行っちゃうんですが、
一番元まで行けば、繋がっているわけですよね。
>> 人間というのは、よく、いとこどうしで結婚していますよね。競馬馬でも、
いとこ同士で種を合わせているのがあって、それが、すごい名馬になったりするんですね。馬の世界は分かりませんけども、
いとこどうしの結婚が許されないわけではないとしても、あまり認められない要因というのは何なのか、ちょっと教えて頂きたいと思います。
三井: バーナード・ショウとイサドラ・ダンカンの有名な話を思い出しますね。イサドラ・ダンカンが、
ショウと結婚したら、頭が良くて美人の子供が生まれるんじゃないかと言ったら、ショウが、
貴方の頭脳と私の容貌をもった子供が生まれたらどうするんだと言ったという。ちょっと似たところがありますか。
斎藤: いとこ結婚は、日本では認められているんですが、かなりの国では認められていないそうです。
日本でも最近は減ってきたけれど、有名人では、元首相の佐藤栄作さんで、彼の奥さんは、いとこだと聞いています。まぁ、普通にあるわけですね。
遺伝学的に言いますと、いとこは兄弟姉妹の子供ですよね。兄弟姉妹は、遺伝子の半分が同じで、いとこは16分の1の共通部分があります。
先程の長崎の例のように、ひょっとすると、元々は劣性の青い目の遺伝子が、血族結婚で出てくることがある。
劣性の遺伝子が現れるには、二つ揃わないといけないんですが、例えば、病気になるような遺伝子を持っている人がいとこ結婚すると、
病気になる遺伝子が二つ揃って、その子供にでてくるということがあるんですね。そういう説明が一般的ですが、私には疑問ですね。
血族結婚をしていても、皆、ピンピン元気で暮らしていらっしゃる。それよりは、先程けなしました文化人類学に、
「ウエスターマークの仮説」というのがありますが、心理的なものですね。兄弟姉妹なら、異性として相手にしませんよね。
テレビドラマなんかで、兄弟姉妹だと知らないで育って云々というのはありますけど、ふつうの兄弟姉妹は、一緒に育つと、
心理的な刷り込みが起こって、この人間は、自分の恋愛の対象ではないと考えます。私の場合だと、母親や姉妹は、全く恋の対象からは外れる。
心理的な刷り込みというのがウエスターマークの仮説です。いとこでも、昔の社会では、同じ村で、兄弟姉妹のように育っていたので、
いとこでは「ちょっと」ということがある。それは日本だけじゃなくて、他の国でもそうです。イタリアだと、一緒に育ったのは駄目だけれど、
そうでなければ、別にどうでもよいそうですが、そういう意味で、私は、心理的な影響が大きいんじゃないかと思うんです。
これは、フロイトの仮説と対抗するもので、フロイトは、近親婚が起こるのは、むしろ一緒にいるからというような仮説を出していますが、とにかく、
私は、遺伝的な影響はあまりないと思います。
三井: ここで、佐々木さんにお願いできますか。心理的なお話になると、宗教的な問題と関係があるかなと思って。
佐々木: ダーウィンなんか読むと、近親婚によって劣性がでるかどうかということに関しては、
彼も揺れているようですね。自分自身がそれだから、近親婚が悪いかどうかというのに、微妙な揺れがあって、
悪い要素がホモになって出て来るということもあるけれど、逆に言うたら、改良される可能性もあるということを、はっきり言うていますので、
そういう意味では、今、斎藤君が言うたような心理的な面でマイナスな部分はかなりあるでしょうけども、現実に証明された科学的論拠で、
近親婚が必ず悪いものを生み出すことにはならんと思うんですね。全然、仏教的な答にならんかったね。
三井: 先ほどと今も、「ホモ」という言葉がでましたので、ここで説明して頂けますか。
斎藤: 今、日本で「ホモ」と言ったら同性愛ですが、同じ語源でして、「ホモ」というのは「同じ」ということです。
一人の人間の中で、お父さんとお母さんからもらった遺伝子が同じというのが、ホモの状態です。違うのが普通で、こちらは「ヘテロ」と言います。
異性愛はストレートと言って、ちょっと違いますが。
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