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講師: 斎藤成也(さいとう・なるや)、
ゲスト講師: 佐々木閑(ささき・しずか)
日時: 2006年4月21日 |
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日本人はどこから来て、どこへ行くのか |
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三井: 結論として、継体天皇は日本人ですか。
佐々木: 私自身も、たぶん騎馬民族だったと思っていて、学生に、先祖は格好良かったんだと自慢しています。
斎藤君は苗字についても調べていますから、僕の苗字について聞きたいんだけども、「佐々木」という名前は、どうなんですかね。
斎藤: 滋賀県でしょう。
佐々木: 確かに、滋賀県に佐々木源氏はありますが、滋賀県もまた渡来人の通り道で、
福井から京都へ奈良へという所にあったから、「佐々木」も大陸との関係があると思いますけど。
斎藤: 私も福井の出身なので、継体天皇については、いろいろと本は読んでいます。尊敬する白崎昭一郎先生も、
継体天皇の謎に関する本を書かれていますが、いろいろ読むと、残念ながら、どうも越前じゃなくて近江かなというふうに、私は思っています。
ただ、お母様が越前から来たらしいですね。だから、実家の三国に住んでいた時間は長いんじゃないですか。
話は変わりますが、クレオパトラは、エジプトのプトレマイオス朝最後の女王ですね。ところが、「クレオパトラ」というのはギリシャ系の名前なんです。
プトレマイオスは、アレクサンダー大王の臣下というか、友達の一人で、大王が死んだ後に、ディアドコイ(アレクサンダー大王の後継者のこと)になり、
大帝国が分裂して、エジプトにプトレマイオス朝ができた。そういう経過を考えると、最初の頃は、下々とかなり違っていてもおかしくないかなぁと思いますね。
クレオパトラの頃になると、近親婚をやっていても、エジプト人の血がかなり入ってきますから、遺伝的には周りと似てきたと思いますけども。
継体天皇は分からないですね。ただ、狭い意味での騎馬民族説は否定されているそうです。
三井: 苗字というのは、日本の場合は男の人のつながりを見るには、非常に有力な手段だと思うんですね。
結婚すると、女の人は男の人の姓になりますから。外国の本にも、自分と同じ姓の人のY染色体をずっと調べていったら、
同じ血筋だったというようなことが書かれていましたけれど。そこで、日本人はどこから来たかということですが、現存する日本人のDNAを調べて、
この人はどこから来たかということは分かるんですか。
斎藤: 仮定をすれば、何でも分かるんですね。仮定を信じるかどうかですが、信じる者は救われますから。
日本版のナショナル・ジオグラフィックという雑誌がありますね。そこに、頬の内側の粘膜細胞を送ると、DNAを調べてくれて、
先祖が分かるというの(ジオグラフィック・プロジェクト)が紹介されていました。先程お話があったミトコンドリアとかY染色体だけを調べているので、
私は、あんまり好きじゃないんですけどね。大部分のゲノムは、Y染色体でもミトコンドリアでもなくて、お父さんとお母さんの常染色体からきますからね。
単純な計算ですけど、おじいちゃんとおばあちゃんは4人、ひいおじいちゃんとひいおばあちゃんは8人で、どんどん増えていきますから、
その中で、系統と言っても、ほとんど意味がない。みんな繋がっているのだから、ある一人のミトコンドリアだけ調べてもねぇという感じですね。
ただ、チンパンジーと人間くらい離れると、ミトコンドリアだけでも、かなりのことが分かりますが、自分の千年前の祖先がどこに居たかというのは、
非常に難しい。
三井: 現存する人間のミトコンドリアを調べて、一番大元のイブはアフリカに居たというのは、信用してはいけないんですか。
斎藤: ミトコンドリアだけでは確実なことは言えません。
ただ、今では、Y染色体やマイクロサテライトなどでも同じ結果になっていますので、現在では、アフリカが起源だというのは、まず間違いないと、私は思います。
ただ、私は悲観論者で、懐疑主義者なので、最後まで、「分からない」を続けるつもりです。ネアンデルタール人の一部の遺伝子が、
まだ生き残っている可能性は否定できません。それと同じで、アフリカが全ての祖先かどうか分からない。
>> 男と女が結婚して子供が生まれたとき、ミトコンドリアDNAは、母親のものと同じものが伝わるということは、
結局、母親と同じになってしまうんですか。
(肯定、否定、驚きの声が・・・・・)
三井: ミトコンドリアというのは、すごく変異しやすいらしいですね。どんどん変わってしまう。
だから、同じ人はいないと思いますが。
>> 母親と子供はどれくらい同じなんですか。
斎藤: 99.999%は同じです。
三井: でも、かなり突然変異はあるんじゃないんですか。
斎藤: ありますけど、子供だったら、わずか20年だから、ほとんどないですよ。
>> 私は文系なんで、理系のことはよく分からないんですけども、優性劣性というのと、ミトコンドリアというのは、
何か関係があるんですか
斎藤: 優性劣性というのは、父方と母方、両方から遺伝子をもらったときにあります。ミトコンドリアは父親からもらえない。
つまり、最初から、優性劣性はないんですよ。
>> 私は、お父さんがアメリカ人で、お母さんが日本人という子供の担任をしたことがあります。
その子の喋っている言葉は日本語なんですが、外見はアメリカ人みたいなんですよね。彼は、アメリカに行くと日本人だと言われ、
日本ではアメリカ人だと言われて、僕の国籍は何だろうって言っていたことを、ちょっと思い出しました。
三井: その場合は、ミトコンドリアというよりも、他の染色体の影響ですね。実は、私達の財団では、
去年、6回にわたって、東京でサイエンスカフェをやりました。そのときに、言語の問題をとり上げたことがあるんです。
日本人とアメリカ人とは、言語を処理する脳の場所は同じなんだけれども、生まれたときから英語を喋ると、英語を喋るように脳がチューンアップされる。
日本語で育つと、日本語用に、そして両方聞いていると、バイリンガルになるんですね。そこには、臨界期というのがあって、
小さいときにそういうことが起きるという話がありました。言語とDNAの関係は密接です。
>> 昨年、札幌に旅行したとき、札幌には、アイヌと本土から来た人とがいて、
アイヌの方は違うんですよとタクシーの運転手さんが言うんです。今では混血がおこっているから、ほとんど同じだそうですけど、
やはり日本は多民族国家ですか。
斎藤: 模範生的解答では、多民族国家ですね。言語も、アイヌ語は別ですし、ヨーロッパなどの分類では、
沖縄語も日本語とは別ですね。沖縄語と日本語はすごく違いますよ。フランス語とイタリア語はかなり近いですからね。
それに、日本には方言がいっぱいありますから、アイヌの人だけ特別扱いしなくても、東北民族とか、関東民族とか言ってもいいんじゃないですか。
いい加減な概念ですからね。しかし、アイヌの人は、やっぱり違うんですね。いわゆる、純血に近い人は。
確か、宇梶剛士さんという俳優は、お母さんがアイヌの人だって言っていました。彼もハーフですけど、顔の感じは、なかなか彫りが深くて美男子。
一般に、美男美女が多いと私は思います。
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