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福井カフェ(初日)
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リーフレット

科学技術週間 カフェ・デ・サイエンス in 福井


講師: 斎藤成也(さいとう・なるや)、
ゲスト講師: 佐々木閑(ささき・しずか)
日時: 2006年4月21日



日本人はどこから来て、どこへ行くのか BACK NEXT

三井: 斎藤さんの本にもありますが、いろんな場所から人のDNAを採ってきて、それを分析して、 どういうふうな進化をしてきたかという、系統樹みたいなものを書きますね。現代の人のDNAしか分析しないのに、なぜ古いところまで分かるかというのが、 私は、どうも不思議でしょうがないんですけれど。

斎藤: いろんな論理が何層にもなっていますので、口でお話するのは難しいですね。 我々生物学の人間は、幻燈とかポンチ絵とか、要するに、漫画を書いて説明するんですが、単純に言えば、私達には必ず祖先がいますよね。 だから、それをたどっていけば、向こうが分かるんです。自分の方からたどっていく。そして、あちらの方からたどってく。 そうすれば、やがては繋がるということで探している。私と、そこら辺にいる猫のDNAをズーッと調べていくと、1億年くらいで、たどりつくんですね。 日本人の場合は、ちょっと微妙なんですが、数十万年くらいですかね。

三井: 日本人の場合では、実際に何年くらい前までのDNAが分析できますか。 つまり、弥生時代のお墓を掘って、そこに土葬かなんかにしてあって、骨があれば、DNA分析ができると。

斎藤: 一番古いもので、5千年くらい前の縄文時代の骨から分析できます。 ミトコンドリアというもののDNAだけですけど、それは既に論文があります。沖縄の湊川というところで発見された人骨は、 約1万8千年前のものだと推測されていますが、今、そこの骨からDNAを採ろうとして頑張っている研究室があります。

三井: 今、ミトコンドリアという言葉が出てきましたけど、お分かりですか。 文系の方の中には、ご存知ない方がいらっしゃるかもしれませんので、ちょっと説明しますと、細胞には、細胞質と核があって、 その細胞質の中にミトコンドリアという小さな粒がたくさんあります。それが、細胞のエネルギーを作っているんです。ミトコンドリアは、 母親からしか子供に伝わらないので、それをずっとたどって行くと、女性の系統が分かる。逆に、男性の経路をたどって行く場合には、Y染色体を調べます。 これは男性から男性にしか伝わらないので、男の人の系統をたどることができます。 そういうふうにDNAを分析して、結局、人類の一番大元は、アフリカから発生したということが分かるわけですね。

佐々木: 質問者の立場で、斎藤さんに質問をします。 人間とチンパンジーが似ているというときの似方と、人種が似ているというときの似方、つまり、種の違いと、同じ種の中での系統の違いには、 DNAのレベルで、何か線引きのようなことができますか。それとも、ただダラダラと連続的に違いが見えるんですか。

斎藤: 皆さん、どう思いますか。違いがあると思いますか。

>> 僕の結婚する相手が、中国人であっても、白人であっても、子供は生まれますよね。 でも、チンパンジーだとしたら、・・・・・。 つまり、子供が生まれるか、生まれないかといったところで、何か線引きができるのではないかと思いますけど。

斎藤: そういう見方はありますよね。ただ、我々がDNAを比較するときは、もっとドライです。 自然科学というのは、より連続的に考えますから、人間もチンパンジーもバクテリアも、ほとんど同じでしょうと。 チンパンジーと人間が違うということはあるんですが、DNAを見たら、皆DNAですからね。違いなんかないですよ。みんな連続しています。 「操作的定義」という言葉がありますが、つまり、DNAが1%以上違っていたら、種は違うということにしましょうということですね。 それより小さいと、いろいろ問題がでてきます。

佐々木: 交雑できるかどうかっていうのは、また別なんですね。

斎藤: 別ですね。実験したかどうか知らないんですが。 また、変なことを言いますが、私は、時々、動物園へ行って、チンパンジーを見ますけども、性皮が膨張してるメスのお尻は、 なかなかセクシーだなぁと思いますけどね。(苦笑)

三井: 今のお話に対して、どなたかご意見を仰りたい方ありますか。 では、「日本人はどこから来たか」に戻りますが、日本人のルーツというのは、どうやって調べられたんでしょうか。 あるいは、ご自分が、たぶん、こういうところから来ているんじゃないかと思っていらっしゃる方はおられますか。

>> 日本人は、モンゴルから来た人と、南から来た人と、北から来た人との混血だろうと聞いていますが、 DNAでも、そのようなことになっているんですか。私自身は、「伊佐」という名前が沖縄に多いと言われたので、南から来たのだろうと信じているんですが。

斎藤: これはまだ論争中なので、何とも言えませんが、日本人の起源を大雑把に考えるような人は、 「日本人なんて、ユーラシアのどこかから来たんでしょう」と。だから、「細かいところはどうでも良いじゃないか」と。 僕もそれに近いんですが、まぁ、どうでもいいことなんですね。もう、正解はあるんですよ。南か北かは分からないけど、 ユーラシアのどこかから来たわけで、アフリカから突然来るわけじゃない。スリランカやインドから突然来るわけでもない。 あるいは、アメリカ大陸から突然来ることもない。一部は、ポリネシアから来た可能性はありますけど、ほとんど影響はない。 そうすると、朝鮮半島かそこらから、ワァワァ来たんですよ。後は、量的な問題ですね。南が多いか北が多いか、これは難しい問題ですね。 私は、一度、モンゴルへ行ったことがあるんですが、ウランバートルから南へずっと下りたところにある小さな村で、 昔知っていた女の子と同じ顔の子を見つけましたし、中国の北の方へ行ったら、私の伯母にそっくりなオロチョン人もいました。似たような人はいっぱいいますね。

三井: おじいさんやおばあさんから、自分たちの祖先がどこから来たかなんて聞かされている方は、いらっしゃいませんか。

斎藤: 「大鵬」という有名な相撲取りがいましたが、彼の4分の1か、2分の1かはロシア人だと言われていて、 私は信じていたんですね。本人は否定しているんですが、本人が否定しているからと言って、分からないですよね。顔を見たら、一見ロシア人。どなたか、何かご存知ありませんかね。

三井: ご存知の方はいらっしゃいますか。「大鵬」とは別の話ですが、カフェの参加申し込みのときに、 「継体天皇は本当に日本人か」という質問がありましたけれど、福井に縁のある方ですね。

佐々木: そりゃ、もう、三国祭りには、三国の学校が皆お休みになるんですね。 継体天皇は、大和朝廷のそれまでの天皇家に攻め込んで、それを滅ぼし、新たな天皇の秩序を作ったと言われています。 正式な歴史ではないのでしょうが、継体天皇を生み出した三国の人間にとっては、それもなかなか良い話だなという気はします。 三国に、雄島という場所がありますが、以前は言語島でした。 つまり、そこの言葉だけが、福井県の他の言葉と全く違っていて、言語学者が非常に大切にしていたんですね。 大陸からの人達がそこに暮らしていたということです。今は違いますけどね。 そういう意味では、あの辺には、大陸の文化がしょっちゅう流れ着いていた。ナホトカ号の重油流出で、もうすっかり証明されましたからね。 流れたものは、あそこへ来ると分かったわけです。

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Last modified 2006.07.04 Copyright(c)2005 The Takeda Foundation. The Official Web Site of The Takeda Foundation.