The Takeda Award 理事長メッセージ 受賞者 選考理由書 授賞式 武田賞フォーラム
2002

選考理由書
情報・電子系応用分野

選考理由
業績とその創造性
1. 情報化社会における発光半導体デバイスの役割
2. 発光半導体デバイス
3.
4. 中村による窒化ガリウム青色発光半導体デバイス開発
5. 波及効果
6. 結論
参考文献
図1
図2

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業績とその創造性
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5.波及効果

 青色発光半導体デバイスである青色LEDと青色LDが揃って開発され、これまでの赤色と緑色発光半導体デバイスとあわせて、半導体による光の三原色が揃うこととなり、様々な用途での利用が可能となった。

 窒化ガリウム材料はインジウム添加量を変えることによって、紫外領域から、青、緑さらに黄までの発光デバイス用材料としても使われるようになった。特に窒化ガリウムを用いた緑色LEDはこれまでの黄緑色リン化ガリウムLEDよりも、色が純粋な緑で、かつ発光効率が高く、すでに実用化されている。

 青色LDの開発により、次世代大容量光ディスク規格の一つである「Blu-ray Disc」が日韓欧9社によって2002年2月に発表された。デジタル放送やブロードバンドの普及により、大量のデジタルコンテンツが家庭、オフィスで利用されるが、12cmのディスクに従来の5.7倍の記録密度である27ギガバイトの記録が可能となり、デジタルハイビジョン映像が2時間、通常テレビ映像では13時間の記録が可能となる。更に上記規格のほかに、ディスクの両面利用あるいはディスクサイズの変更を含む技術の組み合わせにより、1枚のディスクで50ギガバイトあるいは100ギガバイトの記録が可能となり、複数のディスクを搭載することで1テラバイト以上の情報を記録、保存することが可能となる。また3色のLDを組み合わせた投影型大型ディスプレイ装置などの可能性が生まれた。

 青色LEDの開発により、昼間でも鮮明な、大型フルカラーディスプレイが製品化され、市街地の屋外ディスプレイとして使われている。

 また、LEDの信号機への普及が始まっているが、これはいくつかの利点を有している。第一は視認性が良いこと、つまり、これまでの電球による信号表示では、西日が当たった場合、反射光で赤と青のどちらが点灯しているか分らなくなることがあったが、西日が当たっても見えやすくなった。第二には電球の寿命は半年から1年であったが、8年と長くなる。第三に消費電力が電球の4分の1になる。米国カリフォルニア州では23万基の歩行者用信号機がLEDに置き換わっている。日本国内では、車両用信号機が100万基、歩行者用信号機が77万基、あわせて177万基が稼動しており、現在約8千基がLEDに変更されている。全国の歩行者信号機をLEDに変更することにより、電力使用量が削減され、年間約11万トンの二酸化炭素の発生を抑制できることになる21)

 白色LEDは青色LEDと黄色蛍光体を一体化したものと、青、緑、赤の3種のLEDを一体化したものの2種類があるが、いずれも青色LEDの開発により実現したものである22)。この白色LEDは数年後には発光効率が50%となり、白熱電球の5倍、蛍光灯と同等の効率が実現される見通しである。白色LEDの寿命は白熱電球および蛍光灯の約1年に対し、8年以上が確認されており、住宅用のみならず、あらゆる生活空間における照明として利用され、消費電力が少ないことによる電力消費の削減と長寿命化による廃棄物の減少が期待されている。白色LED照明は、形状を平板、曲面、球等任意の形状とすることが可能であり、赤、緑、青3色のそれぞれの明るさを変えることができ、蛍光灯における昼白色から電球によるオレンジ色、さらには個人の好みに合わせて、色調が自由に変えられる理想の照明となり、豊かな生活環境の実現に寄与する。

 青色LEDおよび白色LEDをあわせて、2001年に900億円、2006年では2300億円の市場があるといわれている23)。白色LEDが白熱電球および蛍光灯に替わって生活空間照明に使われるようになれば、1兆円を越える市場が期待できる。また、青色LDは次世代大容量光ディスクの普及と共に市場が増大し、数百億円以上の市場となる24)
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