The Takeda Award 理事長メッセージ 受賞者 選考理由書 授賞式 武田賞フォーラム
2002

選考理由書
情報・電子系応用分野

選考理由
業績とその創造性
1. 情報化社会における発光半導体デバイスの役割
2. 発光半導体デバイス
3.
4. 中村による窒化ガリウム青色発光半導体デバイス開発
5. 波及効果
6. 結論
参考文献
図1
図2

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 この業績は光の三原色の中で唯一欠けていた青色の発光半導体デバイスを実現したもので、青色発光ダイオードおよび青色レーザダイオードの開発という優れた成果をもたらした。

 発光デバイスは、様々な形で人々の生活の中で利用されてきた。青色発光ダイオードの実用化により、半導体による光の三原色が揃い、屋外でも鮮明な大型フルカラーディスプレイが実現した。また視認性が良く、低消費電力で、長寿命の発光ダイオードを使った交通信号機が使われ始めている。青色発光ダイオードと蛍光体を一体化した、白色発光ダイオードが開発され、携帯電話機のバックライト用光源として普及している。この白色発光ダイオードは、低消費電力で、長寿命の一般照明用光源としても利用されることが期待されている。

 青色レーザダイオードの開発により、光ディスクの記録密度が従来に比べ6倍以上に向上する。次世代DVDなどが製品化され、高画質のビデオ映像の記録、編集、保存、持ち運びが容易なものとなる。また3色のレーザダイオードを組み合わせた投影型ディスプレイ装置などの可能性が生まれた。

 青色発光半導体デバイスの実現には、解決すべき多くの課題があった。と天野のグループ、および中村がそれぞれユニークな方法ですべてを解決した。

 は多くの研究者がセレン化亜鉛を選ぶなか、窒化ガリウムの可能性を確信し、研究を始めた。と天野は、サファイア基板上にバッファ層として窒化アルミニウムを低温で成長させ、その上に均一で膜質の良い窒化ガリウム薄膜を得た。次いでp型不純物を添加した窒化ガリウム薄膜に電子線照射を行い、導電性の良いp型層を得た。この技術を用い、1989年にpn接合型青色発光ダイオードの試作に成功した。青色レーザダイオードについては、単色性の鋭い、強い発光を確認し、1995年11月に発表した。

 一方、中村も当時少数派であった窒化ガリウムを選択し、ツーフロー方式という新しい方法による成膜装置を独自に開発し、膜質の良い窒化ガリウム薄膜を得た。そして窒化ガリウム薄膜を、水素を含まない雰囲気で加熱処理することにより、導電性に優れたp型層を得ることができた。1993年に、インジウムを加えた窒化ガリウム層を使用したダブルへテロ構造の高輝度青色発光ダイオードを開発した。青色レーザダイオードについては、数十層から成る窒化インジウムガリウム多重量子井戸構造およびブロッキング層等を採用してレーザ発振に成功し、1996年1月に発表した。以上の成果を基に、青色発光ダイオードは1993年、青色レーザダイオードは1999年にそれぞれ世界で初めて製品化された。

 と天野、および中村は、困難な課題に挑戦し、独創的なアプローチにより青色発光半導体デバイスの製品化に成功し、人々に富と豊かさ・幸福をもたらしている。工学知とテクノアントレプレナーシップに富んだこの業績に武田賞を贈る。
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