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第33回レポート
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第33回リーフレット

第33回 カフェ・デ・サイエンス


講師:  池内了(いけうち・さとる)
日時:  2011年2月21日



世界はパラドックス「レトリックのパラドックス」 BACK NEXT

池内: 僕がパラドックスだと捉えたのは、人間は最高のものであると思っているのが、最低のものだと思っている蛆虫の餌になっているというのがパラドックス風だと思ったのです.最高と最低が入れ替わるということです.

三井: グルッと輪になっているわけですね.

C: 最近、日本で一番偉い政をしている人が、「第三の開国」と言っています.「第三の開国」というのはレトリックの一種ではないでしょうか.その人が考えているような結果になるかどうかは分からないと思いますが、結果はパラドックスになっているかもしれません.今、エジプトでも民主化のために闘っていますが、民主主義なんてものは壊れやすいので、最初に混乱が起きて、その後は全体主義のようになっていくのが歴史の常ですから、あれもパラドックスになるのかもしれません.

池内: 物事の結果を見たときに、パラドックスかどうかが分かるのだと思います.民主化のために頑張って、結局、暗黒政治を招いてしまうというのはパラドックスですね.それは結果を見なければ分からないことですが、僕は、民主化のために頑張っていることを支持します.

J: 先日、粘菌の研究でイグ・ノーベル賞をもらったという先生の話を聞いてきたのですが、イグ・ノーベル賞というのは、レトリックのパラドックスですか.

池内: レトリックですね.

J: 粘菌なんて非常にバカだと思われていたのに、非常に賢いことをやるというところでパラドックスになるのではありませんか.

池内: 中身そのものがパラドックスのこともあるし、そんなことをやっても仕様がないと思われることから面白い結果を導いても賞の対象になります.

J: イグ・ノーベル賞をもらった後で、本当のノーベル賞をもらった研究者がいましたね.

三井: グラフェンで2010年の物理学賞を受賞された方ですね.

J: 粘菌の研究は、いい加減な研究発表ではなかったと思います.

池内: 最近のイグ・ノーベル賞は、いい加減さがどんどん減っているのですよ.

J: 非常に立派な研究だと思っていたら、イグ・ノーベル賞だと言われてガッカリしたそうです(笑).

池内: レトリックに近いから、思いがけない結果を生むのでしょう.粘菌が、何も教えないのに、最短経路を知っているというのは、確かに思いがけない結果ですよね.それから何か普遍的な法則が導かれるなんてことは考えられないということで、イグ・ノーベル賞だったのではないでしょうか.

J: 普遍的な法則を導こうと努力されていましたから、そこからノーベル賞に飛躍したいのではないかと思います.

三井: 粘菌は、餌の濃度の濃いほうへ集まって行ったというだけではないかと思っていましたが.

J: 必ずしも、それだけでは解けないような数学を使っていらっしゃいます.

池内: 我々が思い付くようなことは一応全部チェックしているはずですよ.

J: ノーベル賞がもらえるかどうかは分かりませんが、一つの理論を打ち立てようとしておられます.

三井: イグ・ノーベル賞というのは、お遊びだと思っていました.

池内: 非常に思いがけない結果とか、誰もがしないようなことにチャレンジするとか、そういうものに対して与えられる賞ですが、最近のイグ・ノーベル賞は、どんどん真面目になっていると思います.僕は、イグ・ノーベル賞の本を2冊買って読みましたが、10年くらい前は、かなりいい加減なものもありました.僕が覚えているのは、男女がセックスをしている姿をMRIで撮ったというものですが、最近は、割ときちんとしたデータを基にしています.一種のパロディですね.

I: 実は、同じ粘菌の話を聞きに行ったのですが、後で先生から聞いたところによると、この実験を、小学生が夏休みの宿題でやったそうです.子供達の理科離れと言われますが、不思議で面白い科学の実験を子供達でもできれば、それだけサイエンスの底辺を広げることができます.これが何よりもスゴイことだという話をしてきました.

三井: 池内さんも、子供に科学の実験などを自由にやらせたほうがよいと、どこかに書いていらっしゃいましたが、そこに繋がるお話かなと思いました.

E: 知り合いのイグ・ノーベル賞をもらった方は、5歳の時に、お母さんが必要とするものを発明して特許をとられたそうです.身近なところで発明をして、自分の年の数の何百倍という特許をとっていらっしゃるそうです.

三井: 具体的にはどういう発明ですか.

E: フロッピーディスクとか、ポンプのようなものですが、イグ・ノーベル賞をもらっている方でも実用的な発明をしているということを申し上げたかったのです.

三井: そういう方もいらっしゃるということですね.フロッピーディスクの発明者というと、中松さんですか.

K: 僕の知っている限りでは、ドクター中松が発明したのは、切れ目が入ったジャケットに、ソノシートを入れると、ジャケットから出さなくても、そのまま針を乗せて音楽がかけられるというもので、そのジャケットに入れる仕組みがフロッピーディスクに似ていたというわけです.IBMが、フロッピーディスクの商品化に際して、その特許の一部を認めて取引をしたという話はあったそうです.


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Last modified 2011.03.22 Copyright©2005 The Takeda Foundation. The Official Web Site of The Takeda Foundation.