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講師: 織田孝幸(おだ・たかゆき)
日時: 2006年7月27日 |
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数学カフェ 「素数」 |
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三井: ありがとうございます。最初にお約束した休憩の時間になってしまいましたけれど、
まだ、素数そのものについて、お聞きになりたいことがおありですか。
>>> 素数について、世の中で、なぜそんなに関心がもたれるのか不思議です。
何か理由があるのでしょうか。"prime number"というと、面白そうだなと思いますけど、素数と聞いても、
あまりピンとこないんですけど。
三井: "prime"というのを辞書でひくと、「最高の」とか、「良い」とか出て来ますけど、
ベーシックという意味もありますね。
>>> 私も同じようなことを思っているんです。Hilbertが数学者になったのは、
お母さんが素数が好きでというお話がありましたけど、素数というのは、随分古くから関心をもたれているわけですよね。
どの数でも割り切れない数だからという理由だけじゃないかという気がしなくもない。
現在は、暗号に使われるという効用がありますけど、効用というものが無かった時代に、
素数というものにかくも関心を持たれた理由は何でしょうか。
織田: 数学というより、数秘術に属するんじゃないかと思いますね。
ラッキーセブンと言って、7という数は何となく良い数だと思われていますけど、これは、素数だからじゃないかと思うんですね。
素数は、元素の「素」です。primeというのは、primitiveというか、原始的というか。
これ以上、もうどうしようもないという意味です。
>>> 素数という概念は、東洋にもあったんですか。また、特別の意味合いはあったんでしょうか。
三井: 昔のシュメール人は素数という言葉は使っていなかったけど、
素数的な概念はもう持っていたらしいですね。素数という言葉ができたのはギリシャ時代ですね。
織田: 私が知っている限りでは、特別な関心はなかったと思います。
関孝和さんという人は、Bernoulli数というのは研究していますが、素数に特別な関心があった気配は無いですね。
素数に関心を持つ大きなきっかけは「Fermatの小定理」なんですけど、それは和算の中に出ていないと思います。
埋もれた文献があって、そこに書いてある可能性がないことはないけど、確率は非常に低い。
>>> ピタゴラス学派というのが、
割り切れない数について特別の感覚を持っていたという話を聞いたことがあるんですが、素数についても、
そのような話はあるんでしょうか。
織田: その割り切れない数というのは、非通約量といいますが、要するに、
整数の比で書けない数のことです。具体的に言うと、辺が1の正方形を考えたときに、その対角線の長さは、
Pythagorasの三平方の定理で、√2になります。ところが、この√2というのは無理数で、整数の比では書けない。
√2が無理数だという証明に、2が素数だという事実を使います。証明は、背理法です。
√2が、二つの整数の比、m/n の既約分数で書けたとします。つまり、√2 = m/n ですね。
そして、両辺を2乗します。 2 = m2/n2 です。
ここで、両辺にn2を掛けてやります。
そうすると、2n2 = m2 になります。
左辺が偶数だから、右辺のm2も偶数。
2乗して偶数になるのは偶数だけだから、mは偶数になる。従って、mを2m'と書き換える。
2n2 = 4 m'2 になりますから、
この両辺を2で割ると、n2 = 2m'2
になって、nも2で割れることになる。そうすると、m/n と既約分数で書いたけど、
分子も分母も2で割れることになって矛盾するんです。これは有名なギリシャでの証明です。これは、去年、
3年生のゼミでもやりましたけど、同じようにして、 √3や √5も無理数だということが証明できます。
三井: やっぱり、書かないと無理ですよね。では、しばらく休憩にしたいと思います。
<休憩>
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