岡本謙一 |
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[図 15]
[図 16]
[図 17]
[図 18]
[図 19]
[図 20]
[図 21]
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[図15]
最初のパッシブアレイがいいのかアクテイブアレイがいいのかということですが、これにつきましては、パッシブアレイはTWTAという非常に大電力の送信管を1台使いまして、この電力を分配して、アンテナの方に分けていくわけです。逆に、アンテナで受信した電力を合成して、1台のLNAで増幅していきます。非常に構造もシンプルですし、重量も軽くてすみます。そういう意味ではいいのですが、もしTWTAがこわれたら、あるいは、LNAがこわれたら、システム全体が死んでしまうという問題があります。アクテイブアレイは逆で、アンテナ素子が、TRMMの場合には128個あるのですが、その後に、小さな出力の固体増幅器の送信機と、固体の低雑音増幅器がついています。簡単に言いますと、一つ一つが小さなレーダであり、1個1個の出力は小さいのですが、それをたくさん合成することによって、大電力が得られます。小さなレーダがたくさんあるのですから、1個くらいこわれても、全体としての影響は軽微です。それからSSPAの出力が小さく、電源の問題を深刻に考えなくてもいいのです。パルスの大電力のTWTA用の電源を作るのは、非常に難しいのですが、固体の場合は比較的それは簡単です。次に、固体素子は日本の得意な技術でありまして、こういうレーダを純国産でできるというメリットもありました。ということで、結局アクテイブアレイを採用することにして、重量が重いとか、複雑な構成ではありますが、安全性の点からこれを選んだわけです。幸いなことにTRMMでは、128台の素子とも、打ち上げて5年たちますが、ミッションライフの3年を過ぎた5年たっても1台もこわれていません。多分、地上でいっぱいこわして、その後で、衛星でうまくいっていると思うのです。逆でなくてよかったわけですけれども。
[図16,17]
時間がないので、パルス圧縮は省略します。アンテナにつきましても、プラナーアレイのアンテナがいいのか、オフセットシリンドリカルパラボラがいいのか考えました。やはり、スピルオーバーと言いまして、電力がアンテナの外に逃げてしまう影響がありますので、オフセットシリンドリカルパラボラアンテナは、寸法が大きくなます。良好なサイドローブ特性がプラナーアレイでも、十分実現できるのならば、衛星搭載の寸法の点で有利ですので、結果的には導波管スロットアレイのプラナーアレイアンテナの方を選んだわけです。
[図18]
このように、Bread Board Modelを作りまして、東芝、NECさんの力を借りて、組み上げました。実際に全体を組み上げて、地上で、雨を測る実験を行いました。ビームも電子的に振りました。できる、という確信を持ちましたので、搭載用の製作は宇宙開発事業団の方にお願いしました。
[図19]
TRMMは、打ち上げが1997年11月という、これまでのNASDAのロケットにはないローンチウィンドウに打ち上げたわけです。このおかげで、エルニーニョの後半が観測できました。もし、打ち上げが、あと半年遅れていたら、エルニーニョの消滅のプロセスは、解明できなかっただろうと思います。これは、当時のNASDAの吉村理事と科学技術庁の森口課長の英断であったと思われますが、11月に打ち上げることができました。
今年は、エルニーニョが起こりそうです。TRMMの寿命を延ばすために、昨年8月に軌道の高度を402.5 kmに上げましたが、今回は初めから終わりまで、エルニーニョがうまく捕えられるのではないかと期待しています。
[図20]
これは降雨レーダのブロック図ですが、我々のスタディ通りの、固体電力増幅器を使ったアクテイブアレイ方式の降雨レーダが、NASDAの方で引き継いで、実際に作られて、宇宙で運用されています。
[図21]
降雨レーダアルゴリズムの全体像を示します。言いたいことは、ハードウェアができたらそれでおしまいというわけではないということです。レーダというのは、最初の方でデータ解析のためのアルゴリズムが大切だということ言いましたが、取ったデータからどうやって降雨強度を算出するかというアルゴリズム開発が、とても重要になります。このことに一番気づいていたのは、実はNASAです。1991年、日本側でプロジェクトが認められるかどうか四苦八苦しているときに、NASAは既にサイエンスチームを作る公募を行いました。降雨レーダのアルゴリズムを開発するチームも含まれています。もし、このまま放っておきますと、せっかく日本で開発したレーダですが、アメリカで、そのアルゴリズムが好きなように作られますと、何のために苦労してハードウェアを開発したのかわからなくなります。首根っこを捕まえられたらたまらんというわけであります。NASAの公募の中には、降雨レーダアルゴリズムのチームリーダの研究公募もありました。全世界にすばらしい研究者がいっぱいいるわけですが、その中で、TRMMの降雨レーダのアルゴリズム開発チームのリーダとなる人材を探すという公募です。やはりこれは無理でも、背伸びしてでも手をあげないといけないと思いまして、一所懸命プロポ−ザルを書きました。まあ、その頃は若かったから徹夜もできたのですが、二晩くらい徹夜をして、プロポーザルを書き上げまして、ふらふらになって、最後に、当時、企画部長だった畚野さんのところから、エンドースメント(endorsement)のサインをもらったことを覚えています。アメリカ側はセレクションに関しては、非常にフェアでした。立派な研究者がいるのに、私のような、若造をリーダに選んでくれました。ということで、うまいこと、日本側の主導権で、降雨レーダのハードのみならず、アルゴリズムも日本中心で開発することができたわけです。詳しいことは述べませんが、日米共同でうまくサイエンティストの協力を得て、TRMMのアルゴリズムがうまく開発できて、打ち上げに間に合うことができました。
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