チャールズ・エラチ |
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Q&A
安岡(司会):
エラチ先生、マイクロ波センシングに関する素晴らしいプレゼンテーションをありがとうございました。それでは、ディスカッションの時間に入ります。
質問1:
先ほど見せていただいた画像ですが、こういう画像が取れるということを、コンセプトとしてお持ちになったのは、いつでしょうか。そのコンセプトがどういう経緯で揺るぎないものになって、今日の、イメージングにつながったのか、その時の経緯をお話いただければと思います。
エラチ:
あらゆる主要な発見と同じように、通常、アイデアを持ってやってくる人は一人ではありません。一人がアイデアを出して、また、他の研究者がそれに新たなアイデアを構築していくのです。画像レーダに関しては、基本概念はもともと50年代に登場したものです。実際には、それより前の時代にも少しありましたが。ジェット推進研究所で1970年代に仕事を始めた当時、私はまだ学生でした。そのとき、人工衛星技術を使えないか検討したわけです。というのも、もともと軍事目的で航空機に使われていたからです。私達は段階的にこれを金星に使えないかどうかを考えるようになりました。金星の雲の下に隠れたものを見たかったのです。私の最初の研究は、いかにレーダ波を金星に送るかでした。その後、地球に使えないかどうかを考え始めました。最初は、それが人工衛星で使えることを誰も信じませんでした。したがって5年ほど費やしてNASAを説得しようと努力しました。こうした技術が人工衛星からも使えるのだということを、納得させたわけです。そうして、1978年に私たちはそれをSEASATいう人工衛星に搭載して実施することができました。初めて映像レーダを人工衛星に搭載して飛ばすことができたのです。その後、私はゆっくりと一つ一つ改善をしていきました。まず、偏光法の技術を加え、干渉分光法の技術を加えていきました。
これはなんといってもチームの努力です。私はそのチームのヘッドをしていました。いろいろな人がいろいろなアイデアを持ってやってきました。私たちは座って議論をしました。お互いのアイデアについて熟考しました。全くうまくいかないアイデアもあります。アイデアが10あったら、実際はその一つでもうまくいったら、非常に良いのです。ですから、私たちはいつもアイデアを出すことを奨励していました。はじめはそのアイデアが不合理に思えたり、非常に荒削りに思えてもいいのです。ほとんどのアイデアがうまくいかないものであっても、新しいアイデアをいつも考えていることを奨励するのです。そうしたことが、こうしたプロジェクトにつながるのです。
質問2:
いまお話をお伺いした中で、素晴らしい画像がこのように撮れるということは素晴らしいことだと思います。私の質問は、この画像のビジネス的な使用に関してです。今日本でも、宇宙開発が民営化とか、コマーシァライゼーションだとか、盛んに言われておりますが、この画像をNASAでは、コマーシャルユースというか、一般の方にどのようにお分けして、あるいは売っておられるのか、そのようなことについて、もしお差し支えなければ、教えていただきたいと思います。
エラチ:
ご質問ありがとうございます。基本的にこの地球画像については、パブリックドメインで公開しております。ですから、みなさんはこれらの画像の複製をジオロジカルサーベイ経由で手に入れることができます。EROSデータセンターというところが、サウスダコタ州にあります。コストは非常に低いです。複製のコストだけです。それから、日本の人工衛星からの画像も得られるはずです。それをどうやって得るのか、詳細は知りませんが、NASDAを通じて手に入れられるはずです。
民営化の問題について話しましょう。多くの人工衛星は非常にお金がかかります。開発にも飛行にもたくさんのお金がかかります。ですから、まずは政府がこの開発をすることが重要です。民間企業にとって、政府の資金援助なしに実際に人工衛星を開発し、飛ばすことは、困難です。民間が関わるのは、人工衛星が取得したデータを使うところです。アイデアを発展させて、そのデータを実際に応用する技術のところが出番です。
例えば、私たちがジェット推進研究所で行っているのは、三次元でみなさんにお見せしたようなデータの構築、配布です。民間企業はそれを使って、例えば、携帯電話の交換機の位置決めを行います。あるいは、自分たちの町の三次元画像を作り、建設事業に利用します。このように、政府が基本データの開発に投資を行い、ユーザはそれぞれの用途にそれを応用するのです。
私は、今でも、近い将来のために人工衛星のようなものに基本投資を行うには、政府が必要とされていると考えています。
質問3:
人間の潜在能力について研究しています。私の質問は、ジェット推進研究所における、博士の「アイデアを行動に移す」プログラムについてです。これは正式な、あるいは非公式なプログラムでしょうか?どういった取り組みをしていらっしゃいますか?おっしゃったような"荒削りな"アイデアは、いつも捨てられてしまうのですか?それとも、記録されていたりするのでしょうか?
エラチ:
私たちは記録をとっているわけではありません。新しいアイデアは、通常、座って議論している時に生まれます。コーヒーを飲んで、何かについて議論している時です。そこでたまに起こることは、目標の発見です。例えば、誰かが「地形図を人工衛星から取得する方法を見つける必要がある」と言えば、私たちは一連の会議を行い、皆でいろいろなアイデアについて議論をします。あるいは、いろいろなアイデアについての発表がある学会に出席します。そして私たちは一緒になって、これらの様々なアイデアを見て、その実施可能性を検討するのです。特に人工衛星はとてもお金がかかります。ですから、もしあるアイデアが合理的であるようなら、まず航空機でそれを試験します。方程式を書いて、それがうまくいくと決断したら、航空機で試験するのです。もしそれが航空機でうまくいったら、それを人工衛星に搭載することを考え始めます。アイデアの状態からそれを航空機でテストして、うまくいくと信じられるようになるまで通常5〜6年かかります。それから、人工衛星に搭載することを試みるのです。ですから、大切なことはアイデアを記録することではありません。アイデアをオープンな場所で共有して、それについて議論できるようにしておくことです。アイデアは持ちつ持たれつ構築するものだからです。誰かが小さなアイデアを持ってやってきたら、他の誰かがそのアイデアを使ってその上に少しアイデアを追加します。また他の人がやってきて、それに少しアイデアを追加します。このように、この主要プロジェクトを思いつく過程には、アメリカやここ日本における私たちの社会の公開性、人々が自分のアイデアを発表するシンポジウムや学会が決定的に重要です。こうしたプロジェクトは、事務所に座って、思索を巡らせているだけの人によって起こされるのではないのです。
質問4:
非常に感動的な映像を見せていただきまして、ありがとうございました。この三次元的な映像、高さ、横、奥行き、その正確さはどれくらいあるものか、また、その正確さはどのようにして保証されているのか、ということを知りたいのですが。
エラチ:
それはとても良い質問です。二つに分けて答えさせてください。
三次元画像の精度ですが、私たちが「posting」と呼んでいるものがあります。これは、私たちが計測する地上の25m間隔のことです。そしてそれぞれのポイントでの高さの精度が5mなのです。精度の見積もりは地形図との比較で行います。地形図は、国防地図局で開発されたものです。
そのミッションが2000年に実施されたことに注意してください。私たちはデータの生成を開始するだけで良いのです。なぜなら、過去二年間、まず私たちは非常に小さい領域で衛星のデータから地形図の作成を行い、そして地上で現地に赴き、作成された地形図と比較したからです。そしてそれを広い領域に対して行い、それを比較しました。それから、私たちは膨大なデータの生成を開始しました。小さな領域内の全地点の検証に一年半ほどかかりました。私たちはそれを「参照領域」と呼んでおります。
三番目になりましたが、マイクロ波の透過についておっしゃいましたね。三次元の画像は全て表面の地形図です。それらは、全て、ある短い波長で入手され、この場合は5cmルでした。地表の下まで透過するものに関しては、私たちは全地球のデータを持っていません。限られた領域のものだけです。講演の中でお示ししたものは、サハラ砂漠の2?3m下を透視する別のミッションだったのです。地表の下を透視するデータの量は限られております。しかし、地形図に関しては、地球全体をカバーするデータを私たちは持っています。答えになっていますでしょうか?
安岡(司会):
そろそろ時間なのですが、私からもどうしても一問だけ、最後に質問させていただきます。このレーダのポテンシャルが非常に高いということはみなさんご理解いただけたかと思います。これから環境分野への応用というのも非常に広いと考えますが、その応用分野の特に一つに、温暖化に関してこの合成開口レーダ、マイクロ波レーダのアプリケーションとしてどのようなポテンシャルがあるか、もしジェット推進研究所でそのようなプロジェクトを考えられているようでしたら、ご紹介いただければと思います。
エラチ:
地球温暖化に関してレーダが手助けできることについては、一つの例として、氷山のモニタがあります。高い山や、グリーンランド、そして南極にある氷山です。定期的な氷山の伸張、あるいは縮小や拡大のモニタが可能です。この情報は、地球温暖化のモデリングを行っている人々に使われます。レーダは継続的に、これらの氷山の位置を知ることができる利点があります。雲に覆われていたり、南極や極域のように一年の半分が暗かったり、といった条件に関わらずです。
安岡(司会):
ありがとうございました。またご質問はたくさんあるかと思いますが、次の講演者の方に移らなければなりません。エラチ博士、どうもありがとうございます。
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