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5.波及効果
ヒトゲノム塩基配列概要の解読により、ヒトゲノムには約3万の遺伝子があるらしいことが分かったが、ほとんどの遺伝子の機能はまだ不明である23)。DNAマイクロアレイを用いることにより、様々な状態での遺伝子の発現を同時に比較することができるようになった。たとえば、がんのような病気のメカニズムについて研究することが可能である。1999年、Landerのグループは、DNAマイクロアレイを用いて、がんの分類をこれまでの組織学によるよりもはるかに正確に行った24)。S. H. Friendらは、2002年、DNAマイクロアレイを用い、117名の乳がん患者の術後の経過と遺伝子発現パターンの関係を研究した。その結果、術後、がんの転移があった患者と、なかった患者では遺伝子発現パターンが異なること、それらの遺伝子をマーカーにすれば、予後が推定可能なことが分かった25)。また、 DNAマイクロアレイは、個人差を示す、遺伝子の小さな変異の研究にも応用されている26, 27)。ヒトの遺伝子には、数百に一つから1000個に一つの割合で一つの塩基だけが異なる一塩基多型(SNP)があり、これにより個人差が現れると考えられている。SNPを研究することにより、個人差と遺伝子の関係が明白になり、個人個人にあった医療や診断ができることが期待されている。植物ゲノムおよび cDNAに関する情報が蓄積するにつれて、DNAマイクロアレイは、農業の分野でも、効率のよい品種改良や環境耐性の増強のためにも使われるようになった。DNAマイクロアレイは、遺伝子発現データを定量的かつ系統的、包括的に世界中から集められることにより、計算機生物学にまったく新しい分野を拓いた。
GeneChip®の製品化と、マイクロアレイ作製法のインターネット上での公開は、相乗的に作用して、DNAマイクロアレイの普及を促した。市場調査によれば、2000年のDNAマイクロアレイ市場規模は4億から5.5億ドルであった28, 29)。2000年では、市販DNAマイクロアレイの市場占有率は41%、自作型は39%で、両者の併用は20%であった28)。市販DNAマイクロアレイ市場ではアフィメトリクス社が主力企業である。公共の研究機関や製薬企業が更にDNAマイクロアレイを使い、価格が更に下がると予想されることから、DNAマイクロアレイ市場は更に拡大し、市場規模は2005年には10億から22億ドルに達することが予測されている28, 29)。
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