The Takeda Award 理事長メッセージ 受賞者 選考理由書 授賞式 武田賞フォーラム
2002

選考理由書
生命系応用分野

選考理由
業績とその創造性
1. DNAマイクロアレイとは
2. 光リソグラフィー法による高密度DNAマイクロアレイGeneChip®の作製
3. スポット法によるDNAマイクロアレイ(スタンフォード型マイクロアレイ)の作製
4. 2種類のDNAマイクロアレイの比較
5. 波及効果
参考文献
図1
図2
図3

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業績とその創造性
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2.光リソグラフィー法による高密度DNAマイクロアレイ、GeneChip®の作製

 1980年代後半には、効率的な創薬研究のために、化合物の同時合成法と高速スクリーニング法を用いたコンビナトリアルケミストリーが発展した。コンビナトリアルケミストリーは、ペプチドのような直鎖状化合物を固相合成法により多種類合成し、抗原抗体反応のような高感度の生物学的方法を用いた高速スクリーニングを行う。Fodorは、1988年、コンビナトリアルケミストリーのベンチャーの草分けであったアフィマックス社に入社、生体分子の高密度アレイの製作に取り組んだ。大学で生化学を専攻していたFodorは、電子工学や、生物学、コンビナトリアルケミストリーの手法を創造的に組み合わせることにより、その課題を解決できると考えた。彼のグループは、半導体の製造に用いられる光リソグラフフィーと、コンビナトリアルケミストリーを組み合わせることにより、高密度DNAマイクロアレイ製造の可能性を見出した11-13)。製造法確立までには、いくつかの解決すべき課題があったが、光リソグラフィー法による高密度DNAマイクロアレイの製造は可能性が高く、また商業的成功も確実と思われた。Fodorらは、1993年、高密度DNAマイクロアレイ製造および販売のためのベンチャー、アフィメトリクス社をアフィマックス社から独立させて(スピン・オフ)設立した14)。1994年、アフィメトリクス社は、数十万種のオリゴヌクレオチドを搭載した高密度DNAマイクロアレイ、GeneChip®の製造および販売を始めた。彼らの技術は、情報・電子工学と生命科学分野の技術の融合が成功した数少ない例の一つである15)

  図1に光リソグラフィー法による高密度オリゴヌクレオチドマイクロアレイの作製法を示した。この方法では、基板上に結合した塩基を光によって脱離する官能基で保護してある。マスクを用いることにより特定部位の塩基だけに光を当て、官能基を脱離させる。その後、塩基を反応液に加えて、基板上の塩基とカップリングさせる。この方法を繰り返すことにより、数十万種類のオリゴヌクレオチドをガラス基板上に合成することができる16)。基板上でのカップリング反応の収率が100%より低いため、合成するオリゴヌクレオチドの長さは、限定される。

  GeneChip®は最初の市販高密度DNAマイクロアレイであり、注文生産には対応しにくいという問題があったが、既製品であるため容易に入手可能であることから急速に普及した。
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