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第22回レポート
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第22回リーフレット

第22回 カフェ・デ・サイエンス


講師:  大島泰郎(おおしま・たいろう)
ゲスト講師:  川戸佳(かわと・すぐる)
日時:  2008年12月22日



異端児のみる生命 「生物時計」 BACK NEXT

三井:睡眠時間の長さは、睡眠の質とも関係がありますね.

D:私も、外国であろうと日本であろうと、起きていたかったら起きていて、寝たかったら寝るというようにしていますから、時間はあまり関係ありません.だから、時差ぼけかどうかも分かりません(笑).

川戸:すごい個人差があるものですね(笑).研究室の中では、それほどの個人差はありませんでした.私は長い時間寝ないと頭が回らないほうですが.

E:心を病む子供の中には昼夜逆転の見られる子供がいますけれど、健康に暮らすために、体内時計に合わせた睡眠時間帯とか、光の取り入れ方のようなものはあるのでしょうか.

川戸:人によって起床時間は違いますが、起きる時間の30分くらい前に、コルチゾールというストレスホルモンの濃度が4-5倍跳ね上がります.私は長年ストレスの研究をやっていますが、ストレスがかかると、やはりコルチゾールの濃度が4?10倍くらい上がります.うつ病では、コルチゾールの濃度が常に高い状態にあって、朝を告げる濃度の変化がありませんので、朝は起きられないし夜も寝られないということになります.うつ病の研究をしておられる方は非常に多くて、コルチゾールの濃度が上がることや、上がるとどうなるかという研究はたくさんあるのですが、正常な状態にあるとき、コルチゾールが何をしているのかについてはわかっていませんでした.それが体内時計に関係して、朝を告げる信号になるというのがわかったのはごく最近のことです.コルチゾールの濃度が上がると、肝臓に蓄えられている糖が血中に出ますから、臓器が活発になって活動度が上がり、それで起き上がってくるということになるわけです.夜にはメラトニンが出て活動を下げるということになっていますが、メラトニンはそれ程強力に制御していないとも言われています.

簡単に言うと、「健康な生活のためには、ストレスを貯めてはいけません」ということになりますね(笑).仕事を夕方で止めて、嫌なことはとにかく忘れてしまう.そうすればコルチゾールの濃度は下がりますので、夜はぐっすり眠ることができますし、朝になればコルチゾールが出てきて起きることができます.

大島:朝起きたときに糖分を摂取すれば、血糖の濃度が上がって、目覚めが良くなるということですね.

川戸:朝食を食べると良いというのは、そういうことがあるからですね.

三井:昼食を食べた後で眠くなるのが一般的だと思いますが、それはどうなのでしょう.

川戸:『時間の分子生物学』という本にも書いてありましたが、食後は胃に血が集まるから脳に行かなくなるので眠くなるというのは全くの嘘だそうで、正解は無かったと思います.お昼頃は既に十分な活動度がありますので、多少休んでも問題ないと思います.私は一日にコーヒーを何杯も飲んで活動度を保っています.

三井:時差ぼけの次に皆様の関心が高いと思われるのは、朝型と夜型は体内時計とどう関係があるかということではないでしょうか.自分は夜型だと自覚しておられる方は何人くらいいらっしゃいますか.

[大多数の参加者が挙手]

多いですね.朝型はどうですか.

[手を上げた人は5、6人]

人間は朝起きて昼間活動して夜寝ますけれど、ネズミなどは昼夜逆転していますね.生物時計は同じようにもっていても、天敵がいたりすると、逆転してしまうのでしょうか.

川戸:哺乳類が生まれてきたときに世界を支配していたのは恐竜ですから、昼間ノコノコと出てくると殺されるか食べられてしまいますね.自分が安全で生存できると思って出てくるか、危ない時間帯だと思って引きこもるかというのは、時計とは全く別の判断です.昼間日が照っているときに喜んで出歩くのは人間だけで、天敵がいなくなってしまったからです.

大島:鳥類の多くは昼間活動していますが、空には天敵が少ないということですか.

三井:鳥は夜になると目が見えないそうですから、それと関係があるのでしょうか.

川戸:夜行性の生物というのは、光の受容器が発達していません.ネズミの目にしても、光があるかないかを判定するだけで、画像を認識することはほとんどできません.多くの動物は、我々が目で得ている情報を嗅覚と聴覚でとっていると思います.

三井:鳥の中にも、フクロウのように夜活動するものがいますね.

川戸:フクロウなども超音波の受容器が非常に発達していますから、視覚はほとんど必要ないということになりますね.

大島:色が識別できるのは、サルでも中等くらいからです.今の私たちは色を感じるリセプターの細胞を三種類(赤青黄の三原色)用意していますが、性染色体の関係上、女性の一部は4種類もっています.4番目の色は、赤色のリセプターに変異が起こりましたので、まだ限りなく赤に近い(オレンジ色)のですが、そのうちに独立して4色になるかもしれません.

三井:ところで、夜型が多くなっているということは、人間が人工的な光を手に入れて、昼間を延長しているからでしょうか.

川戸:中学生くらいになると、テレビを見る時間も長くなりますし、遅くまで勉強をするので、夜型が増えてきますね.年をとると、1回の睡眠時間が短くなりますから、その頃からまた朝型に変わっていくわけです.昔よりも、テレビを観たりパソコンで遊んだりする夜の娯楽が多くなりましたから、3時過ぎまで起きているというような夜型が、現代社会に適応した人間として出てきたのではないでしょうか.

三井:そういう形質は、まだ遺伝するところまではいかないわけですね.

川戸:そういう生活様式の中で育った子供は、自分の家族をもったときも同じようにするでしょうね.

三井:遺伝子ではなくて、ミームですか.

川戸:獲得習慣ですね.

?:昼間飛んでいるのはチョウチョで、夜飛ぶのはガだと教わりましたが、それは朝型・夜型と関係ありますか.

川戸:食べ物によって違うのでしょうね.

三井:良い匂いを出す植物の中には、夕方になると匂いの強くなるものがありますから、そういことが関係しているのでしょうか.ガは誘蛾灯に集まってきますから、真っ暗な中で飛び回るわけではないと思いますが.

F:月下美人という植物の花は夜しか咲きません.匂いも、すごく出しますし、蜜もあります.

大島:それは新月でも咲きますか.

F:家の中で育てていますから、月の光によって咲くわけではないと思いますが、満月か新月のときに咲くのだと思います.


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