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第22回レポート
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第22回リーフレット

第22回 カフェ・デ・サイエンス


講師:  大島泰郎(おおしま・たいろう)
ゲスト講師:  川戸佳(かわと・すぐる)
日時:  2008年12月22日



異端児のみる生命 「生物時計」 BACK NEXT

三井:ありがとうございました.では、次に大島さんにお願いしたいと思います.

大島:今日は雨ですけれど、私がこの会に出るようになってから、雨に降られたのは今日が初めてではないかと思います.今日のゲストは心がけが悪いに違いないと(笑)思っていたら、果たせるかな、この会の長い伝統を破って、スライドを3枚も映すという悪行の限りを尽くしました(笑)ので、雨が降った理由がよくわかりました.

私が今日一番お尋ねしたかったのは、時差ぼけを解消する秘訣だったのですが、ほとんど駄目だというお話でしたので少しがっかりしました.時差ぼけの状態は年と共に変わりますね.若い時は、着いた翌日が一番苦しかったのですが、そのうちに二日目のほうが苦しくなりました.今だと、三日目が駄目です.若い時は帰国の翌日が一番ひどかったのですが、たいていは授業に合わせて帰って来ますから、ひどい状態で授業をしていました.有名な某先生は、黒板に字を書いている途中に眠ってしまって、手にもっている白墨をポトリと落としてしまったとか(笑).

また、睡眠と体内時計の関係に関する研究がどのくらい進んでいるかということも伺いたいと思っています.時差ぼけは睡眠が浅いから苦しむわけで、熟睡できれば簡単に治るのではないかと思いますし、朝型・夜型も、それと非常に密接に絡んでいるのではないかと思います.

それから、脳にある中枢の時計は、ゼンマイ時計の要にあるひげゼンマイのようなもので、それと歯車が噛み合うようにして、つまり、種々のタンパク質が歯車のように噛み合うことによって、脳からの振動が肝臓まで伝わってくるのではないかというようなこともお聞きしてみたいと思っています.

生物の時計としては、先程のお話にあった周期より長いものがあります.普通のヒトの細胞は、培養を何十回か繰り返すと、それ以上は増殖できません.それが人間の寿命とどのような関係にあるのかが問題なのですが、どのみちこの手の問題は誰も答えを知りませんから、私も、川戸先生も答えられません.

それよりもさらに周期の長いものがあります.生物の進化も遺伝子の上に時間の記録が残っています.専門の分野では「進化時計」ということが多いのですが、これも生物時計です.微生物では、遺伝子の中に刻まれている進化時計のほうは研究の蓄積がありますが、日周性の時計の研究は、シアノバクテリアでは有名になりましたけれど、他はあまり進んでいないのではないかと思います.

三井:これから休憩を10分程とりますが、その前に、例によって本の紹介をしたいと思います.一つは、『時間の分子生物学』(粂和彦著、講談社現代新書)です.川戸さんもこの本を良いと思われたそうですが、生物時計と睡眠の関係が非常によく書いてあって、面白い本です.

それから、生物時計の話はあまり書いてありませんが、時間のことをやさしく解説している『時間とは何か』(池内了著、講談社).

もう一冊は、『大人の時間はなぜ短いのか』(川誠著、集英社新書).子供のときは一日が長いのに、大人になると短くなってしまうのはなぜかということが書かれています.これも生物時計のことは少ししか触れていませんが、一般的な時間についての記述が豊富です.では、休憩に入ります.


(休憩)


三井:そろそろ始めます.皆さんの最大の関心事は「時差ぼけ」のようですので、良い対策をおもちの方がいらっしゃいましたら、お話して頂きたいと思います.

A:最低でも年に4、5回はアメリカへ出張していました.出発の2、3日前から、ほぼ徹夜に近い状態で仕事をして、飛行機の中では酒を飲んでひたすら眠ります.そして到着したら森林へ直行し、森の中を1、2時間歩くことにしていました.こうすると時差は全く感じません.

川戸:外国へ出かけた最初の頃は、時差ぼけが治らないまま頑張って仕事をしてしまって、帰国してから死んだように寝込むという事態に陥りましたが、最近では、飛行機の中で映画を観たりして、楽しみながら行きます.ただし、向こうに着いたら、到着した日と翌日には仕事を入れないで、1日半くらいは十分に休みます.それで時差ぼけが治りますし、帰ってきてからも全く疲れが残らなくなりました.つまり私の長年の時差ぼけ解消法は「2日間仕事をしない」(笑)ことです.

大島:行ったときに頑張ってしまうと、帰国後にその付けが回って来るというのは、私も感じています.時差ぼけには非常に苦しんでいて、効くと言われているものを次々と試しましたが、何一つ効かないですね(笑).だから、森林へ行くのも効かないのではないかと思います.

三井:一般的には朝日を浴びるようにと言われますが、昼ではなくて朝の光というのはなぜでしょうか.

川戸:厳密にわかっているわけではありませんが、午前11時までに光を当てると体内時計が進み、夜中の11時に光を当てると体内時計は遅れるという、かなり再現性の良い実験結果が出ています.それも我々のような個体ではなく、培養した肝臓の細胞で、夜中の11時に光を当てると位相がずれますから、細胞そのものがそうなのです.個人的な体験では、朝の光を浴びて時差ぼけを治そうとしたら、疲れ果てて酷い目に遭いましたから、やはり寝るほうが良いと思います.

B:私も努力したのですが、やはり全然駄目でした.時差ぼけのときは頭と体の覚醒状態が違うという感覚があります.中枢から指令が出て全体が動き出すというより、いくつもある時計がシンクロナイズしていないという感じです.実は、ヨーロッパとアメリカと日本という8時間ずつずれているところを旅行したときに、自分が一体どこにいるのか分からなくなって、シカゴで飛行機に乗り遅れたことがありました.

C:私は根っからの貧乏性ですから、出張で海外へ出ると、寝る時間がもったいなくて、仕事が終わっても夜遅くまで出歩いたり、明け方までテレビを観て起きています.一週間程度の滞在なら、一日1、2時間の睡眠でも大丈夫です.帰国したらその付けは回ってきますが、仕事なんてフラフラしながらでもよいじゃないかという感じでやっています.それは、国内の旅行でも同じで、面白いところへ行くと、寝ている時間が惜しくて、いつまでも起きて頑張ってしまいます.「時差ぼけ頑張り論」みたいですが、無理に寝たいと思う人の気持ちがわかりません.

大島:普段の睡眠時間はどれくらいですか.

C:普通でも寝るのは3時過ぎですが、朝は7時半に起きています.受験生の時は3時頃に寝て、お昼過ぎまで寝ていましたが、年を経るごとに、それほど寝なくても、体が慣れてきました.

大島:睡眠時間は個人差がとても大きくて、しかも遺伝的です.歴史的に有名なのは、ナポレオンは3時間と短くて、アインシュタインは毎日10時間くらい寝ていたと言われています.

C:少し眠いくらいのほうが、昼間調子が良いのです(笑).


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