赤崎 勇 |
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[図 20]
[図 21]
[図 22]
[図 23]
[図 24]
[図 25]
[図 26]
[図 27]
[図 28]
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[図 20]
このようにして、全く同時に世界で初めてGaNのpn接合型青色/紫外LEDを作りました。これは私がアメリカのロスアンジェルスの学会で発表した時のものです。これらの黒い点はすべてpn接合ダイオードになっていて、この一つのLEDだけを光らせているところです。ちょっと写真では見にくいのですが、サファイアの上にGaN結晶が積まれていますが、これはクラックがなく且つ、全く無色透明であるということをお見せしたかったのです。電圧―電流特性も格段に向上しました。上述のGaNがp型伝導であるということをもちろんホール効果で確認してあります。
[図 21]
これで問題が全て解決したと思ったのですが、実は、バッファ層を用いて結晶が良くなって、ドナーが少なくなったために、逆にn型の抵抗率が高くなってしまいました。実際のデバイスを作るためには、低い抵抗率から高い抵抗率まで抵抗率を広範囲に変える必要があります。我々はSiがGaNの中でもドナーとして振舞うことを見いだしました。但し結晶性の良さは保たなければなりません。バッファ層を用いることによって、結晶性を高品質に保ちながらSiをドープすることに成功しました。そして、n型の伝導率を ─逆に抵抗率はこういう具合に下がるのですが─ 広い範囲にわたって制御することにも成功しました。n型伝導率制御を達成したのもp型実現と同じ1989年です。
[図 22]
さてレーザダイオード(LD)ですが、この図でここから上の部分はLEDと共通ですが、LDを実現するためには、ご承知のように誘導放出を起こさなければなりません。
[図 23]
通常、低エネルギーの電子密度が高エネルギーのそれより高いのですが、誘導放出を起こさせるには、励起によって高エネルギーの電子密度を低エネルギーのそれより高くしなければなりません。"反転分布"です。ちょうどボルツマン分布で表しますと温度が負になるような形になりますが、この反転分布状態で誘導放出が起こります。これは、位相の揃った可干渉性の光です。誘導放出によって光の増幅、発振するのがレーザです。私たちは先ほどのバッファ層を使った高品質のナイトライドで1990年に室温で初めてこの誘導放出を実現いたしました。
[図 24]
LDは横軸に電流をとり、縦軸に光出力をとりますと、ある電流値から光出力が急に立ち上がってきます。これを閾値電流といいます。
[図 25]
先ほどの仕事の後で、私達は毎年一桁くらいずつこの閾値電力を下げてきました。1995年に、このような多重量子井戸構造のこの井戸幅を3ナノメートル以下にすると、バンド端発光強度が格段に(大体三桁くらい)増大するという現象を見出しました。これは後に(1997年)量子効果に関係するということを証明したのですが、これを使って1995年にGaN系量子井戸からの電流注入による誘導放出に世界で初めて成功しました。これは短寿命ではありましたが、ナイトライド系LDのはしりです。
[図 26、27、28]
このように1980年代半ば頃まで研究論文の数もどんどん少なくなっていたのですが、ちょうどその頃私は名古屋大学にいましたが、結晶性が格段に良くなって、p型の実現、それからn型の伝導性制御も達成され、pn接合型青色LEDも実現しました。さらに誘導放出も室温で可能になったので、この頃から色々なデバイスの実現が急速に進み、論文数も急激に立ち上がってきました。一方結晶性の向上に伴い、それまで混沌としていた結晶のさまざまな性質が明らかになってまいりました。同時にいろいろの物性の研究や、材料的な研究も盛んに行われるようになりました。また、先ほど垂井先生のご紹介にありましたように中村さんのところでLEDの商品化もされましたし、その他様々なデバイスが開発されています。このカーブは、私はハイパーボリックタンジェントだと言っていますが、縦軸はログスケールでハイパーボリックタンジェントのカーブを辿っており、しかもこの論文数の増加とデバイスの出現の様子は非常によくあっております。これは青色LEDの外部量子効率の向上のカーブともよくあっております。またレーザの閾値電力は、逆にどんどん下がっているところを見ますと、これも良く一致した傾向だと思います。
[図 29]
量子効果について簡単にお話しますと、私たちは1991年、井戸幅2ナノメートルの多重量子井戸を用いて量子サイズ効果を検証し、1997年には窒化物系で初めて圧電効果を見出し、さらに量子閉じ込めシュタルク効果を検証しました。これらの構造や現象は将来いろんな意味で大事であります。
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