The Takeda Award 理事長メッセージ 受賞者 選考理由書 授賞式 武田賞フォーラム
2002
受賞者
講演録
赤崎 勇
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Q&A






赤崎 勇
 
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[図 1]

[図 2]

[図 3]

[図 4]

[図 5]

[図 6]

[図 7]
[図 1]
ただ今ご紹介頂きました名城大学の赤崎勇でございます。窒化ガリウム(GaN)系青色発光デバイスの開発−洞察、挑戦そして成功という題を頂きました。

[図 2]
青色発光デバイスを実現するにはご承知のように、このエネルギーギャップが少なくとも2.6eV以上の半導体材料が必要です。同時に、運動量を保存するために、電子と正孔の運動量が等しいこのような直接遷移型バンド構造の半導体を用いる必要があります。そしてきわめて高品質の単結晶が必要です。これは高効率の発光を得るためであり、またあとで述べます電気伝導の制御を可能にするためであります。これらができるつまりp型、n型の電気伝導を制御できると、pn接合を作ることができます。pn接合という仕掛けによって初めて、少数キャリアの注入が可能になります。

[図 3]
さらに言いますと、より高性能化のためには、このように極めて高品質の量子構造も必要になります。

[図 4]
pn接合はエネルギーギャップに相当する程度の電圧を加えますと、電子はn型領域からp型領域へ、正孔はp型領域からn型領域へそれぞれ注入されます。そこで相手方である多数キャリアと再結合して発光します。この仕掛けが非常に重要であり、高性能の発光デバイス、その他のデバイスの実現にはこの構造が必要不可欠です。

[図 5]
1970年頃から80年代にかけて青色発光デバイスを目指す研究者の多くはこの三つの材料を対象として研究してきました。この中で唯一、炭化ケイ素(SiC)だけはpn接合が当時からできていました。したがって、結構たくさんの人がこの材料の研究に取り組んでいました。残りの人はセレン化亜鉛(ZnSe)もしくはGaNを選びました。後の二つはいずれもp型半導体ができていないという点で共通していました。しかしSiCは先ほど申し上げたバンド構造が間接遷移型ですから、強い発光が望めないし、ましてレーザはできっこないわけです。ところでZnSeとGaNは両方とも直接遷移型の半導体ですが、pn接合ができていませんでした。SiC研究者以外の大部分の人はZnSeを選択しました。その理由は、両方とも結晶が作りにくい点は同じですが、どちらかといいますとZnSeの方がGaNに比べると作りやすいからです。もう一つはZnSeは柔らかくて加工もしやすいということがございます。GaNはそれに比べて結晶を作るのが極めて困難であり、またp型を作るにしてもZnSeに比べてエネルギーギャップが大きいために、p型化はより困難であると予想されました。しかしながら、非常に硬くて丈夫で、しかも熱伝導性が良いという点など優れており、もし先に述べた問題を克服できれば、すばらしいものが期待できるわけです。私はGaNのp-n接合と青色発光デバイスの実現は極めて困難であることはわかっていましたが、どうせやるならと、この難しいGaNにあえて挑戦したのです。

[図 6]
GaNというのは兄さんがおりまして、これはAlNで、弟分が窒化インジウム(InN)です。これらを混ぜますと中間のものができます、こういうものをアロイ、あるいは混晶といいますが、これらは当然それぞれの中間の性質を持っているわけです。これら異なる材料で作った接合をヘテロジャンクションといいますが、先ほどの注入効率、その他の性能を大きく向上させる事ができます。またそれらのナノ構造を作りますと量子効果を引き出すことも可能となります。

[図 7]
そういう意味でGaN系窒化物は究極の半導体といえますが、しかし一方作るのは極めて困難です。まず結晶成長に関しては、GaNは融点が非常に高い、未だにこれははっきりしておりません。また窒素の蒸気圧が非常に高いので、大きな結晶を作ることは極めて困難です。こういう場合にはしばしばエピタキシャル成長という方法が用いられます。これはギリシャ語で、この下地の結晶に軸をそろえてその上に成長するという意味です。例えばシリコン(Si)の上のSiとか、砒化ガリウム(GaAs)の上のGaAsというのは、同種類ですのでホモエピタキシーといって原理的には界面エネルギーは存在しません。しかし、サファイアの上のGaNのような場合は、両者の性質が大きく異なっておりますので、大きな界面エネルギーが存在しております。これは非常に厄介な問題です。また、GaNは伝導性が全く制御されていない、特に先ほど申し上げたように半導体にとって極めて重要なp型半導体を誰も作ったことがない、しかも、ひと頃は理論的にもp型はできないというようなことまで言われていました。私は、なんとかしてこういう問題を解決できれば、例えばこのヘテロエピタキシーの問題を解決したとすれば、それによって異種の材料を創ることができるわけですから、極端にいえば新しい材料を創製する道が開けると考えました。また、電気伝導を制御できればGaN系窒化物を用いた様々な応用を開拓することができるであろう、そう考えたわけです。これは挑戦し甲斐のあるテーマであると思いました。その典型的な例は今日お話する青色発光デバイスであり、それから超高速・高出力のトランジスタなどです。


 
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