赤崎 勇 |
|
|
|
|
|
|
[図 13]
[図 14]
[図 15]
[図 16]
[図 17]
[図 18]
[図 19]
|
[図 13]
MOCVDという方法は大体こんな方法です。このガリウムをアルミニウムや、インジウムに代えることによってGaNのほか、AlNや、InNを作ることができますし、これらを適当に混ぜれば混晶ができるわけです。
[図 14]
ところでサファイアはGaNと同じ三回対称で、それが唯一の頼りなわけですが、これらを実寸大で比較してみますとこんなにも違います。格子定数だけでなくて、他の物理的な性質もかなり異なっております。
[図 15]
したがいまして(ホモエピタキシーと異なり)、こちらでは非常に多くの欠陥が界面から発生します。これはサファイアとGaNの界面に大きな界面エネルギーが存在するためです。
[図 16]
これを解決するために、ちょうど82年頃ですが、何か柔らかい材料を両者の間に挿入しよう、ただし結晶成長ですから低温で積む必要があると考えました。しかしあまり厚いと下地結晶の対称性などの情報が伝わらないから、あまり厚くてはいけない、そこで薄い緩衝層という考えで"低温堆積バッファ層"と名付けました。材料は何でも良いかというと、出来るだけ下地の材料と上の結晶に性質の似通った材料が望ましいということで、当時この四つの材料を考えました。同時に四つはできませんので、この材料(ZnO)とこの材料(SiC)はそれぞれ山梨大学と京都大学にお願いし、私は先ほどお話ししましたように、以前からAlNをやっておりましたので、名大ではまずAlNから始めることにしました。
[図 17]
共同受賞者の天野浩君が非常に頑張って、幾多の失敗を繰り返して、いい条件を見つけてくれました。これは結晶の写真ですが、バッファ層を入れないときはがたがただったのが非常にきれいになりました。X線の回折線幅もずい分狭くなりました。それからルミネッセンスですが、従来はこんなに黄色く、汚かったのですが、バンド端発光だけになりました。電気的な性質も不純物が大体4桁位減って、結晶中の電子の動きも非常に速くなりました。また、この透過型電子顕微鏡写真によれば、ここではよくはわかりませんが、バッファ層の近くに歪が集中していて、エピ層の上部は非常にきれいな結晶になっています。このように、結晶性,電気的な性質そして光学的な性質などすべての重要な特性が、低温バッファ層の導入によって同時に(同時にということが大事ですが)、格段に向上しました。
[図 18]
これで一目瞭然かと思いますが、先ほどのスライドと比べて頂ければと思います。
[図 19]
こうなりますと、すぐp型を実現できると思いました。p型実現の第一の条件は先ほど申し上げましたように、少なくとも残留ドナーを10の15乗以下にすることです。そのような高品質の結晶にアクセプタ不純物をドープするわけですが、当初は、それまで青色発光センターとして亜鉛(Zn)が良く使われておりましたので、Znをドープしておりましたがどうしてもp型は得られませんでした。ある時、マグネシウム(Mg)がZnより活性化エネルギーが小さいということに気が付き、ドーパントとしてビスシクロペンタディエニルマグネシウム(bis-cyclopentadienyl Mg) (CP2Mg)という有機金属化合物を用いることにしました。そして1989年に、CP2Mgを用いてMgドーピングに院生の鬼頭君が成功しました。これに低速の電子線を当てることによってMgを活性化して、p型GaN結晶を初めて実現したのです。1989年のことです。これについては少しお話したいこともありますが、多分天野君が話してくれるのではないかと思います。
|
|
|