The Takeda Award 理事長メッセージ 受賞者 選考理由書 授賞式 武田賞フォーラム
2001
受賞者
講演録
フリードリヒ・シュミット・ブレーク
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フリードリヒ・シュミット・ブレーク
   

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私が「間違った方向に誘導されている」と言う場合、このような種類の生産高を重視する経済は、産業革命の間に実施されて以来、非常に高い生産性を誇っていたのということを強調するべきでしょう。国の豊かさ、つまり、工業化された諸国の豊かさは、このような形態で達成されたのです。しかし、私達が見てきたように、このような生産高を重視する経済を継続させたなら、社会的、経済的、さらに環境的な「持続」は不可能となります。もし、このような方法で、60億から80億もの人が豊かになりたいと望むのであれば、自然資源を供給するのには、地球が2つ以上必要となるでしょう。私が感じるところでは、日本の産業はこの将来的な行き詰まりをすでに懸念しているようであり、将来において脱物質的ソルーションで市場に対応しようと準備しているようです。しかし、私達が未来を見据えた製品やサービスをタイムリーに実現したいと思うのであれば、経済的な境界条件の系統的かつ大胆な変更が必要です。そうでなければ、この地球での人類の生存そのものが危ぶまれるでしょう。

この陰鬱な状況に関して、市場を責めることはできません。市場は、市場が受け取る経済政策のシグナルに応じて、システムを最適化する「割り当て機能」でしかないのです。市場に対するすべてのシグナルの中でも、相対価格が最も重要です。そして、私達がすでに気がついているように、労働と自然資源の価格に対しては同じレベルの競技場がないのです。その主な理由は、環境面で悪影響を及ぼす活動、そして、しばしば経済面で悪影響を及ぼす活動をも奨励する私達の課税システムと膨大な補助金にあります。EU諸国では、国家収入の80%以上が所得税からのものであり、資源税からのものは15%にしかすぎません。ドイツでは、毎年約2000億ユーロが、政治的な観点から選ばれている活動を補助するためにすべて政府レベルで費やされています。そして、貧乏人はさらに貧乏になり、金持ちはさらに金持ちになっているのです。

ここで付け加えたいのは、基準や標準、安全規定、研究開発の優先度、所有権、および、国際的商業協定も資源の浪費に貢献しているということです。それらについても分析する必要があり、そしていずれは、それらも分析され持続可能性の実現のための要求に持ち込む必要があるのです。

各国の経済力を現す主要インジケータは、現在でもGNPです。世界中のテレビやラジオを見たり聴いたりしてもそのことは明白です。GNP曲線が上昇し続けなければ、経済専門家は憂鬱になります。少なくとも西欧諸国ではそうです。そのようなGNPによって測られる経済力は、「ゆりかご」つまり生態圏を略奪することに依存しているということがまったく考慮されていないのです。事実、最も高いGNPを誇る国々は、例外なく1人当たりの自然資源消費が最も高いのです。そして、これらの国々こそが、私達が見てきたように持続可能性という観点から考えたら疑問視せざるを得ない結果であるにもかかわらず、エンドオブパイプ的な環境保護を始め、現在でもそれを続けているのです。それらの国々は、自然資源がどれだけ効率的に使われているかということより、特定の排気ガスの毒性を懸念しているのです。

私達は、今後、社会的に、経済的に、そして、エコロジー的に、私達が20年後、30年後、あるいは、40年後にどのようにありたいかという共通したビジョンを構築する必要があります。私は、政治家、産業リーダー、労働組合、教会リーダー、そしてNGOさえもが合意するひとつの文書など知りません。すべての方向でより持続可能な世界への期待が記述され、それに対応し体系的な方法で国際的開発政策をガイドする指標が合意された文書など知らないのです。ゴールがなければ、そこにどうやって到達できるでしょうか?9月11日の同時多発テロのような出来事が起き、予期しなかったことに対して突然巨額のお金を費やす必要がある場合、何をするべきかをどうやって知ることができるでしょうか?政治家に圧力をかけて実現しようとする増税、新たなる補助、活動の延期、さらに迅速な財政出動、そして、その他多くのことに対して、常に政治的理由が存在します。しかし、「賢い」そして未来を見据えた決断とは、人間生活のすべての面においてネガティブなインパクトを最小限にする判断をすることでしかないのです。そしてそのような判断は、未来の「着陸場所」が決まっている場合にのみ、そしてその時が来るまでその決断を固守する場合にのみ達成されるのです。そして、戦略的ゴールにおける変更が、正しい理由によって行われる場合にのみ、そのような判断が実現されるのです。

先ほど申し上げた「着陸場所」という環境的な曲がり角として、ファクター10(もしくはそれ以上)、MI、MIPSそしてTMFが重要な役割を果たします。将来的に、持続可能で、信頼性が高く、透明性が高く、将来の長期的な政策のために、私達が未来の「着陸場所」を早い時期に、かつ成功裏に構築できることを私は大変期待しています。ヨーロッパにおいて、私達はこの作業を開始しており、そして、非常に喜ばしいことに、日本の最も著名な科学者達もこの取り組みに参加されています。

これらのことが、私が強く感じていることであり、皆様にお伝えしたかったことです。私は、武田計測先端知財団が、「エコリュックサック」と「MIPS」について、それらがシステム・ソルーションの一環であり、そして、したがって、持続可能性への「道」を見つける上で必要不可欠な部分であり得るということを認識してくださったことを非常にうれしく思っています。私は、世界的な観点から、武田計測先端地財団が、今後も賞賛に値する業績を選ばれるよう、ご成功をお祈り申し上げます。



ご清聴ありがとうございました。
 
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