The Takeda Award 理事長メッセージ 受賞者 選考理由書 授賞式 武田賞フォーラム
2002
受賞者
講演録
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パネルディスカッション
 
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[スライド 1(赤ア)]

[スライド 2(赤ア)]

[スライド 3(赤ア)]

[スライド 4(赤ア)]

[スライド 5(赤ア)]

[スライド 1(天野)]

[スライド 2(天野)]

[スライド 3(天野)]
赤ア:
 赤アでございます。今、西村さんの方から武田賞についての理念といいますか、お考えが示されましたけれども、私の場合でお話をさせて頂きたいと思います。もともと人類は、生命体自身が水と空気と太陽でできていると言われておりますように、太陽に憧れておりました。永遠の光である太陽に憧れて、スライド1にありますように、いろいろな光源を求め続けてきたわけであります。私の考えでは、第一世代の光は、やっぱり炎と言いますか、火だったと思います。第二世代としては、エジソンが京都の竹を使って1879年に、最初の白熱電球を発明しました。だいぶ時代が下って、第三世代で初めてルミネッセンスが登場するわけです。つまり冷光です。熱を伴わない光です。蛍光体で、実はグロー管は少し熱をもちますが、蛍光自身は本質的には熱を持ちません。この熱を持たないという点が非常に違っております。また、この第三世代までは真空管と言いますか、バルブの形をしておりました。20世紀の後半になりまして、半導体が登場したときに、発光ダイオードとレーザダイオードが実現したわけです。本日の情報・電子系応用分野の受賞の対象は、この長年できなかった青色発光ダイオード、レーザを実現したことによるものです。これによって、西村さんの表現をかりますと、新しい「知」が加わり、テクノアントレプレナーシップで世の中に出てきているわけです。
 これが今後どうなるかということですが、午前中のフォーラムでも多少言いましたが、例えば青ができたということは、白色光源もできるということです。発光効率が電球よりはいいですが、蛍光灯にはまだ及びません。今後いろいろな新しい「知」が加わることによって、近い将来に蛍光灯に置き替わる新しい光源になることは、間違いないと思います。
 レーザダイオードにしましても、単に、新しい光記憶装置の記録密度を上げるだけではなく、バイオの分野だとか、医学の分野だとか、計測の分野だとかに大きな発展を遂げることは間違いがありません。
 光の分野については午前中にもご説明しましたが、ここでは時間の関係もありますから、一つだけ、別の観点でお話したい。窒化物半導体というのは、窒化ガリウム系半導体ですが、これは電子デバイスとしても非常に有望です。と言いますのは、エネルギーギャップが大きいため、微細化しても耐圧が十分取れるからです。それ以外にもいろいろな応用がありまして、高周波の応用もあります。トランジスタというのは、周波数を上げると出力が下がる、というトレードオフがある。これを両方とも高くする、つまり周波数を落とさないで高い出力をねらうためには、やはり新しい材料の開拓が必要です。今まで、シリコンや砒化ガリウムなどの材料が使われていますが、これからはどうしても窒化ガリウムをベースとする、新しいトランジスタの世界が拓けてくると思います。ちなみにこのスライド2は、日本のNEDOとFEDが作ったデータをもとに作ったものですが、ブロードバンドLANとか、サテライトコミュニケーションなどの、新しいこれからの要求に応えるには、窒化ガリウム系が一番に有望だと思います。
 この窒化ガリウム系半導体は、光デバイスとしてだけではなく電子デバイスとしても、高周波・高出力ともに備えた領域で非常に有望です。しかもその最大の特長はスライド3に示しましたように、非常にタフであることです。過酷な使用環境にも耐えることができます。また、窒素が成分元素ですから、今までの半導体に比べて、環境にも大変やさしい。また、これによっていろいろな省資源、省エネルギーの使い方が可能であります。
 私が最後にここで申し上げたいことは、トーマス・エジソンが最初にニューヨークで第一灯を灯した応用分野の授賞対象であり、20世紀の終わりに私どもが開発した青色発光デバイス、あるいはそれの新しい展開というものは、照明の世界はもちろんのこと、先ほど武田さんの話にありましたヒューマンライフにとって、非常に大きな価値をもたらすだろうと私は考えます。以上であります。

西村:
ありがとうございました。それでは天野さんお願いします。

天野:
 天野です。先ほど西村さんから、テクノアントレプレナーシップと工学知というお話がありましたが、青色発光ダイオードの場合は、もしできれば必ず人の役に立つというものでありましたから、テクノアントレプレナーシップは非常にわかりやすい。私たちの仕事としては、あとはどうやって実現するか、工学知をどうやって築き上げるかということになると思います。
 私の数少ない経験の中から、少しでも皆様にお役に立てるようなことはないかと、エッセンスを抜き出したのがこのスライド1です。まず成功例として捕らえて、私たちがどうして青色発光ダイオードを実現できたかといえば、それはまず素晴らしい研究環境があって研究に集中できる、そういった環境がすでにあったからです。それと目標に向かって一心不乱に頑張るそういった情熱がそこにはあった、ということが言えると思います。そういった情熱を持つためには、そのテーマが非常に魅力的でなければならないと思います。青色発光ダイオードは、少なくとも私にとっては最も魅力的なテーマと映りました。しかも非常にわかりやすい。最終製品に近くて、すぐに人の役に立つことが、研究を頑張れた理由の一つだと思います。
 開発を進める上で助かったというか、研究を続ける上で助かったのは、モデルがあったことです。私たちはMOVPE法を使って結晶を作っていたのですが、そのときは、すりガラスのような曇った結晶しかできなかった。一方、当時HVPE法という別の方法があって、その方法で作る結晶は、スライド2のようにところどころ穴が空いている欠陥だらけの結晶なのですが、部分的には非常にきれいな、ステンドグラスのような結晶ができていた。MOVPE法を使っても、必ずこのような非常にきれいなステンドグラスのようないい結晶が作れる、という目標があったからこそ、ずっと頑張ってこられたと思います。
 もう一つ大事なことは、非常に厳密で正確な評価手段があった。最初作っていた結晶は、ものが悪いとずいぶん叩かれていた。そのときの評価手段となったのがX線回析という方法です。この方法を使いますと、結晶の内部がどんなものかが正確にわかる。非常に苦労しまして、スライド3に示しますように、最終的にはHVPE法を使った結晶よりもいい結晶ができた。ということでようやく工学知が一つ築けたかなということです。非常に簡単ですが私のコメントとします。

西村:
 天野さんありがとうございました。それでは中村さんお願いします。

中村:
 中村です。私はビューグラフなしでいきたいと思います。天野先生がおっしゃったように、青色発光ダイオードの分野では、工学知の方が問題でして、アントレプレナーシップは、できればいろんな大きなマーケットがあるということです。天野先生が言わなかったことで、人工知のもう一つの大きな問題は、私の場合一つあるのは、運・不運です。例えば青色発光ダイオードの材料として、セレン化亜鉛と窒化ガリウムの二つの材料があったわけです。私が始めた89年当時ほとんどの研究者は、セレン化亜鉛を選んでいました。窒化ガリウムを選んでいた人たちはほんの少しです。セレン化亜鉛に素晴らしい研究者が非常な数でトライしたわけです。結局青色発光ダイオードに近いものができましたが、寿命が短かった。これは不運だっただけなんです。彼らが費やした知というのは、すごいエネルギーの知です。窒化ガリウムの方は非常に少ない人数で、知のエネルギーも非常に少ないですね。要は、私が言いたいのは単に運・不運だけだったと思うのです。ですから運・不運というのが非常に大きな役割をしていたのです。たぶんセレン化亜鉛にトライしていた人の数が窒化ガリウムにトライしていたら、もっと早く青色発光ダイオードは実現していたと思います。ですからこういう材料を選ぶと言いますか、どっちを選ぶかは、運・不運です。セレン化亜鉛を選んだというのは、常識でいけばそっちに行っちゃうということです。こういう非常に大きな人工知を生み出すということは、非常識なことにトライするということです。窒化ガリウムにトライするということは、当時は非常識でしたから、そういう非常識なことにトライすれば、非常な人工知が得られるということです。
 もう一つ、天野先生、赤ア先生が言わなかったことは、青色発光ダイオードができまして、いろいろなマーケットがあるわけです。このなかで、日本に独特の問題が一つありまして、それをこの場で言いたい。非常にいいものができても、一般の人が選べないような、日本は非常に規制があるわけです。一つ言いたいのは、交通信号機です。世界中を旅行してみなさんびっくりすることは、日本を除いた世界中で交通信号機に窒化ガリウムのLEDが使われていることです。LEDを使えば電力消費量は十分の一になりますし、寿命は半永久です。ですからLEDに変えれば、省エネルギーになりますし、省資源になります。日本を除いて世界中が変えているのです。唯一緑色のLED信号機を見ないのは日本だけです。この技術は日本で発明されたものです。なぜ、それを使わないかと言いますと、日本はご存知のように、交通信号機五社と言いまして、そこが独占しているわけです。そこには、警察庁の天下りがいっています。LEDに変えると、電球のように切れないのでメンテナンスフリーになります。現在の交通信号機屋さんというのは、メンテナンス費用で儲かっているわけです。そのメンテナンス費用がゼロになりますから、変えたくないのです。ですから、こういう社会の役に立つようなものは、普及するようなシステムにしないと、一般の人がこういう技術を使えないようなシステムも存在しています。そういうことを加えて私のコメントにします。







 
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