天野 浩 |
|
|
|
|
|
|
[図 22]
[図 23]
[図 24]
[図 25]
[図 26]
[図 27]
[図 28]
[図 29]
[図 30]
|
[図 22]
次に、うまくいった例ばかりではなくて失敗した例もご紹介したいと思います。それは、発光波長の制御に関してです。ガリウムナイトライドの結晶はうまくできるようになりましたが、ガリウムナイトライド自身は紫外線を発する材料です。青色を発するためには、インジウムを混ぜないといけません。
当時、ガリウムナイトライドのp型ができた後すぐに、インジウムを添加する実験を始めました。ところが、ガリウムナイトライドとインジウムナイトライドは、水と油みたいなもので、混ざらないというようなことが一般的に言われており、やっぱりそうか、やっぱりだめなのか、多分難しいんだろうな、ということが頭にあって実験しておりました。
[図 23]
当時修士の学生さんなどと一生懸命やったんですが、もともと、多分ダメだろうなと思ってやるとやっぱりダメなんですね。ところが、これは後から考えれば大失敗で、その後、例えば中村先生がちゃんとできますよ、非常に明るいですよ、ということを発表されて、じゃあといってやり直してみると、今度はできちゃうんですよ。
[図 24]
ということで、これは失敗例なんですが、何かをやるときに、必ずできると信念を持ってやるのと、ダメだろうなと思ってやるのとの違いを、この時ほど痛感したときはありませんでした。
[図 25]
まだちょっと時間があるようなので、最後に、現在の苦闘といいますか、現在行っていることをご紹介して終わりにしたいと思います。
[図 26]
可視発光ダイオードでは非常に活躍しているガリウムナイトライド系の材料ですけれども、もうちょっと波長の短い紫外の方にいきますと、苦戦をしています。この紫外の方ですが、例えば、今、紫外の光源といいますと、エキシマレーザ、要するにガスレーザのようなものしかありません。大きさは非常に大きくて、かつ1トンとか非常に重たいものです。
[図 27]
もし、これが、半導体でできるようになりますと、手のひらに載るものができるようになるかもしれない。全体の効率も、ガスレーザだと例えば1%以下です。それが半導体レーザを使えば非常に高い効率でできるはずです。
[図 28]
もしも、紫外線の光源ができるようになれば、殺菌などに使えますから、バイオテロなどに対する応用にも使える可能性があります。
[図 29]
それから、例えば、これは、DNAとタンパク質の波長の吸収を表したものですが、この波長を選ぶことによってヒトや人体のDNAには影響がなくて、かつ悪性のタンパク質だけ検出させるということができるようになるかもしれません。そのようなことができますと、人体の中に非常に小さな半導体チップを入れて、ガン細胞だけを見つけ出して、レーザで殺してしまうということもひょっとしたら将来実現できるかもしれません。
現在では、これも絵空事のように思われるかもしれませんけれども、私は青色発光ダイオードで非常に良い経験をしたと思っています。青色発光ダイオードというのは、今でこそ、あるのが当たり前のようになっていますが、私が研究に加わった当時は、そんなものとってもできるわけがない、この絵と同じように絵空事のように思われていた時代があったわけです。ということで、これも今、開発を進めているところです。
[図 30]
最後になりましたが、私にとってこの上ない研究テーマとすばらしい研究環境を与えてくださいました赤ア勇先生、それから、当時の名古屋大学の研究室の皆さん、それから現在の名城大学の研究室の皆さん、それから、私のような若くて無名の人間をご推挙くださり、このようなこの上のない名誉を与えてくださいました武田計測先端知財団の皆様に感謝申し上げます。どうもありがとうございました。
|
|
|