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へそ曲がりの先に見る夢
理事長 武田郁夫
本年9月17日、記者発表の席にて、本財団の担当者より、本年度の武田賞授賞業績について懸命にご説明申し上げました。その中でも特に申し上げたいことというのは、一つに絞られます。
それは、『武田賞は、全地球上の生活者に豊かさと幸せをもたらす工学知、そして企業家精神と言いますかアントレプレナーシップで花咲かせるという努力をなさった方に差し上げる』いう一貫した考え方で取り組んでいるということです。
本誌の中で、拙稿を掲載しておりますが、世界の顕彰財団の大半は学術的(アカデミック)な先進性というものを賞の選考の基準としております。世界中には、数多くの顕彰を行う財団が存在しております。人類の歴史において、人間の知は時間とともに蓄積され、非常に進歩してまいりました。本年6月にスウェーデンのウプサラで開催した武田シンポジウムに出かけた折り、ノーベル賞に見られる、人間の知の蓄積とその尊さを垣間見ることができました。アカデミックな価値というものは確かに重要で、私も敬意を払っているわけです。
かくして、人間がなぜ豊かになってきているのか、それは、優れたアカデミックで先進的な新しい知が礎となっています。しかし、21世紀を迎えた今、私たちは次の時代に注目しなければなりません。それは、アカデミックな評価にはとらわれない、新しい知が生み出す未来です。その未来を決めるのは、全世界の生活者の選択です。我々は、新しい変化を決して見失わないことが大切です。もちろん、新しいニーズに応える技術の実現には、アカデミックな裏付けは欠かせませんけれども。2002年ノーベル化学賞の田中耕一氏の受賞が最も如実な例と言えます。
我々はまだ駆け出しの財団でありますし、知のもたらす未来について、どういう工学知とアントレプレナーシップが人間の幸せを作るのか、ということについては、多くの方の力をお借りして調べています。まず、ノミネータの方に挙げていただき、そして各界の最高レベルの先生方のご選択、ご意見そういうものをまとめまして、選考するわけです。できるだけ世界中から集め、最新の、そして深く潜んでいるものを見つけたいと思っています。我々は、21世紀という新しい時代が創り出す生活者の豊かな生活に重点をおいているわけであります。かくして、生活者による生活者の賞としたい、我々の狙いはそういうところにあります。多くの方のご批判もいただきながらこの賞を育てていきたい、そのように思っています。
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