The Takeda Foundation
理念


武田賞の意図するもの  2001年9月11日


 武田賞は、二十一世紀の新しい賞として、地球上に存在する全生活者に価値をもたらし、生活者の富と豊かさ・幸福との増大に役立つ、科学技術の業績に贈られる。武田計測先端知財団は、武田賞をもって、工学知とテクノアントレプレナーシップに称賛のメッセージを贈りたい。武田賞は、思いを同じくする多くの方々の支援を得て誕生した。授賞業績の推薦や選考に携わって頂いた方にも感謝申し上げたい。

 私が考えるに、富とはお金ではない。豊かさと幸福とを享受できる生活そのものである。地球上に普通に生活しているあらゆる人々の豊かさ・幸福という富が増大してほしいと願う。

 二十一世紀は、ますます富が増大し、より豊かな世紀になることは間違いないと思う。二十世紀前半には、世界は二つの大戦をはじめとする大国間の戦争に見舞われ、多くの富が破壊された。しかし、二十世紀後半には、人類の反省から、平和が希求され、世界の多くの国と地域においてめざましい発展が見られ、人々の富は、確実に増大した。

 二十一世紀を迎えた現在、ネットワーク社会が到来し、情報のボーダーレス化が急速に進みつつある。新たな富の増大する基盤が確立した。生命科学においては、ヒトゲノム研究におけるDNAの塩基配列解読がほぼ終了し、さらなる解析による革新のときを迎え、新たな富の創造が期待される。地球環境においては、その保全と改善 が強く求められ、富が失われることに対する危機感が高まっている。そのために真に有効な新しい経済モデルの構築が切望される。そこで、(1)情報・電子系市場、(2)生命系市場、(3)環境系市場、の三市場が、私の注目したい新しい市場だ。

 二十一世紀には、これらの市場に生み出される富は二十世紀の数倍の規模になると思われる。多様な市場が多数できることによって、生活者の収入が増え、より豊かな生活を送ることができるであろう。

 市場に価値あるものがもたらされるには、工学知による革新が必要とされる。生活者が求めるものを提供しようとするとき、そこに工学知が活かされる。工学知とは、生活者への価値の実現を目指すための工学的発見、知識やひらめきのことである。本財団は工学知に注目する。そして、テクノアントレプレナーシップを称賛する。テクノアントレプレナーシップは実行力そのものである。

 工学知を発揮する素晴らしいひらめきや発想。
 リスクを乗越えて果敢にチャレンジする実行力。

 武田賞は、これらを顕彰し、知のメッセージとして発していきたい。これが私の残された人生における切なる願いであり、祈りである。

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