年度計画・報告  Annual Report


一般財団法人 武田計測先端知財団

2016年度事業報告

(2016年4月1日から2017年3月31日まで)


1. 顕彰事業

継続事業1 研究開発者顕彰事業

継続事業3のアントレプレナーの調査と連携して事業を行い、最優秀賞の賞金は研究開発者顕彰事業として授与した。


2. 助成事業

継続事業2 奨学金の給付

継続事業3のアントレプレナーの調査と連携して事業を行い、優秀賞の賞金は助成事業の奨学金として給付した。


3. 調査事業

継続事業3 先端科学技術等の調査事業

3.1. アントレプレナーの調査

ヤング武田賞

現実の課題を直視しそれを解決しようとする活動と、人々の役に立つ何かを生み出そうとする若い研究者の調査を行った。その調査結果に基づいて継続事業1の研究開発者顕彰事業と継続事業2の奨学金の給付を行った。日本および世界の40歳未満の研究者を対象とした。

3.1.1 募集経緯

4月1日から財団ホームページで募集を開始した。まず、応募登録をして貰い、その人に、受付番号と提案書類のアップロード方法を連絡して、提案書類をアップロードして貰う二段階方式で募集を行った。
 並行して財団メールリストを使って案内メールを送った。さらに、応募してくれそうな人につながりのある大学や研究機関などにも案内メールを送った。アジアから多くの人に応募して貰うために国際政策対話の参加者やJICAの各国駐在事務所などにも案内メールを送った。
 7月末で募集を締め切った。209件(46か国)の応募登録と51件(25か国)の応募提案があった。登録者の98%、提案者の92%が日本以外の国からであった。男女別では提案者の60%が男性、40%が女性であった。また、アフリカからの提案が全体の約4分の1を占めた。

3.1.2 調査選考経緯

浅田邦博東大工学部VDECセンター長、大島泰郎東京工業大学名誉教授、金田哲也日本NCS(株)取締役、工藤一郎エコアンドアートテクニカ代表、末森 満(株)国際開発ジャーナル社長、村井勝TXアントレプレナーパートナーズ最高顧問の6名の方に選考委員を委嘱し、浅田先生に選考委員長をお願いした。
 51件の応募提案をPOが分担してヤング武田賞選考要綱に従って予備調査を行い、予備調査報告書を作成した。
 9月7日に第一回選考委員会を開催し、第二回選考委員会で議論すべき案件について検討した。予備調査の結果著しく点数が低いか、受益者の証言がない、組織の業務の一環として行っているなど明らかに募集要件を満たしていないと思われる29件を選考から外す提案を行い了承された。残る22件について第二回選考委員会で議論することになった。
 第二回選考委員会は、9月20日に開催した。事前に各選考委員に6件の推薦案件を提案して頂き、それを基にテレビ会議で発表してもらう6件の案件と、次席3件を決定した。また、第二回の選考委員会で選定した案件についてPOが追加調査を行い、結果を事前に選考委員に報告した。
 テレビ会議(第三回選考委員会)を10月19日に開催した。事務局より事前に発表候補者6人にテレビ会議参加が可能であるか否か打診したところ、全員が参加可能であるとのことだったので、選考した6件の案件についてインターネットを使ったテレビ会議方式によりプレゼンテーションと質疑応答を行い、最優秀賞の選考を行った。審議の結果、最優秀賞一件(賞金100万円)、選考委員会特別賞1件(賞金50万円)、優秀賞4件(賞金20万円)を選考した。

3.1.3 選考結果

最優秀賞

- Sana Talmoudi (東北大学工学研究科前期博士課程2年、チュニジア)
 「ドライブレコーダー」を利用した低コスト道路損傷診断システムの開発

選考委員会特別賞

- Nnaemeka Ikegwuonu(Cold Hubs Limited, CEO、ナイジェリア)
 太陽光発電パネル付き冷蔵システムの制作とサービス提供

優秀賞(名前のアルファベット順)

- Angeline Makore(Mwedzi Social Enterprise創設者、ジンバブエ)
 再利用可能な布製生理用パッド制作で女性の未来を拓く

- Anuar Bin Mohamed Kassim (マレーシア工科大学、マレーシア)
 第2の目 視覚障がい者用の新しい障害物検知器の開発と実用化

- 金森主祥 (京都大学大学院理学研究科助教、日本)
 有機・無機ハイブリッドエアロゲル高断熱性新素材の開発

- Tanuj Jhunjhunwala Tanuj Jhunjhunwala (Planys Technologies 社 CEO、インド)
 小型潜水検査ロボットの開発と水中インフラ調査・解析の事業化

3.1.4 ワークショップ・表彰式

2017年2月4日にワークショップと表彰式を行った。

(ヤング武田賞ワークショップ)
  継続事業1、2、4と連携してヤング武田賞ワークショップと表彰式を行った。出来るだけ多くの人に参加してもらえるように、武田シンポジウムと同じ日の午前中にワークショップを開催した。参加申込者数は99名で、出席者数は56名であった。選考委員の先生方と受賞者と随行者を加えると出席者数は財団スタッフを除いて68名であった。
  表彰式の式次第と受賞者の発表資料をまとめたカラー印刷32ページのヤング武田賞資料を作成し、配布した。

(ヤング武田賞表彰式)
  武田シンポジウムの冒頭30分で表彰式を行った。浅田選考委員長の選考結果報告の後、唐津理事長から各受賞者に盾と賞状を渡した。受賞者を代表して最優秀賞受賞者のサナ・タルモディさんがスピーチを行い、チュニジア共和国のカイス・ダラジ大使から激励のお言葉を頂いた。


3.2. さくらサイエンスプラン

JSTの2016年度「日本・アジア青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプラン)」に応募し採択された。調査事業Ⅱと連携して事業を行った。事業の詳細は調査事業Ⅱで述べる。

3.3. 未病社会の診断技術研究会の活動支援

財団メールリストで研究会・講演会の参加を呼びかけるなど、未病社会の診断技術研究会の活動を支援した。

3.4. TTM(Takeda Tea Meeting)

毎週財団スタッフによるミーティングを開催した。財団スタッフが関心を持ったテーマについて説明し、討論を行った。また、武田シンポジウムのテーマ設定のための議論もこのミーティングで行った。2016年度のテーマは添付資料参照。


4. 普及事業Ⅰ

継続事業4 武田シンポジウム等のシンポジウムや講演会の企画・実施・内容の公開事業

4.1 武田シンポジウム2017の開催

2017年2月に武田シンポジウム2017「どこまでが人間なのか」を全体テーマとして2017年2月4日に開催した。AIを背景に置きながら、広い意味でAIと人間の関係を中心とした先端科学技術の話題を組み合わせるテーマとした。
 最初に「睡眠覚醒の謎に挑む」というタイトルで柳沢正史筑波大学国際統合睡眠科学研究機構長教授に睡眠を制御する物質オレキシンの話と遺伝的な変異が睡眠に及ぼす影響についてお話し頂いた。

次に「人間型ロボットと未来社会」というタイトルで石黒浩大阪大学基礎工学研究科教授に、ネット社会の次にくるのはロボット社会であり、これまでに開発されたロボットを紹介しながら、どのようなロボットが必要になるのか、ロボットを研究するとなにがわかるのかをお話し頂いた。

次に「ヒトの代わりに機械を操縦する」というタイトルで、谷口恒ZMP代表取締役社長にお話し頂いた。ヒト型ロボットの研究を行いながら自動運転技術の開発に取り組んできたこと、天台宗の「一隅を照らす」という考え方に啓発されて自動運転サービスの開発を始めたこと、物流ロボットの開発を行っていることなどを話して頂いた。

最後の総合討論では、財団理事長の唐津治夢がモデレータとなり、3人の講師がパネリストとなって討論した。ほとんどの動物は眠るがなぜ眠るのかはまだ解明されていない課題であること、脳の半分ずつが眠るイルカや鳥などの例も話された。自動運転の次の段階は走る領域と道路を決めてその詳細なデータを収集し無人で走る、目に見えない線路を走る自動運転車になるであろうということも話された。

参加申込者数は377人、出席者数は296人で出席率が約79%となり、昨年とほぼ同じであった。これまで14回の参加申込者出席者数の推移と申込回数のグラフを以下に示した。



4.2. 武田シンポジウムの内容の出版

武田シンポジウム2016の内容をもとにした書籍『超創造科学 ナノ・バイオ・ITの未来』を『科学のとびら』シリーズの第61巻として東京化学同人社から2016年10月に出版した。
 武田シンポジウム2017の内容は、丸善プラネット(株)から出版する。2017年10月頃の出版を予定している。財団スタッフが原稿のドラフトを作成し、講演された先生にチェック頂き、出版社で出版作業を行う。

5. 普及事業Ⅱ

継続事業5 サイエンスカフェの企画・開催・内容の公開事業

5.1. カフェ・デ・サイエンスと武田セミナー

財団モデレータの都合もあり、これまでのような対話中心のカフェ・デ・サイエンスは休止とした。それぞれのテーマについてやや体系的な話をしたあとで、質疑を行うという武田セミナーを開催した。2016年度では第1回から第3回までを本郷のドリームインスティテユートを会場として開催した。イノベーションを大きなテーマとし、第1回では「イノベーションを歴史的に考え直す」第2回では「マイクロプロセッサことはじめ」第3回では「電子立国はなぜ凋落したか」をテーマとした。

5.2.ウィークエンド・カフェ・デ・サイエンスの活動支援

財団が支援している科学博物館のサイエンスコミュニケーター養成講座修了生有志によるウィークエンド・カフェ・デ・サイエンスは2016年度に3回開催した。運営資金の提供と毎月の定例会での議論への参加を主な支援として行なった。


6. 調査事業Ⅱ さくらサイエンスプラン

JSTの2016年度「日本・アジア青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプラン)」に応募し採択された。2016年7月26日より8月3日の日程でウズベキスタンの大学生、大学院生、若手アントレプレナー11名を招へいし、科学技術開発に基づくイノベーション創生についての体験学習を行った。
 具体的には、東北大学工学部、東大大規模集積システム設計教育研究センター、東大アントレプレナー道場、東大発スタートアップ企業AgIC、柏の葉オープン・イノベーション・ラボ、デジタルハリウッド大学等を訪問し、ドライブレコーダーを利用した道路インフラ評価システム、集積回路システムの設計、プリンターによる電気回路の印刷技術の開発、介護ロボット開発、マウスを用いないPCのコントロールシステムの開発、日本の主要輸出産業の一つであるコミックやアニメのようなソフト商品開発を体験学習した。ウズベキスタンの若者は、日本における技術開発の先見性と技術レベルの高さをよく理解し、見学後の意見聴取では、見学した大学の大学院への長期留学や日本の企業への就職を希望する若者が続出した。
 終了後、体験学習の記録などをまとめた冊子”A Record of the Japan Visit”を作成し、参加者とウズベキスタン日本センターやJSTの関係機関などに配布した。
 なお、武田計測先端知財団の招へいについての報告が文部科学省関連の情報を扱っている文教ニュース第2430号に掲載された。


7.広報関係

ヤング武田賞の募集と選考結果、武田シンポジウムの参加者募集、カフェ・デ・サイエンスの参加者募集、討論内容、などを財団ホームページに随時掲載した。


8. 総務関係

和田公認会計士事務所と業務委託契約を結んだ。


9. 寄付金

一般社団法人育珠の会様より1000万円、株式会社エー・アンド・デイ様から1000万円のご寄付を頂いた。


10. 公益目的支出計画実施報告書と公益目的支出計画実施完了確認請求書の提出

2016年度の実施報告を事業報告と決算に基づいて報告と実施完了確認請求書を提出する。2016年度当初の公益目的支出金額の残高は444万円、2016年度の公益目的支出金額は2,227万円なので公益目的支出計画実施は完了した。2017年度からは通常の一般財団法人となる。




添付資料 TTMテーマ一覧

2016年担当テーマ
4月5日全員来年のシンポ(1)
4月12日鴨志田テラヘルツ電磁波
4月19日溝渕「ビッグデータの正体」を読んで
5月10日赤城ビットコイン
5月17日全員来年のシンポ(2)
5月24日大戸葬送の社会史
5月31日相崎東芝不正会計問題
6月7日西村吉雄先生日本の産業政策・科学技術政策は社会主義的過ぎるのではないか
6月14日鴨志田2冊の企業敗戦書から、坂本著(エルピーダ)、中田著(シャープ)
6月21日禿私の考えるビッグデータとIoT
6月28日溝渕CNF(セルロースナノファイバー)
7月5日全員来年のシンポ(3)
7月12日赤城ミニコンのプロセッサ
7月19日大戸"Did we select the right ones?" ベンターとハンカピラー
7月26日全員さくらサイエンスプランメンバー交流会、歓迎会
8月2日全員さくらサイエンスプランメンバー交流会、歓迎会
8月9日相崎激化する音声対話開発競争
8月16日全員ヤング武田賞検討会1(13-16.30)
8月23日全員ヤング武田賞検討会2(13-16.30)
8月30日全員ヤング武田賞検討会3(13-16.30)
9月6日全員ヤング武田賞検討会4まとめ(10:30-16.30)
9月13日全員来年のシンポ(4)
9月20日全員ヤング武田賞選考委員会(12-14)
9月27日鴨志田日本の国債
10月4日全員来年のシンポ(5)
10月11日禿五島勉著『1999年以降』よりヒトラーの予言
10月18日池田先生(VDEC)ISSCC国際会議などの論文動向からみる半導体研究開発の現状
10月25日溝渕「ゲノム編集」ってどんなものか
11月1日赤城機械生産と経済
11月8日大戸 アフリカについて
11月15日全員来年のシンポ(6)
11月22日西村吉雄先生 歴史的転換点に立つ日本のエネルギー
11月29日宮島李氏朝鮮王朝の偉大なる発明
12月6日鴨志田IMECが描く半導体技術とその応用
12月13日相崎電機親企業からの自立・成長事例
12月20日禿 卑弥呼の墓を探す
2017年
1月10日
溝渕「エピジェネティクス」ってどんなものか
1月19日(木)片岡貞治先生(早稲田大学、アフリカ協会理事)ナイジェリアの社会と経済(場所:山上会館001会議室)
1月24日赤城ニューラルネット・GPU読みかじり
2月7日大戸老化研究あれこれ
2月14日鴨志田初めてのカンボジア-教育と日本の支援-
2月21日全員シンポアンケート整理・反省会
2月28日相崎2年続きのM&A急増
3月7日全員来年のシンポ(0)
3月14日池田純子さん(DNAチップ研)遺伝子業界の昨今
3月21日禿ドル基軸通貨制度と今後の推移
3月28日溝渕縄文人の核DNA解析