年度計画・報告  Annual Report


一般財団法人 武田計測先端知財団 平成23年度事業報告

(平成23年4月1日から平成24年3月31日まで)


1. 顕彰事業

継続事業1 研究開発者顕彰事業

平成22年度に続いて、バイオビジネスコンペJapanの第2期事業であるバイオビジネスアワードJapanの企画に協賛した。バイオビジネスアワードJapanは、大手企業の研究開発担当者を始めとする第一線で活躍するアライアンスパートナー(買い手側)が注目するビジネスとして魅力がある医薬分野の技術シーズをマッチングの場から発掘して顕彰するものである。主催者は大阪商工会議所と大阪医薬品協会である。これに対して財団から、国際社会の健全な発展と人類の豊かさ・幸福への寄与が期待されるバイオ技術に対して「バイオ先端知賞」を提供した。賞金は100万円であった。バイオ先端知賞の選考はバイオビジネスアワードJapanのモデレータが行なった。

平成24年2月17日に大阪産業創造館で選考会と表彰式が行われ、大阪市立大学大学院医学研究科河田則文教授の「肝星細胞とサイトグロビンの機能解析を中心とした肝繊維症の解明とバイオマーカー、治療法の開発」がバイオ先端知賞に選考された。

2. 助成事業

継続事業2 奨学金の給付

平成23年度の事業計画では、2名に100万円ずつの奨学金を給付する計画であったが、以下の4名に合計250万円の奨学金を給付した。

鈴木基之常任理事からネパール大使館Durga Bahadur Subedi 主席公使に依頼して推薦頂いた山梨大学ポスドク研究者のVISHNU PRASAD PANDEY博士に、平成23年度若手優秀研究者として奨学金100万円を支給した。

平成22年度優秀若手研究者に選考されたウラムバヤル・ツェツェグドラム(ULAMBAYAR TSETSEGDULAM)さんから博士号取得まで半年間奨学金の支給を延長して欲しいという要望があり、奨学金50万円を支給した。

アジア研究圏関連の若手優秀研究者1名を計画していたが、東日本大震災の外国人留学生の被災者を対象として選考することにし、インドネシア留学生協会に依頼して推薦された、Vera Yuliantiさん(東北大学大学院文学研究科言語学専攻日本語教育専攻分野修士課程)とPutri Setianiさん(東北大学大学院環境科学専攻博士課程)にそれぞれ50万円の奨学金を支給した。

3. 調査事業

継続事業3 先端科学技術等の調査事業

3.1 アントレプレナーの調査と出版

アントレプレナーの第5次調査を行った。調査対象は、エネルギー最少のレーザ素子を可能にする量子ドットデバイスの提案と実現、リチウムイオン電池の原型の発明、デジカメの手ぶれ補正などの発明、三次元デバイスを可能にするTSV技術の先駆的研究、酸化亜鉛発光ダイオードの創出、無機電子機能材料の創製、TiNi系形状記憶合金の研究開発と実用化への貢献、実用的な携帯電話用標準暗号の開発、ソーシャルネットワーク市場の創出であった。一部の調査の完了は平成24年度になる。調査報告をもとにした出版は平成24年度に行う。


3.2 科学技術の国際連携戦略研究会

広く世界やアジアの生活者が豊かになるような動きを助長するために「アジア研究圏」構想を平成23年度においても引き続き推進した。平成22年度までにこの構想の実現へ向けて社会的合意形成を目的としてアジア研究圏シンポジウムを2回開催したが、平成23年度においては、この成果をもとに文部科学省の科学技術戦略推進費補助金に応募し採択されたので、本事業と補助事業を有機的に連携させて、平成23年12月15日、16日に「国際政策対話 -アジアにおける科学技術の域内連携-」を開催した。国際政策対話事業を効果的に進めるため、外部の協力者による連絡会を組織した。委員は、有本建男氏(JST社会技術研究開発センター長)、小林信一氏(筑波大学ビジネス科学研究科教授)、末森 満氏(JICAシニア課題アドバイザー)、角南 篤氏(GRIPS准教授)、渡辺 孝氏(芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科長・教授)、松見芳男氏(伊藤忠理事、先端技術研究所長))に加え、西嶋昭生氏(早稲田大学客員教授)、野呂高樹氏(未来工学研究所研究員)の8名であった。

補助金では飲食費の支出が認められないため、国際政策対話の参加者間の交流を深めるための懇親会(東京プリンスホテル、70名参加)と国際政策対話の参加者の昼食代を当財団が負担した。

また、財団職員のアジアに関する知識向上を目的として「アジアについての勉強会」を4回開催した。

3.3 TTM (Takeda Tea Meeting)

毎週財団スタッフによるミーティングを開催した。財団スタッフが関心を持ったテーマについて説明し、討論を行った。また、武田シンポジウムのテーマ設定のための議論もこのミーティングで行った。また、3.2.で述べたように外部講師によるアジアについての勉強会を5回開催した。

平成23年度のテーマ一覧を最後に添付した。

4. 普及事業Ⅰ

継続事業4 武田シンポジム等のシンポジウムや講演会の企画・実施・内容の公開事業

4.1 武田シンポジウム

武田シンポジウム2012のテーマについて、TTMで9回議論をして全体テーマを「自己組織化 ―シロアリ・量子ドット・人間社会-」とした。この全体テーマのもとで、松本忠夫放送大学教養学部教授に「巨大な巣をつくるシロアリ - そのパワーの源泉 -」、荒川 泰彦東京大学生産技術研究所 教授、ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構長に「量子ドットが拓く未来技術」、今田 高俊(東京工業大学大学院社会理工学研究科価値システム専攻 社会数理講座社会システム分野 教授に「成熟社会を目指して」というテーマで講演をお願いし、最後に唐津理事が司会をして総合質疑を行なった。

参加申込は全体で308名、参加者は全体で220名であった。新規の参加申込は61名、参加者は39名であった。アンケート回答者は141名であり、好意的な回答が多かった。特に総合質疑で全体のつながりができて面白かったという声が多かった。平成24年9月下旬に、今回の講演内容を書籍として出版する予定である。これまでに出版した書籍をシンポジウム会場で、特別価格で販売した。また、過去の予稿集も希望者に配布したが、これも好評で持ち込んだものは全部配布できた。

武田シンポジウム2011の内容を基にした『「ゆらぎ」の力』は好評で、平成24年1月に第2刷を発行した。

5. 普及事業Ⅱ

継続事業5 サイエンスカフェの企画・開催・内容の公開事業

5.1 カフェ・デ・サイエンス

池内了総合研究大学院大学理事・教授をゲストにした「世界はパラドックス」の第5回を7月25日に、細谷治夫お茶の水大学名誉教授・パズル懇話会会長をゲストにした「化学×数学」の第1回「フラーレンの話」を9月26日に、第2回「分子の形と性質の数理」を11月28日に、第3回「ベンゼンの亀の甲をあばく」を1月23日に開催した。毎回参加募集開始後2日ぐらいに定員になり、申込を締め切っている。終了後の懇親会も20名以上の参加があった。

5.2 ウィークエンド・カフェ・デ・サイエンス

科学博物館のサイエンスコミュニケータ養成講座修了生の有志を中心として財団と共催で開催している。財団は、運営資金の提供と毎月の定例会での議論への参加を主な支援として行なっている。

喫茶店などで開催するミニカフェを11回、サイエンスアゴラの時にシンポジウム「若手サイエンスコミュニケータ進路相談会&交流会」を開催した。このシンポジウムは「サイエンスアゴラ賞 サイエンス対話部門」に選ばれた。

5.3 アジア・カフェ

外国人留学生や日本人学生、一般の人々の議論の場として英語のアジア・カフェを政策研究大学院大学で開催した。復旦大学客員研究員 吉田浩二氏をゲストに向かえ、「日本企業のグローバル戦略と台頭する中国」というテーマで議論を行った。日本人18名(うち女性1名)外国人12名(うち女性4名)が参加し、日本のグローバル戦略について活発な議論が行なわれた。

6. 調査事業Ⅱ

文部科学省の科学技術戦略推進費補助金に応募し選定されて実施した事業である。継続事業3の調査事業と有機的に連携して実施した。

政策研究大学院大学を会場として平成23年12月15日、16日に「国際政策対話 -アジアにおける科学技術の地域連携-」を開催した。政策研究大学院大学、日本工学アカデミー、国際協力機構、科学技術振興機構が共催者となり、文部科学省、内閣府、経済産業省、外務省、日本学術振興会の後援を得て実施した。

民間団体による国際政策対話であり、アジア各国と日本の官民の幅広いステークホルダーがe-アジア構想について理解を深め信頼関係を構築することによりe-アジア構想の実現に資する、事を目的とした。インド、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、フィリピン、ラオス、韓国の科学技術コミュニティの代表者9人に加え、日本に駐在しているEU駐日代表部科学技術部長、米国科学財団(NSF)東京事務所長、東京工業大学のタイ人教授、ラオス人研究者、物質・材料研究機構(NIMS)中国人研究者の5名、合計14名の外国人有識者が参加した。12月15日午前には域内共同人材育成と頭脳循環についてのワークショップを開催し、午後には国際共同研究と研究インフラについてのワークショップを開催した。参加者は外国人有識者14名、岸輝雄NIMS顧問や三木千壽東工大教授等の日本からの参加者19名であった。また、在京大使館アタッシェ、政府機関関係者等のオブサーバー35名がワークショップを傍聴した。

12月16日には一般に公開する国際シンポジウムを開催した。シンポジウムでは、中川正春文部科学大臣、大島賢三国際協力機構(JICA)顧問が開会挨拶を行い、相澤益男総合科学技術会議議員が第4期科学技術基本計画を中心とする日本の科学技術政策について基調講演を行った。また、招待講演では、韓国の前基礎科学研究所長で現在韓国科学技術大使であるDong-Pil Min氏がグリーン・イノベーションに基づくグリーン経済について、伊藤忠の赤松良夫専務が日本企業が求めるグローバル人材について講演した。その後、8ヶ国の科学技術コミュニティの代表による科学技術の域内連携についてのパネル討論を行なった。2日間で約200名の参加者があった。

国際政策対話を効果的に進めるために、外部の有識者による諮問委員会を組織した。岸輝雄物質・材料研究機構顧問、大島賢三国際協力機構顧問、白石隆政策研究大学院大学学長、中鉢良治ソニー副社長、有本建男科学技術振興機構社会技術開発センター長に諮問委員をお願いした。岸先生には全体のとりまとめをお願いした。2月14日には岸先生、白石先生、有本先生の参加を頂いて諮問委員会を開催し、成果の普及と今後の取り組みについてご意見を頂いた。

継続事業3で連絡委員をお願いした8人の先生方にはこの補助事業の連絡委員もお願いし、11月1日、12月5日、1月11日に連絡会を開催した。また、2月14日の諮問委員会にも出席頂いた。

ワークショップとシンポジウムの議事録とディスカッションペーパーを日英約90ページずつの冊子としてまとめ、日本の関係機関99か所、アジア各国の関係機関360か所に送付するとともに財団ホームページで公開した。

7. 寄付金

(株)エー・アンド・デイ社から賛助会費100口(1口10万円)1千万円の寄付を頂いた。

8. 広報関係

平成22年度事業報告、決算書、カフェ・デ・サイエンスの参加者募集、討論内容、などを財団ホームページに随時掲載した。

9. 総務関係

和田公認会計士事務所と業務委託契約を結んだ。

平成23年度末をもって、助成財団センターの会員を退会することとした。公益法人協会については、平成24年10月までの会費は支払い済みなので、その後退会とすることとした。

10. 公益目的支出計画の実施報告

一般財団法人平成22年度の事業報告と決算に基づいて平成22年度の公益目的支出計画実施報告書を公益認定等委員会に提出した。平成22年度末の公益目的財産残額は159,425,775円となった。

平成23年度については、事業報告と決算に基づいて実施報告を行う。当初の計画金額と実施結果の金額の差については以下のように説明する。

事業計画実績実績-計画金額が異なる場合、
その内容及び理由、
全体に対する影響
継1
研究開発者顕彰事業
\1,180,948\1,228,664\47,716計画通りの事業を実施
したが、軽微な金額
の差異が生じた。実
施期間の変更はない。
継2
奨学金給付事業
\1,154,448\2,673,928\1,519,480当初計画の1名100
万円に加えて、東北関
東大震災の被災学生2
名及び平成22年度奨
学生に各50万円支給
した。実施期間の変更
はない。
継3
先端科学技術等の
調査事業
\16,715,603\18,974,443\2,258,840政策提言の内容を深化
させるために研究会の
提言内容を基にした国
際政策対話シンポジウ
ムを開催したため。実
施期間の変更はない。
継4
武田シンポジウム等
のシンポジウムや講
演会の企画・実施・
内容の公開事業
\9,231,466\9,606,684\375,218配布資料をカラー印刷
としたため。実施期間
の変更はない。
継5
サイエンスカフェの
企画・開催・内容の
公開事業
\3,835,690\4,055,572\219,882計画よりウィークエン
ド・カフェ・デ・サイ
エンスの開催回数が増
えたため。実施期間の
変更はない。
事業共通費\8,079,393\8,277,531\198,138
\40,197,548\44,816,822\4,619,274



添付資料 平成23年度TTMテーマ一覧

月 日担 当タイトル参加者数
2011年
4月19日
全員来年のシンポ②11
4月26日相崎Liイオン電池の新しい開発動向11
5月10日溝渕インフレーション宇宙(佐藤先生講演記録)11
5月17日鴨志田医療における超音波技術11
5月24日禿農業、ミネラル、健康11
5月31日全員来年のシンポ③13
6月7日姥澤エネルギー雑考11
6月28日三井原子力問題11
7月5日全員来年のシンポ④12
7月12日赤城インテロップ2011 11
7月19日大戸人口オーナス11
7月26日相崎再生可能エネルギー導入ポテンシャル11
8月2日全員来年のシンポ⑤12
8月16日全員来年のシンポ⑥11
8月23日溝渕太陽と地球の密接な関係10
8月30日鴨志田フレキシブルエレクトロニクス11
9月13日Vera Yulianti
(東北大学)(財団奨学生)
インドネシアと日本:インドネシア人の
日本語学習者の視点から
11
9月20日全員来年のシンポ⑦12
10月4日禿吉村昭著「白い航跡」(高木兼寛伝)11
10月11日大戸アジアアにおける科学技術の国際連携11
10月18日Dr. Vishnu
(Yamanashi Univ.)
(財団奨学生)
Groundwater under stress in Kathmandu
Valley, Nepal
13
10月25日姥澤記憶雑感(自然免疫)11
11月1日三井これも自己組織化?10
11月8日赤城原子力あれこれ9
11月15日松本忠夫先生(放送大学)社会性昆虫の話(来年のシンポ講師)11
11月22日全員来年のシンポ⑧11
11月29日大戸地域連携10
12月6日相崎タッチパネルの開発動向10
12月13日溝渕金属酸化物半導体の話10
12月20日Putri Setiani
(東北大学)
(財団奨学生)
Sustainable Hydrogen Production
through Sulfur Reactions by Using
Geothermal Energy
9
12月27日全員国際政策対話反省会10
2012年
1月10日
水谷潤太郎氏(技術士
(水道・下水道&環境))
資源・土地制約下、今後構築すべき
エネルギー等インフラシステム
11
1月17日鴨志田水のお話10
1月24日禿デジカメの手振れ防止技術を開発した
大嶋光昭氏
10
1月31日姥澤免疫抑制剤TOR10
2月7日三井中国の宇宙計画10
2月14日全員来年度計画・シンポアンケート整理・反省会10
2月21日赤城㈱DeNAの創業者・取締役10
2月28日大戸世代間の共生10
3月6日ツェツェグ(財団奨学生)モンゴルの話11
3月13日相崎ミラーレス一眼デジカメのインパクト10

アジアについての勉強会

月 日講 演 者タイトル参加者数
2011年
4月12日
不破吉太郎氏 (元法政大学教授)インドネシアの気候変動対策(仮題)13
6月21日力石寿郎氏 (JICA客員専門員)カンボジアと日本ーその将来と課題ー13
9月27日高橋一生氏 (元国際基督教大学教授)中東の民主化運動25
2012年
3月27日
村井純一氏 (国際社会貢献センター)ミャンマーの社会と経済 19