年度計画・報告 Annual Report
特定民法法人 武田計測先端知財団 平成21年度事業報告
(平成21年4月1日から平成21年11月30日まで)
1. 顕彰事業
平成20年度に引き続いて、日本のバイオベンチャーを応援するバイオビジネスコンペJapanに協賛して、「バイオ先端知賞」(賞金100万円)を提供する等の顕彰事業を行った。先端的なバイオ技術であり、将来において事業に大きな貢献が期待される研究を授賞対象としている。
特例民法法人平成21年度においては、「バイオ先端知賞」を提供する申し込みを行い、バイオビジネスコンペJapan実行委員会の承認を得た。これに基づいて賞金を実行委員会事務局(大阪商工会議所 経済産業部内)に振り込んだ。
実行委員会における選考は、平成22年2月に予定されている。表彰式は、平成22年3月に行われる予定である。
2. 助成事業
今後発展が期待されるアジアから環境系の博士課程などに留学している若手優秀研究者1名に武田奨学賞を授与する等の助成事業を行う。期間は1年間で金額は100万円とする。
特例民法法人平成21年度の第32回理事会において、平成20年度に引き続いてモンゴル出身で政策研究大学院大学博士課程に在学中のウラムバヤル・ツェツェグドラム(Ulambayar TSETSEGDULAM)さんを奨学生として選考した。前期分の50万円はすでに支給済みである。後期分の支給は一般財団法人平成21年度内に行う予定である。
3. 調査事業
(1) アントレプレナーの調査
生活者のためのイノベータ列伝
平成15年度からアントレプレナーの調査を行ってきた。平成19年度で第3次の調査を終了したが、第4次調査として、最近大きな成果を上げ、生活者に富と豊かさ・幸せをもたらしたアントレプレナーに関する調査を行った。
調査対象10人のうち、1名分は完成し、9名分は進行中である。一般財団法人平成21年度内に調査を終了しインターネット上で公開する予定である。調査対象としたのは、以下のアントレプレナーである。
岩田 聡 | 「Wii」,「DS」を世に出したこと 任天堂社長 |
嶋 正利 | マイコン開発者の一人&ダイナミックコンフィギユアラブル技術 マイクロプロセッサー・アーキテクト |
伊賀 章 | ソニーFelica の開発者 ソニー情報技術研究所長 |
森 健一 | 日本語ワープロの開発者 東京理科大教授 |
越智 成之 | CCDの実用化 ソニーテクニカルアドバイザー |
岩崎 俊一 | 垂直磁気記録による高密度情報ストアレッジ技術 東北工業大学理事長 |
宮崎 照宣 | トンネル磁気抵抗効果(TMR)の発見 原子分子材料科学高等研究機構 |
神原 秀記 | ゲノム解読分析器の開発 日立中研フェロー |
谷岡 健吉 | 超高感度HARP方式撮像管の発明と高性能化 元NHK技研所長 |
千本 倖生 | 第二電電初めベンチャー育成 イーアクセス会長兼CEO |
(2) 科学技術の国際連携戦略研究会
目下、第4次科学技術基本計画を策定中の日本政府に、科学技術の国際連携戦略について政策提言することを目的に、特例民法法人平成21年度の調査活動の一つとして7月から研究会を発足させた。委員は、有本建男(科学技術振興機構社会技術研究開発センター長)、足立直樹(株式会社レスポンスアビリティ代表取締役)、小林信一(筑波大学ビジネス研究科教授)、末森 満(国際協力機構上級審議役)、鈴木達治郎(電力中央研究所社会経済研究所研究参事)、角南 篤(政策研究大学院大学准教授)、渡辺 孝(芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科長・教授)の7名である。
月に一度のペースで研究会を開催し、科学技術の国際連携について議論を進めてきた。その結果、11月末までに、アジア地域の研究能力向上と人材育成を目的としてアジア諸国の研究者による国境を越えたアジア研究圏を創設すること、日本は率先して、アジア研究圏創設のイニシャチブを取ることを骨子とする提言の概要を決定した。
一般財団法人平成21年度12月に政策提言の中間報告を取りまとめ、インターネット上で公開するとともに小冊子を作成し有識者からコメントを頂く。財団ホームページ上では日本語と英語で公開する。コメントを元に提言内容を修正・追加し、一般財団法人平成22年度に、生活者の立場に立った政策提言を行う予定である。
(3) TTM (Takeda Tea Meeting)
平成20年度に引き続いて、特例民法法人平成21年度においても、調査事業と普及事業を行う財団スタッフの力量を向上させるための勉強会として、毎週1回火曜日に実施した。自分が関心をもったテーマについて説明し、スタッフ持ち回りで情報収集、調査した内容について全員で討論を行なった。財団の活動方針や、武田シンポジウムなど財団行事の企画についてもこのミーティングで討論した。また、外部講師によるTTMを2回、ウィークエンド・カフェ・デ・サイエンス実行委員会のメンバーが自分の修士論文のテーマについて説明するTTMを4回開催した。
特例民法法人平成21年度で実施したTTMのテーマ一覧を添付した。これは事業報告書に記載してインターネット上で公開し、資料については要求があれば著作権侵害にならない範囲で公開する。
(4) 委託調査
平成21年8月に行われた機械振興協会経済研究所の平成22年度調査研究に係るテーマ募集に3件応募したが、9月に行われた審査の結果採択には至らなかった。
4. 普及事業
(1) 武田シンポジウム
財団スタッフで現在の世の中の大きな流れについて議論し、財団理事を交えて財団スタッフが議論し「脳と社会」を武田シンポジウム2010のテーマとすることにした。講師は、川人光男(ATR脳情報研究所)、大隅典子(東北大学大学院医学系研究科教授)、山岸俊男(北海道大学大学院文学研究科教授)の3氏にお願いした。3人の講師に、「医療BMIから脳コミュニケーションまで(川人氏)」、「いくつになっても神経細胞はつくられる(大隈氏)」、「脳研究と社会科学(山岸氏)」というタイトルで講演していただき、その後総合質疑を行う。脳科学の最先端の現状や脳科学と社会科学との連携の現状と将来についての話を期待している。短絡的に脳科学の知見と社会現象を結びつけるのではなく、何がどこまで明らかになっているのか、どこまでが使われているのかに焦点をあてるプログラムを考え、財団理念に基づくインパクトのあるメッセージ発信の場とする。
一般財団法人平成21年度においては、上記の枠組みのもとで、プログラムの詳細を決定し、シンポジウムを実施する。開催日は、平成22年2月6日午後1時から5時とした。
(2) 武田シンポジウムの内容を元にした書籍の出版
武田シンポジウム2009の内容をもとにした本を特例民法法人平成21年度10月に『共に生きる知恵』として出版した。出版はケイ・デイ・ネオブック社、販売は化学同人社から書籍販売ルートにのせて行う。2000部を印刷し、1000部を化学同人社からの販売用とし、700部を講師や財団関係者に配布した。
(3) カフェ・デ・サイエンスの実施
特例民法法人平成21年度もカフェ・デ・サイエンスを実施した。「普通の人たちが、専門用語で独特の概念について議論することになれてしまっている科学者と一緒に、日常的な言葉と具体的なイメージで科学を語り、それによって、科学の知識を得ようというのではなく、物事を科学的に考えるとは、どういうことなのかを体得する場とする。」ことを基本的な考え方とした。
平成20年度に引き続き、特例民法法人平成21年度においても東京工業大学名誉教授の大島泰郎さんをメインゲストとして、第24回「異端児のみる生命 花の咲く不思議」、第25回「異端児のみる生命 クスリのリスク」、第26回「異端児のみる生命 RNA 生命の主役になれなかった分子」の3回のカフェ・デ・サイエンスを実施した。
(4) ウィークエンド・カフェ・デ・サイエンスの開催支援
科学博物館が行っている「サイエンスコミュニケータ養成講座」の修了生が中心となってウィークエンド・カフェ・デ・サイエンスを行いたいという動きがあり、財団としては共催の形で支援してきた。7月25日に小笠原の植物と動物をテーマに、首都大学東京の加藤英寿さん須貝杏子さんをゲストにして科学博物館で中学生、高校生、大学生、20代の人、30代の人を主な対象として、第1回を実施した。約38名の参加申し込みがあり、抽選で約26名の参加者を決定した。
11月23日に珪藻(ケイソウ)をテーマに科学博物館の齋藤めぐみさんをゲストに第2回を行った。約50人の参加希望があり、抽選で約36名の参加者を決定した。
若い世代の人たちへの足掛かりの一歩ができた。
5. 広報
財団ホームページ更新
平成20年度事業報告書と決算書および平成21年度の事業計画と収支予算をホームページに掲載して公開した。また、アントレプレナー調査報告書、カフェ・デ・サイエンスの内容などを掲載したホームページの更新を随時行なった。
6. 新法下の法人への移行
以下の経過の通り、12月1日付で一般財団法人に移行した。
1月15日: | 理事会と評議員会で最初の評議員選任方法を議決し、経済産業省へ認可申請。 |
2月6日: | 経済産業省から認可が下りたので評議員選定委員会を開催し、最初の評議員を選任。移行認可申請。 |
3月3日: | 公益認定等委員会の企画官と審査監督調査官〈担当官〉と打ち合わせ。その後3回打合せ |
4月17日: | 平成20年度決算と21年度事業計画に基づいた申請にするため、2月8日の申請を取下。 |
5月8日: | 理事会と評議員会を開催して申請に必要な決議と審議可決を頂いて、再申請。 |
6月4日: | 担当官と打ち合わせ。その後2回打合せ |
8月20日: | 担当官から担当認定委員への事前説明が終了したとの連絡があり、理事の報酬の一部を管理費に配賦すべきであるとの指摘があったので、認可を優先して指摘どおり修正。 |
8月26日、 9月8日: | 評議員会と理事会を開催して、定款変更の審議可決と議決を得て定款案の変更とそれ以外の変更をシステムに入力して申請を修正。 |
9月17日: | 担当官と打ち合わせ。委員会に諮問する前の確認を担当認定委員に行ったところ、継続事業3は公益目的支出計画の事業とは認め難いので委員会への諮問はできない、とのこと。 |
9月28日: | 継続事業3を公益目的支出計画の事業と認めないというのは納得できない、継続事業3の説明が不十分だと思うので継続事業3の説明を修正したいと担当官に話した。担当官は上司と相談してもう一度担当認定委員へ説明をしてくれることになった。その後2回問い合わせに回答。 |
10月30日: | 継続事業3の説明を財団の提案通りに修正するように連絡があり、11月2日にシステムに入力して申請を修正。 |
11月13日: | 担当官から13日の委員会で諮問されたとの連絡。 |
11月25日: | 処分書を入手、12月1日付で一般財団法人への移行登記完了 |
7. 総務関係
平成21年度は、一般財団法人への移行を前提として会計監査人は置かないこととし、和田公認会計士事務所とは決算書類の作成とそのためのサポートを依頼するコンサルティング契約を結んだ。
資料 TTMテーマ一覧
月 日 | 担 当 | タイトル | 人数 |
---|---|---|---|
4月7日 | 三井さん | 奇跡の脳 | 11 |
4月14日 | 羽田野さん | 低炭素社会へのみち 日本とヨーロッパ | 11 |
4月21日 | 全員 | 来年のシンポ Ⅱ | 12 |
4月28日 | 相崎さん | 直流給電の現状と可能性・・・環境問題に貢献できるか | 11 |
5月12日 | 赤城さん | なぜ金融恐慌 | 9 |
5月19日 | 全員 | 来年のシンポ Ⅲ | 9 |
5月26日 | 古垣内さん (サイエンスコミュニケータ) | 生殖工学をめぐる話題 (麻布大学獣医学科動物応用科学専攻) | 10 |
6月2日 | 須貝さん (サイエンスコミュニケータ) | 小笠原の生物(首都大学東京生命科学専攻) | 12 |
6月9日 | 溝渕さん | 過去の人口・未来の人口 | 11 |
6月16日 | 禿さん | 電子ペーパーの技術動向 | 10 |
6月23日 | 鴨志田さん | 半導体LSI技術 ーデバイス技術、製造技術、工場管理技術の動向 | 11 |
6月30日 | 角南先生 (政策研究大学院大学) | アジアの近況 | 11 |
7月7日 | 全員 | 来年のシンポ Ⅳ | 10 |
7月14日 | 産総研 内藤さん | サービス工学、その後の進展 | 12 |
7月21日 | 三井さん | 明日皆既日食ですよ | 12 |
7月28日 | 大戸さん | 民間非営利組織による科学技術分野の途上国支援 | 12 |
8月4日 | 姥澤さん | 進化医学 | 12 |
8月18日 | 羽田野さん | 日本国の誕生(古事記をめぐって) | 10 |
8月25日 | 宮崎寧子さん (サイエンスコミュニケータ) | マルハナバチの生態(筑波大学) | 12 |
9月1日 | 相崎さん | 前立腺がん診断法とその有効性 | 12 |
9月8日 | 赤城さん | 満腹の王様を持てなす料理人 | 11 |
9月15日 | 溝渕さん | 有機太陽電池の最近の動向 その2 | 11 |
9月29日 | 内藤さん | 江戸、キューバに学ぶ真の持続性社会 | 10 |
10月6日 | 全員 | 来年のシンポ Ⅴ | 10 |
10月13日 | 鴨志田さん | トンネル磁気抵抗効果の先駆的開発者(宮崎先生) | 12 |
10月20日 | 全員 | 来年のシンポ Ⅵ (講演題目の検討) | 12 |
10月27日 | 禿さん | 太陽電池の技術動向 | 12 |
11月10日 | 大戸さん | スマート・ソサエティ | 10 |
11月17日 | 姥澤さん | スマートドラック | 10 |
11月24日 | 全員 | 来年のシンポ Ⅶ | 11 |