年度計画・報告 Annual Report
財団法人 武田計測先端知財団 平成19年度事業報告
(平成19年4月1日から平成20年3月31日まで)
1. 顕彰事業
日本のバイオベンチャーを応援するバイオビジネスコンペJapanに協賛し、「バイオ先端知賞」(賞金100万円)を提供した。
今年度は、平成20年2月19日にビジネスプラン発表会を行い、6月3日に本選会を行なう予定である。バイオ先端知賞は、2月19日のビジネスプラン発表会後の選考を行い、滋賀医科大学外科学講座谷徹教授の「マイクロ波による次世代手術支援機器の実用化」に決定した。本選会の同日に授賞式が行なわれる。
2. 助成事業
平成20年2月27日理事会の第1号議案の決定により、若手優秀研究者としてシュレスタ サンガム (Sangam Shrestha)さんに奨学金を支給した。期間は、山梨大学PhDフェローであった平成19年4月から11月までとした。
3. 調査事業
(1) 事例調査
世界をリードした半導体共同研究プロジェクトの調査
最近の半導体関係の共同研究プロジェクトは、洋の東西を問わず、複数の会社からの出向者を集めたものが多く、それがほぼ常識化されて来ている。このような共同研究の源泉をたどると1976年から1980年に行われた通産プロジェクトの超LSI共同研究所に行き着く。超LSI共同研究所は世界初の新しい手法の開発ということから、アントレプレナーシップの発揮と言えよう。さらに、超LSI共同研究所の試みは、欧米に於ける研究にも影響を与え、米国におけるSEMATECH、欧州に於けるIMECなどの世界の共同研究の潮流となった。
この調査では、原点に戻って、超LSI共同研究所とそれ以降の主な共同研究プロジェクトをレビューし、超LSI共同研究所において掲げられた"基礎的共通的"な考え方の与えた効果を考え、それがその後の共同研究にどのように生かされて来たか、生かされていないかを調べ、今後のプロジェクトの参考に供したい。日本のみならず、米国や欧州の共同プロジェクトについても調査を行う。平成18年度から調査を開始したが、平成19年度も引き続き調査を行なった。対象は以下の研究所あるいはプロジェクトである。
超エルエスアイ技術研究組合共同研究所 (略 超LSI共同研究所)
SEMATECH
IMEC vzw
Albany NanoTech
あすか(ASUKA)プロジェクト
株式会社 半導体先端テクノロジーズ(Selete)
株式会社 半導体理工学研究センター(STARC)
株式会社 先端SoC基盤技術開発(ASPLA)
技術研究組合 超先端電子技術開発機構(ASET)
半導体MIRAIプロジェクト
高効率次世代半導体製造システム技術開発(HALCA)プロジェクト
21世紀型顧客ニーズ瞬時製品化対応新生産方式の創出(DIIN)プロジェクト
技術研究組合 極端紫外線露光システム技術開発機構(EUVA)
(2) TTM
財団スタッフの勉強会として、毎週1回火曜日に実施した。自分が関心をもったテーマについて調査したものを説明し、全員で討論を行った。財団の活動方針や、武田シンポジウムの企画についてもこのミーティングで討論した。添付資料の通り合計49回実施した。
そのうち、武田氏シンポジウムの講師によるTTMを2回、昨年度の奨学生の黄さんを講師としたTTMを1回開催した。
開催日、担当、タイトルは添付資料のとおりである。
(3) 産業技術総合研究所からの委託調査
産業技術総合研究所から、「再生可能エネルギーの利用可能性に関する算出方法の調査」の調査を委託され調査を実施し報告書を納入した。
4. 普及事業
(1) 武田シンポジウム
武田計測先端知財団主催により平成20年2月2日、東京大学武田先端知ビル武田ホールで「豊かな未来へ向けての選択」をテーマに武田シンポジウムを開催した。様々な選択をテーマに3名の講師による講演と総合質疑を行った。
中西準子産業技術研究所化学物質リスク管理研究センター長が、「リスク評価の知恵」と題する講演を行なった。未来を予測するリスク評価は不確実性との戦いであるが、科学的・定量的に段階を追って取り組むやり方について、学問的なデータを使いながらお話頂いた。続いて、武田穣名古屋大学産官学連携推進本部連携推進部長教授が、「天然資源利用におけるルール」と題する講演を行なった。大学発のベンチャーのリスクについてふれた後、先進国と発展途上国の間の天然資源利用における権利の扱いと問題点、課題についてのお話を頂いた。次に福田恵温林原生物化学研究所常務取締役が、「あきらめなければ失敗でない」と題する講演を行なった。微生物を使ったトレハロース製造技術の開発の話を中心に、林原の研究開発のやり方についてのお話をいただいた。最後に唐津理事が司会をして、総合質疑を行なった。表面的にはあまり関連のない3つの講演をつないだ質疑を行なうことができた。それぞれが興味深いテーマであり、参加した人は熱心に聞き入っていた。
約250名の出席者のうち151名からアンケートを回収した。アンケートでは、武田シンポジウムは面白いというコメントが多く見られた。また、是非シンポジウムを継続して欲しいというコメントもあった。このシンポジウムの内容をもとにした書籍を平成20年度で出版する。
(2) カフェ・デ・サイエンス
平成17年度から始めたカフェ・デ・サイエンスを今年度も実施した。「普通の人たちが、専門用語で独特の概念について議論することになれてしまっている科学者と一緒に、日常的な言葉と具体的なイメージで科学を語り、それによって、科学の知識を得ようというのではなく、物事を科学的に考えるとは、どういうことなのかを体得する場とする。」ことを基本的な考え方とした。
今年度からは、新宿のギャラリー円月を会場とし、土曜日の午後に開催した。大島泰郎さんをメインゲストにして、「異端児の見る生命」と題して6回実施した。テーマと講師は以下の通りであった。
第13回 「異端児のみる生命 生命世界の右と左」 (平成19年 3月24日)
講師: 大島泰郎さん(東京工業大学名誉教授、共和化工(株)環境微生物研究所所長)
田村宏治さん(東北大学大学院生命科学研究科助教授)
第14回 「異端児のみる生命 生命の起源」 (平成19年 6月16日)
講師: 大島泰郎さん
松野 孝一郎さん(長岡技術科学大学名誉教授)
第15回 「異端児のみる生命 宇宙の生命」 (平成19年 9月8日)
講師: 大島泰郎さん
平林 久さん(宇宙航空研究開発機構・宇宙教育センター参与)
第16回 「異端児のみる生命 生命の設計」 (平成19年 12月8日)
講師: 大島泰郎さん
冨田 勝さん(慶応義塾大学教授)
第17回 「異端児のみる生命 微生物は敵か味方か」 (平成20年 1月26日)
講師: 大島泰郎さん
竹田 美文さん(岡山大学特任教授)
第18回 「異端児のみる生命 生物進化」 (平成20年3月26日)
講師: 大島泰郎さん
斎藤成也さん(国立遺伝子研究所教授)
関心の高いテーマであり、多数の申込が毎回あった。申込が100名に達することもあった。締め切り間際に新しい参加者の申込が多くあることも考慮し、参加者の幅を広げたいという願いもあったので、第13回から第15回までは抽選で参加者を決定した。
その後は、定員に達したら申込受付を締め切る方式にした。毎回50から60人程度の参加者にしぼり、40人から45人が実際に参加した。
(3) 広報・出版
① 財団ホームページ更新
武田シンポジウム2008およびカフェ・デ・サイエンスの内容を掲載したホームページの更新を行った。
② アントレプレナー列伝超波及度編をオーム社から出版
平成18年度19年度の調査事業として実施した「アントレプレナー列伝超波及度編」の出版については、平成19年7月3日に垂井康夫編『超波及度で世界を変えたイノベーター』としてオーム社から出版した。
③ 武田シンポジウム2008の出版
平成19年2月に開催した武田シンポジウム「未来のゆたかさに向けて -続く世代に何を渡すのか-」の内容をもとにして武田計測先端知財団編 鈴木基之、本田国昭、藤田博之、安田喜憲著 『続く世代に何を渡すのか -ゆたかさ・環境・科学技術-』を平成20年2月1日に出版した。出版社はケイ・ディー・ネオブック、販売は(株)化学同人である。
4. 事務局報告
▼評議員会・理事会関係
① 第22回理事会(平成19年4月2日(月)から平成19年 4月9日(月))
於:書面開催
議案1)理事長、専務理事、常任理事の選任に関する件
② 第23回理事会(平成19年5月22日(火)午前11時から午後1時まで)
於:東京新阪急ホテル 「すみれの間」
議案1)平成18年度事業報告及び収支決算について承認を求める件
議案2)評議員1名の退任にともなう補欠評議員選任の件
議案3)公益法人制度改革による新制度への移行方針と概略スケジュールの承認の件
議案4)財団事務所移転の件
③ 第16回評議員会(平成19年6月 1日(金)から平成19年 6月8日(金))
於:書面開催
議案1)平成18年度事業報告および決算の承認の件
議案2)公益法人制度改革による新制度への移行方針と概略スケジュールの承認の件
議案3)第4期評議員の選出について
報告事項 1 補欠評議員選任の件
報告事項 2 財団事務所移転の件
④ 第24回理事会(平成20年2月27日)
於:財団事務所
議案1)武田奨学賞受賞者選考と決定の件
議案2)平成20年度事業計画と収支予算の件
議案3)公益法人制度改革による新制度への移行準備の件 報告事項 平成19年度事業報告および収支決算見通し
⑤ 第17回評議員会(平成20年3月10日(月)から平成20年3月17日(月))
於:書面開催
議案1)武田奨学賞受賞者選考と決定の件
議案2)平成20年度事業計画と収支予算の件
議案3)公益法人制度改革による新制度への移行準備の件
報告事項 平成19年度事業報告および収支決算見通し
▼経理関連
内部監査
期中監査実施(平成19年8月2日・11月14日・平成20年1月24日・3月19日・4月10日)
和田公認会計士事務所:和田公認会計士
財団立会者:赤城・高見
添付資料
月 日 | 担 当 | タイトル | 人数 |
---|---|---|---|
4月3日 | 三井さん | サイエンスカフェのはじまり | 10 |
4月10日 | 姥澤さん | 2007先端技術10例(MIT Technology) | 10 |
4月17日 | 相崎さん | 小型二次電池の企業競争 | 8 |
4月24日 | 三浦さん | 「武士道(日本の魂)」の紹介(新渡戸稲造) | 10 |
5月8日 | 禿さん | ディスプレイ産業、地殻大変動か? | 10 |
5月15日 | 羽田野さん | 「IPCC第4次第2部会報告の速報、と"富と幸せ"について ---三浦按針の時代と世界の富」 | 10 |
5月22日 | 全員 | 来年シンポⅠ | 10 |
5月29日 | 相崎さん | 半導体産業の過去・現在・未来 | 10 |
6月5日 | 赤城さん | パラダイムシフト | 9 |
6月12日 | 溝渕 | 太陽電池は本当に環境に良いのでしょうか | 8 |
6月19日 | 姥澤さん | 勘定から感情へ(行動経済学) | 7 |
6月26日 | 全員 | 来年シンポⅡ | 9 |
7月3日 | 三井さん | カフェデサイエンス(生命の起源:松野、大島先生) | 10 |
7月10日 | 三浦さん | 四方山話(SEMATECH、など) | 11 |
7月17日 | 禿さん | 古代日本の数詞 | 10 |
7月24日 | 全員 | 来年シンポ Ⅲ | 10 |
7月31日 | 羽田野さん | 熱帯雨林とそれを維持する生態系 | 10 |
8月7日 | 相崎さん | フィードインタリフとRPS | 11 |
8月21日 | 全員 | 来年シンポ Ⅳ | 10 |
8月28日 | 赤城さん | 情報セキュリティ | 11 |
9月4日 | 三浦さん | Albany NanoTech(共同研究開発機構) | 10 |
9月11日 | 溝渕 | これからのディスプレイ | 10 |
9月18日 | 三井さん | カフェデTTM | 11 |
9月25日 | 全員 | 来年シンポ Ⅴ | 10 |
10月2日 | 姥澤さん | がんと炎症 | 10 |
10月9日 | 禿さん | ASIMOを創った男 | 10 |
10月16日 | 羽田野さん | 持続可能な漁業 | 11 |
10月23日 | 相崎さん | 非接触型ICカードと無線ICタグ | 11 |
10月30日 | 全員 | 来年シンポ Ⅵ | 11 |
11月6日 | 禿さん | CEATEC最新情報 | 11 |
11月13日 | 黄紅雲さん (奨学生) | 工学的な視点から新規ヒト臨床応用のための 埋め込み型人工肝に関する研究 | 11 |
11月20日 | 赤城さん | 環境Ver.2.0? | 10 |
11月27日 | 全員 | 来年シンポ Ⅶ(タイトル確定) | 11 |
12月4日 | 溝渕 | 2050年低炭素社会? | 11 |
12月11日 | 全員 | 来年シンポ Ⅷ(福田氏林原生物化学研究所常務) | 12 |
12月18日 | 鴨志田さん | 誰でもわかる特許の話Ⅰ | 11 |
12月25日 | 全員 | 来年シンポ Ⅸ(シンポ挨拶) | 11 |
1月8日 | 武田穣先生 | 天然資源の利用におけるルール | 11 |
1月15日 | 三井さん | サイエンスコミュニケーション | 11 |
1月22日 | 姥澤さん | iPS cell | 11 |
1月29日 | 全員 | シンポ準備 | 11 |
2月5日 | 全員 | シンポ反省会 | 11 |
2月12日 | 鴨志田さん | 誰でもわかる特許の話Ⅱ | 9 |
2月19日 | 赤城さん | 来年度財団計画(案)の説明 | 9 |
2月26日 | 全員 | シンポアンケート内容検討 | 11 |
3月4日 | 羽田野さん | COP13と温暖化をめぐる最近の話題 | 11 |
3月11日 | 禿さん | 直感の科学(池谷裕二氏講演会より) | 10 |
3月18日 | 相崎さん | バイオマスエネルギーの利用可能量に関する算出方法 | 11 |
3月25日 | 鴨志田さん | 誰でもわかる特許の話Ⅲ | 9 |